
ヤマハは欧州で、フレームの設計から見直した新型「MT-07」を発表した。MT-09に続いてオートマチックのY-AMT仕様をラインナップし、倒立フロントフォークや5インチTFTディスプレイなど装備も一新。デザインもMT-09と共通イメージの顔を中心に生まれ変わっている。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
2気筒にもオートマチック『Y-AMT』を投入!!
ヤマハは欧州で新型「MT-07」を発表した。先行して登場している最新MT-09と同様に、クラッチ操作とシフト操作を必要としない『Y-AMT』仕様をラインナップするのが最大のトピックだが、車体もフレームとスイングアームを再設計し、倒立フロントフォークを採用するなど全身に大掛かりな変更を受けている。
Y-AMT(ヤマハオートメイテッドマニュアルトランスミッション)は、通常のMT機構をベースとしながらクラッチ操作とシフト操作を電動アクチュエータに任せるオートマチック機構の一種。クラッチレバーとシフトペダルは廃止されているが、左手元のレバースイッチで手動シフトも可能だ。タイムラグのないギヤシフトでスポーツ性の高い走りを実現する一方で、ビギナーやクラッチ/シフト操作がしにくい事情を持った方にモーターサイクルの門戸を開くメカニズムでもある。
Y-AMTの採用にともない、シフトダウン時のブリッピングを可能とする電子制御スロットル(YCC-T=Yamaha Chip Controlled Throttle)を投入。さらにY-AMT仕様にはクルーズコントロールも実装される。
左はクラッチレバーが見えるMT仕様、右がクラッチレバーとシフトペダルを廃したY-AMT仕様だ。MT-09の日本仕様では価格差11万円だが、スマートキーの追加装備もあった。MT-07ではどうなる?
2段階のトラクションコントロールシステムと3つのパワーモード(ストリート/スポーツ/カスタム)を持ち、YRC(Yamaha Ride Control)によって任意のセッティングが可能だ。さらに、ライダーが自分の意思で制御できるMTモードとオートマのATモードを切り替え可能なY-AMT仕様では、ATモードでD/D+の2モードを設定可能とし、スロットルレスポンスとトラクションコントロール、シフトタイミングの全てを一括して制御する。
ヤマハがCP2と呼ぶ270度クランクの並列2気筒エンジンはユーロ5+に適合しただけでなく、エアクリーナーまわりや吸気コンポーネントの形状とレイアウトを最適化したことでライダーに望ましい吸気音を聞かせる。特にスロットル半開までのコーナー脱出時に気持ちのいい音を響かせるという。
外装デザインはシャープさを増した最新MT-09のよう
外装まわりは完全に新設計され、バイファンクショナルLEDヘッドライトの採用によりMT-09似の新フェイスに。新しい吸気音増幅ダクトを追加しているにもかかわらずコンパクトな燃料タンクと新しいテールユニットによって、スッキリとした外観を実現した。
メーターは5インチTFTフルカラーディスプレイが新作になり、速度と回転、燃料残量、平均燃費、気温、ギヤ段数などを見やすく表示するだけでなく、無料のガーミン製アプリをインストールしたスマートフォンと連携することによってフルマップまたはターンバイターンのナビゲーションを表示することも可能だ。
これに合わせ、スイッチギアも新世代のものにアップデート。最新のMT-09と同様に、ウインカースイッチを軽くタッチすると3回だけ点滅するモードや、バイクが150m以上走ると15秒後に自動的にオフになるオートキャンセル機能も手に入れた。このほか急ブレーキを検知すると自動でハザードランプが高速点滅するエマージェンシーストップシグナルも採用している。
ライディングポジションも刷新され、シート高は805mmながら絞り込まれたシート形状で様々な体格のライダーに対応。ハンドルバーは幅が18mm広く、22mm低く、9.3mm後方に移動した。また、ステップは10mm低くなったことで膝の曲がりを緩やかにしている。
バイファンクショナルLEDヘッドライトと、ツリ目の2眼LEDポジションライトが最新MTシリーズの表情を形作る。
倒立フロントフォークとラジアルマウントブレーキ採用!
車体は、新たに追加された装備によって総重量が4.5kg増加するところを、むしろ183kgと従来モデルよりも1kg軽量に(Y-AMT仕様でも186kg)。これはバネ下を合計で480g軽量化するスピンフォージドホイールの採用や、バッテリー、アルミ製トリプルクランプなどによる600gの軽量化をはじめとした、多くの部品をグラム単位でダイエットした恩恵だ。このほかボディ外装でも600gの軽量化を達成しているという。
これまでMT-07は正立フロントフォークを採用してきたが、第4世代となった新型ではφ41mm倒立フロントフォークとラジアルマウントキャリパーを新採用。剛性アップに合わせてフレームとスイングアームも再設計されており、リヤショックとリンケージも最適化された。
倒立フロントフォークの採用と外装デザインの一新で大幅なイメージチェンジを果たした。
ちなみにフレームの重量は従来型と同じ約14.8kgだが、ねじれ/縦/横の剛性は12~13%向上したという。見た目は大きく変わっていないものの、パイプ径と厚みは全体的に変更され、補強ブレースも改良されている。これらの結果、荷物を積載したときの安定性も向上したというから興味深い。
クラッチにはアシスト&スリッパークラッチを採用したことで、クラッチレバーを引くために必要な力を22%軽減。シフトダウン時の過度なバックトルクを逃がすことで、リヤホイールの無用なホッピングも防いでくれる。
価格や発売時期は欧州各国の仕向け地によるとされるが、今のところ未発表。車体色はMTとY-AMTで共通の3色をラインナップする。日本でのデビューも心待ちにしたい!
