
「愛車と共にこれからも走り続けたい」というライダーの想いに応えるべく始動した「YOSHIMURA HERITAGE PARTSプロジェクト」。その目玉となるのが油冷GSX-R750の『#604コンプリート』。2025年3月の東京MCショーで発表された車両のオークション販売が、9月20日からいよいよスタートするぞ!
●文:伊藤康司(ヤングマシン編集部) ●写真:真弓悟史/YM Archives ●外部リンク:ヨシムラ・ヘリテージパーツプロジェクト
デイトナ辻本車の雄姿が現代に完全復活!
2024年の第51回東京モーターサイクルショーでヨシムラが発表した「復刻パーツ企画」がついに本格始動! このプロジェクトは「純正互換パーツ」「ヨシムラパーツ」「コンプリートマシン」の3本柱だが、その中でも大注目なのが油冷GSX-R750創世記にデイトナ200マイルレースで活躍した「♯604」をレプリカしたコンプリート車だ。2024年のMCショーでは開発用の0号車を発表したが、今年は完成した車両が販売されるのだ。
良質な中古車両をベースに純正部品や互換パーツでオーバーホールを施しつつ、ヨシムラが手掛ける数々のパーツをふんだんに投入。作業を手掛けるのは、もちろんヨシムラの熟練メカニックだ。
このマシンは販売価格を固定せず、最低落札価格を604万円(税抜)としてオークション方式で販売する。入札は9月20日からスタートし、最高値を付けたユーザーに購入権を付与する方式となる。まずは1号車の販売となるが、♯604コンプリート車は限定生産ではない。とはいえベースとなる優良な中古車両の確保や製造ラインの状況などにより、2号車以降の販売台数や販売時期は未定という。
しかし“ユーザーが所有する愛車をベースに仕上げる”など、他にもコンプリート車の製作方法を模索中というので、油冷ファンには目を離せない存在となるのは間違いない。
【YOSHIMURA GSX-R750 #604 COMPLETE MACHINE】●価格:604万円(税抜)以上
デイトナ200マイルは1985年からスーパーバイクレギュレーションになったので、#604レーサーの外装部品はすべてスズキ純正。そのためコンプリート車は(ハンドル高さやフロントゼッケンなどを除き)驚くほどの再現度を誇るが、各パーツの機能は現代的にアップデートされる。
#604の”ストーリー”を現代の技術で作り込む
GSX-R750コンプリート車は、デイトナで闘った#604レーサーをモチーフとして忠実に再現している……が、当時のチューニングパーツはまったく使っていない。意外に思うが、じつはヨシムラでも初期型GSX-R750用のパーツはすでに作っておらず、時代的にも当時はTMRキャブレターが存在しなかったり、マフラーも超軽量なチタニウムはレース専用の素材だったからだ。
そこで手曲DuplexチタンサイクロンやTMR-MJNキャブレターなど多くのパーツをGSX-R750用に新開発し、現代の技術で走りをアップデート。しかしコンプリート車の製作には、速さだけでなく油冷ファンがイメージする“#604レーサーのストーリー”を生み出すことを強く意識したという。
たとえば、ブレーキは現在のSSで主流のラジアルマウントではなく、あえてアキシャルマウントを選択し、キャリパーサポートも#604レーサーをイメージさせるデザインで作った。またステップキットも新作だが、#604レーサーを彷彿させるスタイルだ。
前出のTMR-MJNキャブも、初代油冷ではデータがない上にマフラーも新作のため、セッティングはゼロからスタート。ダイナモ上で空燃比を合わせた後に、多くのスタッフが実際に走らせてフィーリングをフィードバックして、“ツーリングも楽しめる”乗り味を追求したという。
とはいえヨシムラだけに、コンプリート車を購入したユーザーのために、サーキット走行で威力を発揮するレーシング仕様のキャブレターとエキゾーストも用意があるとのこと。どこまでも夢広がるマシンなのだ。
まるで#604のロードゴーイングレーサー
【ひと目でGSX-Rとわかる顔】耐久レーサーGS1000Rを彷彿させる大径の2眼ヘッドライト。スクリーンは歪みが少なくクリアな視界耐衝撃アクリル樹脂を用いたヨシムラのウインドアーマー。スクリーンに貼った大きなSUZUKIのステッカーがレースイメージを増強!
