![[2025MotoGP] 2020王者ミルに迫る! オージーケーカブトのサポート経緯や、デザインの秘密は? アレイシ兄貴の自転車ヘルメットの行方も判明!](https://young-machine.com/main/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
開幕を直前に控え、さまざまなニュースが入ってくるレース界ですが、数あるネタの中でもMotoGPライダーのライディングギア変更は気になる情報です。2025年の初めに発表された、日本のヘルメットメーカー、オージーケーカブトが2020年のMotoGPチャンピオン、ジョアン・ミルと新たに契約を締結したニュースにも驚かされましたが、今回、サポートの経緯やいろいろな裏話をオージーケーカブトに直接聞くことができました。
ミルとガードナーのマネージャーが一緒! 親友ラバトも被るカブトとの縁
ジョアン・ミルとレミー・ガードナーのマネージャーが一緒だったこともオージーケーカブトとの契約につながった
マーケティング戦略に関わるサポートライダーとの契約は、綿密な計画に基づいて進められると考えられますが、今回のジョアン・ミル(ホンダHRCカストロール)とオージーケーカブトとの縁には、人間関係も大きく作用しているようです。
WSBK(スーパーバイク世界選手権)に参戦するレミー・ガードナー(GYTR GRT Yamaha WorldSBK Team)は、MotoGP時代の2022年からカブトを使用していますが、じつはミルとレミーのマネージャーは同一人物。
2024年の終盤にかけ、レミーがワイルドカードで3戦走ったこともあり、「もしかしたらMotoGP復帰の可能性もあるのでは?」と、カブト側がマネージャーのパコ・サンチェス氏に情報収集を含めアプローチ。結果的にレミーのWSBK参戦継続が決定したため、ミルに話が持ち込まれたそう。
ミルはすぐカブトに興味を示しましたが、ここでもうひとりの重要人物、ティト・ラバト(Yamaha Motoxracing WorldSBK Team)が登場します。MotoGPクラスで4年戦ったラバトは、ミルと同じスパニッシュで、オフも一緒に過ごすことがある、大の親友なのは知る人ぞ知るところ。
2022年からカブトを着用するラバトより性能についてすでに聞いており、レミーの薦めもあって、トントン拍子でテストへと進んだという。
ワイルドカード参戦したレミーにMotoGP復帰の可能性を感じたカブト側がアプローチ(写真は2025年WSBK開幕戦)
黒塗りヘルメットで実施した初回テストで出た、ミルからの即一発OK!
2024年11月に実施されたバルセロナ公式テストで黒塗りの『F-17』を初めて装着したミルは「風の巻き込みがなく、素晴らしい! フィッティングの良さや静寂性、高速でまったくヘルメットがブレないことに感動したよ」とコメント。初回のテストで、即一発OK! が出た。
『F-17』は、CFD(3次元数値流体解析)を駆使して開発された独自の空力デバイス、“ウェイクスタビライザー”を採用し、直進時だけでなく横風や後方確認時の空気抵抗を低減。空力性能に大きく寄与する“クレストスポイラー”も装備し、走行風で発生する浮き上がろうとする力も抑制する優れもの。
さらにサポート選手が被るヘルメットは、カブトが積極的に開発を進める“Mips(Multi-Directional Impact Protection System)”を搭載。帽体の内側に取り付けられた低摩擦層が、衝突時にヘルメット内でわずかに動き、脳損傷のリスクを軽減します。
オージーケーカブト開発部の口野彰義氏は「レース用モデルの開発は常に進めています。ドゥカティ開発ライダーのミケーレ・ピロ選手に加え、2025シーズンからアレイシ・エスパルガロ選手もホンダのテストライダーを務めることになったので、開発スピードもアップすると思います」と、今後の展望を語ります。
ミルは故郷の大地からインスパイア、アレイシは日本への思いを込めて
ちなみにミルのヘルメットデザインは、イタリア・マルケ州ペーザロを拠点に、幅広くモータースポーツ分野のグラフィックを手かける『スターラインデザイナーズ』によるもの。ミルの故郷、スペイン・マヨルカの大地からインスパイアされた、植物の葉と幾何学的なラインを組み合わせて迷彩パターンを作成。前側はホンダをイメージした赤で彩られます。