テールランプは純正をテーピングした#604レーサー(左)をモチーフにダミー化され、ウインカーと共用の極小LED灯に変更。純正ナンバー灯も撤去されて専用メッシュパネルで埋められる。
【浪漫あふれるコクピット】スポンジマウントのメーターパネルは#604と同配置。タコメーターはMOTOGADGET製で、油温計はヨシムラPRO-GRESS1テンプボルトメーターを装備。
【緻密な削りに心が躍るフロントまわり】トップブリッジやアンダーブラケットに加え「フロントフォークASSY」としてハンドル/スタビライザー/アクスルシャフト/キャリパーサポートまでフルセットで装備する。
【ステップも新規制作】左右ステップは#604レーサーをイメージさせるルックスで新規製作。シンプルなデザインだがペダルのアーム部を面取りするなど、操作性にも細やかな配慮がなされる。
#604レーサーに準じるフレーム補強
画像はすべて左が#604レーサーで、右がコンプリート。レーサーのステアリングヘッド付近の補強は、プレートでしっかり塞いでフレーム左右を貫通パイプで繋ぎ、バックボーンパイプの外側を2枚重ねとするところがコンプリート車と異なる。しかしスイングアームピボットの上下は、レーサーを踏襲する形状で入れられる。
【スイングアームはSTDを補強】#604レーサー(左)をモチーフにスタビライザーを追加、レーシングスタンドのフックも増設したスイングアーム。レーサーは極太のアクスルシャフトに換装しているが、コンプリート車はスイングアームのピボット軸とともにm-techのクロモリシャフトを装備する。
【あえてアキシャルキャリパーを選択】#604レーサー(左)は前後17インチで、レース当時はデイトナ専用のスリックを履いた。コンプリート車はMAGTAN JB1の前後18インチにバトラックスBT016。オーリンズ正立フォークにブレンボキャリパーと、ヨシムラ+サンスター製ディスクをセットする。
【武骨なアルミ製のキャッチタンク】ドライブスプロケットカバーの横に装備するオイルキャッチタンクも新作。#604レーサー(左)とは若干形状が異なるが、アルミの溶接痕やメッシュの耐油ホースと合わせて雰囲気満点。こういったディティールがファンの心をくすぐる。
【手曲げのチタンデュプレックスも新作】マフラーは新作の手曲Duplex(デュプレックス)チタンサイクロン。エキパイ間をチャンバーで連結するデュプレックスは、ヨシムラが1985年の全日本TT-F1最終戦のGSX-R750で初めて採用した機構だ。
【油冷ナナハン初適合のTMR-MJN】キャブレターも新開発のヨシムラTMR-MJN32。エンジン本体は程度良好なノーマルで、入念なチェックと調整を行う。
【栄えある1号機の証】フレームのバックボーン部左側にリベット留めされたシリアルプレート。「604」の文字と共に“001”の打刻が入る。はたして何台生産されるのか!?
GSX-R750の油冷エンジンはスズキの試作段階からヨシムラが携わったというだけに、膨大なノウハウを持つ。画像は1985年の鈴鹿8耐用の油冷を手掛ける吉村不二雄さん。
コンプリート車は優良な中古車両をベースに、“新車を組み上げる心づもり”で製作。エンジン内部からシャシーの細部にまで、ヨシムラの技術と魂が宿る。
オークション詳細情報
- URL:https://yoshimura-auction.com/product/604_1/
- 開催期間:2025年9月20日(土) 22:00 ~ 10月18日(土) 11:30
- 参加方法:
- オークションへの参加には、オークションサイトでの登録が必要
- ヨシムラジャパン公式HPでの会員登録とは別途の登録が必要
- SMS認証による本人確認あり
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ヨシムラ)
ネオクラシックKATANA唯一の不満点 令和2年排出ガス規制への適合や、電子制御システムS.I.R.S.の搭載により、現行KATANA(8BL-EK1AA)の完成度は極めて高い。150psを発揮する水[…]
高剛性と軽量化を両立したステンレスブラケット 今回ヨシムラがリリースしたキットで特筆すべきはメインブラケットの素材と構造だ。ここには高強度かつ耐腐食性に優れたステンレス材が採用されている。フェンダーレ[…]
歴史遺産・油冷GSX-Rを完調状態で後世に バイクブーム全盛期だった1980年代から、はや40年以上。とっくに純正パーツの供給も途絶え、そのまま埋もれ去っていく当時の車両は数知れず。その一方で「愛車と[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
完成車メーカー「ヨシムラ」への布石 油冷エンジンを搭載するGSX-R750の開発に深く関わり、デビューイヤーの1985年から3年連続で全日本TT-F1クラスでチャンピオンを獲得したヨシムラ。すでにレー[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | スズキ [SUZUKI])
免許制度変更→ビッグバイクのハードルが大幅に下がった ’90年代末にさしかかると、ゼファー以降に登場したCBやXJRもビッグチェンジを果たした。とくにCBはバルブ休止機構のハイパーVTECを導入し、新[…]
不朽の名車KATANAのレプリカで、尖ってないスポーツモデルをリリース! スズキといえばKATANA……国産4メーカーが揃ってビッグバイクへチャレンジして肩を並べた1970年代を過ぎて、スズキはスペッ[…]
’80年代の国内市場は短命モデルの宝庫でもあった 若年人口の増加も手伝い、国内でのモーターサイクル販売需要も多かった’80年代。エンジンは空冷から水冷化が進み、サスペンションもフレームも日々進化が見ら[…]
ネオレトロなロケットカウルへの郷愁を巧みなグラフィックで新しさへと巧みに演出! 1989年、スズキは1レーサーレプリカ全盛だった頃に感性も価値観も異なる、オトナを意識した都会的な新ネイキッド、BAND[…]
高回転油冷シングルのどこまでも伸びていく心地よさが魅力! スズキは1991年、ヤマハSR400/500やホンダGB400/500によって広められた懐古趣味的なシングルとは次元を異にした、走りのロードゴ[…]
人気記事ランキング(全体)
穏やかでない社名は南北戦争に由来。人種差別の意図はないと断言 1991年、成功を収めた弁護士、マシュー・チェンバースが興したバイクメーカー、コンフェデレート。和訳すると「南軍」を意味する社名は、創業地[…]
メンテフリーで静粛。高級車さながらの「ベルトドライブ」 定期的に行うチェーンのメンテナンス。油まみれの手は作業の実感を呼んでくれるけれど、ちょっと煩わしいのも確か。ヒョースンが放つ新型「GV250X […]
レースはやらない社長の信念に反して作成 前述の通り、ボブ・ウォレスがFIAの競技規定付則J項に沿ってミウラを改造したことから始まったイオタ伝説。Jというのはイタリア語に存在しないため、イオタは「存在し[…]
憧れの英国スポーツ、でも毎日の渋滞や維持費が心配? カッコいいスポーツバイクに乗りたい。休日はワインディングを駆け抜け、その流麗なスタイリングをガレージで眺めたい。そんな想いの前に立ちはだかるのが、「[…]
50㏄原付一種と同じルールで走る新原付 はっきり言って、ちょっと侮っていました。だってスペックだけで想像したら、スーパーカブ110を遅くしたのが、新基準原付となるスーパーカブ110 Lite。私は大型[…]
最新の投稿記事(全体)
「HAVE A BIKE DAY.」加藤ノブキ × TANAX 『加藤ノブキ』は、椎名林檎のCDジャケットや、東京モーターサイクルショー2024のメインビジュアルなども手がける、トップクラスのイラスト[…]
可変バルブ機構と縦目2灯フェイスを備えた本格派オフローダー まずはWR125Rが持つポテンシャルをおさらいしておきたい。最大の特徴は、走行中に吸気カムが切り替わる可変バルブ機構(VVA)を採用した水冷[…]
ライダーの使い勝手を徹底的に考えて作られたコンパクトナビ 株式会社プロトが輸入、販売するバイク用ナビゲーション「ビーライン モト2」は、ライダーの使用環境に最適化された専用設計モデルである。一般的なカ[…]
憧れのレトロバイク、でも「維持費」と「トラブル」が心配…そんな悩みを一掃する新星が登場 大型バイクは重くて車検も面倒。かといって中古のレトロバイクは故障が怖いし、維持費も馬鹿にならない。そんな悩みを抱[…]
日常のマンネリを打ち破る、万能ストリートファイターの誘惑 毎日の通勤ルート、代わり映えのしない景色。そんな退屈な日常に刺激が欲しいと感じたことはないだろうか。そんな不満を一掃してくれる頼もしい相棒、ス[…]
- 1
- 2














































