一方、後ろ側はミルが好きな濃淡のグレーと黒をメインに蛍光イエローが配され、側面にジョアンのイニシャルである“J”、後頭部にパーソナルナンバーの“36”が入ります。
アレイシが着用する日の丸ヘルメットは、シンプルさとミニマリズムを表現。 “Less is more(少ないほど豊かである)”との哲学に従った真っ白いヘルメットには、日本メーカーへのリスペクトおよび責任が反映されているんだとか。
後頭部にカタカナで入る“ザ・キャプテン”の文字も、インパクト大! これは2024年まで在籍したアプリリア時代、開発で重要な役割を果たしたことから付いたニックネーム“Il Capitano”が由来。ホンダでも、テストチームを引っ張るという意気込みが感じられます。もちろん、トレードマークの“41”も両サイドにペイントされています。
2024年は『SL Grafics』がアレイシのデザインを担当しましたが、今回の日の丸ヘルメットは、バルセロナ生まれのクリエイティブディレクター兼グラフィックデザイナー、オリオール・ジェネ氏が設立した『urydesigns』に依頼。同スタジオはスペイン一部リーグに所属する、トップサッカークラブ『レアルベティス』、ナイキなどのグローバルブランドとのコラボレーションも展開しているそうです。
シンプルさとミニマリズムを表現した、アレイシの日の丸ヘルメット。日本メーカーへのリスペクトおよび責任を反映
トレックとプロ契約! アレイシ兄貴の自転車ヘルメットはどうなった?
アレイシ絡みで少し気になるのが、シグネチャーモデルの『AERO-R2 Mips』もリリースした自転車ヘルメットの行方。
アレイシ兄貴は、MotoGPの第一線を退くと同時に自転車のプロ選手になる夢(なにせ、太ももに自転車のタトゥーが入ってます)を実現! しかし、所属する『リドルトレック』はディスカウントスーパーマーケットチェーン『リドル』のスポンサードを受けた、自転車ブランド『トレック』が母体。同社はヘルメットも作っているので、カブトとはガチの競合です。
多くのスペイン人自転車選手と交流を持ち、カブトがトップレベルの自転車ヘルメットを作っているのを知って、契約時に「サイクルヘルメットもぜひ被りたい!」と熱望したアレイシが、2025年も自転車ヘルメットをなんとか被れるよう、自ら最後の最後まで調整したそうですが、そこは『トレック』とのアンバサダー契約が存在するため、やはり着用不可。今は「チームとの契約が切れたらまた被らせて…」と話してくれているとか。
Moto2 & Moto3の有力ライダーもサポート! 2025年は表彰台ラッシュ!?
もっとも注目度の高いMotoGPクラス中心に話を進めてきましたが、オージーケーカブトはMoto2 & Moto3の有力ライダーもサポートしています。
まずMoto2は、2024年マレーシアGPに代役参戦。見事にポールポジションを奪取し、2位表彰台を獲得したホルへ・ナバロ(クリントフォワードファクトリーチーム)、2024年Moto3ランキング3位、コリン・ベイヤー(レッドブルKTMアジョ)のふたり。とくにベイヤーが加入したアジョモータースポーツは、複数のMoto2 & Moto3王者を輩出している名門だけに注目が集まります。
Moto3では、2024年のFIMジュニアGPで表彰台に立ったアルゼンチン期待の17歳、バレンティン・ペローネ(レッドブルKTMテック3)と新たに契約を結びました。
WSBKは、ガードナーとラバトが継続して使用。2024年WSSP(スーパースポーツ世界選手権)ランキング3位のヤリ・モンテッラ(バーニスパークレーシングチーム)もWSBKへステップアップしました。2年目のWSSPを迎える、鳥羽海渡(ペトロナスMIEホンダレーシング)も引き続きカブトで走ります。
ミルは「今回のテストで示したペースは、ホンダに加入して以来最高のもの」とRC213Vの仕上がりに少なからず手応えを感じているようですし、2025年シーズンは、カブトユーザーが表彰台に登壇する姿をたくさん見られるかもしれませんね。
RC213Vの仕上がりに手応えを感じているといわれるミル。2025年こそ表彰台でヘルメットを掲げる勇姿を見たい
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
ヤングマシン主催“走行距離バトル” ヤングマシンがツーリングイベントを企画しました! それはズバリ、「走行距離バトル」です。 速さや巧さは関係ねえ!! とにかく走ったヤツがエライ!! そんな単純明快な[…]
白線が滑りやすいのは事実。その原因は? まず、道路の白線が滑りやすいのは紛れもない事実だ。路面標示用塗料メーカー10社で構成される路面標示材協会によると、白線の滑り抵抗性は湿潤時で40〜5[…]
初期段階から「ユーザビリティ」を考え設計 ドライブレコーダーやスマートモニターなどの製品で知られる、ミオ。その開発・生産を行っているのは、マイタックデジタルテクノロジー社だ。 マイタックデジタルテクノ[…]
クシタニが主宰する国内初のライダー向けイベント「KUSHITANI PRODAY 2025.8.4」 「KUSHITANI PRODAY」は、これまで台湾や韓国で開催され多くのライダーを魅了してきたス[…]
実質年利2.69%のスペシャルクレジットキャンペーン カワサキモータースジャパンでは、2025年7月1日(火)よりカワサキモーターサイクル新車(国内全モデル、年式排気量不問)/オフロードコンペティショ[…]
最新の関連記事(レース)
ME125W[1977]:オリジナルフレームの原点 レースが2ストローク全盛の時代に、ホンダCB125JXの空冷4ストローク単気筒SOHCエンジンを大胆にチューン。自然循環式のオリジナル水冷シリンダー[…]
常識を塗り替えた最強の空冷Z いまやレーサーやスーパースポーツ車はもちろん、スポーツネイキッドでもメジャーなアルミフレーム。しかしその源流は、いちコンストラクターが作ったマシンにあった…。 モリワキエ[…]
茂原ツインサーキットのコース外で基礎練習に特化 そもそもモトコネ秘密特訓は、元全日本シリーズチャンピオンの辻本氏が主催するミニバイクレース「カフェ耐」のエントラント向けに考案されたもの。 このレースに[…]
欧州ヤマハとUSヤマハの連携で生まれたカスタムビルドのXSR900 GP ウェイン・レイニーがバイクでサーキットを走った! 往年のレースファンなら、それがどれほど特別なことか理解できるだろう。 199[…]
決勝で100%の走りはしない 前回、僕が現役時代にもっとも意識していたのは転ばないこと、100%の走りをすることで転倒のリスクが高まるなら、90%の走りで転倒のリスクをできるだけ抑えたいと考えていたこ[…]
人気記事ランキング(全体)
50年の眠りから覚めたBSA、復活のファーストモデルがゴールドスター 世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。輸入を手掛けるウイングフットが「BSA ゴールドスター」を取り扱い“ほぼ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
シリーズ累計で約3万台を生産したW1の系譜 約9年に及んだ販売期間の中で、W1シリーズの人気が最高潮に達したのは、ペダルの配置が左:シフト/右:リヤブレーキに改められたW1SA。それに次ぐのはツインキ[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたやまは「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
最新の投稿記事(全体)
トリックスター初となるハーレー用マフラー トリックスター初となるハーレー用マフラーが、X350向けにリリースされた。今回、初の試みとして“ツインタイプ”のサイレンサーが採用されている。 X350の特徴[…]
ライディングポジション変更のおかげで操縦性も大幅アップ! 私が参戦する全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスは、5月下旬にシーズン初戦を迎え、私自身も今季のさらなる走りの進化に期待しているのですが[…]
2024年モデル概要:赤×黒の熱いカラーリング 「エキサイティング&イージー」をコンセプトに掲げるZ900は、カワサキのフィロソフィーを体現したかのような、先鋭的な「Sugomi」デザインが特徴。エン[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたやまは「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
- 1
- 2