YAMAHA MT-07 Y-AMT[2025 EU model]
YAMAHA MT-07 Y-AMT[2025 EU model]Ice Storm
YAMAHA MT-07 Y-AMT[2025 EU model]Icon Blue
YAMAHA MT-07 Y-AMT[2025 EU model]Tech Black
YAMAHA MT-07[2025 EU model]
YAMAHA MT-07[2025 EU model]Icon Blue
YAMAHA MT-07[2025 EU model]Tech Black
YAMAHA MT-07[2025 EU model]Ice Storm
以下、欧州ヤマハ公式ページのスペック表には車重184kgと記載されているが、プレスリリースの内容から183kgが正しいと思われる。
車名 | MT-07 |
全長×全幅×全高 | 2085×780mm×1105mm |
軸距 | 1400mm |
最低地上高 | 140mm |
シート高 | 805mm |
キャスター/トレール | 24°50′/90mm |
装備重量 | 183kg【186kg】 |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ |
総排気量 | 689cc |
内径×行程 | 80.0×68.6mm |
圧縮比 | 11.5:1 |
最高出力 | 73.4ps/8750rpm |
最大トルク | 6.8kg-m/6500rpm |
始動方式 | セルフスターター |
変速機 | 常時噛合式6段リターン |
燃料タンク容量 | 14L |
WMTCモード燃費 | 23.8km/L |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 |
ブレーキ前 | φ298mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
ブレーキ後 | φ245mmディスク+1ポットキャリパー |
価格 | 未発表 |
色 | 灰、青、黒 |
発売日 | 未発表 |
MT-07のディテール
新しい5インチTFTディスプレイを採用し、トラクションコントロールをはじめとしたライディングモードなども設定可能。ガーミンのアプリをインストールしたスマートフォンと連携すればナビ機能も使えるようになる。
MT-07 Y-AMTのディテール
レバー式のシフトスイッチを設けた専用スイッチギアはMT-09 Y-AMTと共通か。親指で押してシフトダウン、人差し指で引いてシフトアップだが、人差し指で弾くようにしてシフトダウンすることも可能だ。
【動画】2025 Yamaha MT-07: Dawn of a New Darkness
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 新型ネイキッド)
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
YZF-R1シリーズ直系の4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツネイキッド ヤマハは、同社の最高峰スーパースポーツ「YZF-R1」のエンジンを低中速寄りに仕立て直して搭載した『MTシリーズ』のフラッ[…]
2024年にモデルチェンジ&Y-AMT仕様追加、最新カラーは1色のみ入れ替えで登場 ヤマハは、2024年4月・9月に発売した新型「MT-09」「MT-09 Y-AMT」に新色のマットライトグレーを追加[…]
車体の刷新でスポーツ性を大幅強化 今回の倒立フォーク化&ラジアルマウント化のモデルチェンジでは、本来約4.5kgの重量増になるところを、MT-07ならではの軽さに拘って各部を軽量化。車体のねじれ/縦方[…]
ブランニュー色はライトグレーのボディにライトブルーのホイール ヤマハが「MT-25」「MT-03」の2025年モデルを発表。YZF-R25&R3と同様にシートまわり&テールカウルが変更されたほか、アシ[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
“Neo Retro”ロードスポーツ:2016年モデル 発売は2016年4月15日。現代的ストリートファイターのMT-09をベースに、アルミタンクカバーなど金属の質感を活かした専用外装などでネオレトロ[…]
ヤマハ主催のナイトミーティング 去る5月10日(土)、ヤマハ発動機販売が主催するヤマハMTシリーズのイベント『The Dark side of Japan Night Meeting 2025(以下D[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
ヤマハ発動機は、5月21日(水)~23日(金)にパシフィコ横浜で開催される国内最大級の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会)に出展し、同[…]
2ストレプリカの原点にして、TZRへの橋渡し役だったRZシリーズ 最後の2ストロードスポーツを作るという情熱が込められ、1980年に登場したRZ250。同車が「最後」と言われたのは、環境問題も絡めて今[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかって[…]
インフレの今、価格破壊王のワークマンがまたやってくれた! 春から初夏にかけ、ツーリングのシーズンがやってきた。爽やかな空気を全身に浴びてのライディングは最高だ。しかし…この期間はジメジメ・シトシトの梅[…]
ネオクラシックながら”新しさ”で対抗 ヘリテージやネオクラシックと呼ばれるカテゴリーで、登場以来絶対的な人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズ。現代スポーツネイキッドをベースに、名車Z1を絶妙にアレ[…]
実は”ホンダエンジン”時代からの愛車だった マンセルがF1のパドックで乗っていたのは、ホンダのダックス70(CT70)でした。1988年モデルとも、1987モデルとも言われていますが、いずれにしろ当時[…]
◆今回のPRO解説者:以前にはネオクラ車の解説記事もお願いしたバイクデザインのプロフェッショナル。1980年代前半に某社に入社したベテランで、オンロード系をメインに排気量の大小を問わずさまざまな機種を[…]
最新の投稿記事(全体)
シート&タンクが単色化。フレーム色も独自設定 発売は2024年7月25日。主要諸元に変更はなかったものの、カラーリングが変化。2023年モデルよりも、初期のモンキー125に近い、シンプルなカラーリング[…]
Street VWs Jamboreeの概要 フォルクスワーゲンの祭典、Street VWs Jamboree 2025が6月1日に開催されます。 概要についてはこちらの記事に詳しくまとめてありますの[…]
アメリカの野生動物や軍隊に由来する車名 「最強」「最速」そして「独自のルックス」をイメージするカワサキブランドのルーツといえば2ストロークマシンの怪物500SSマッハⅢと4ストローク4気筒キングZ1を[…]
燃料タンク部分に収納スペースと給油口はテールカウルの思いきった新しいデザイン! 1990年4月、スズキはいかにもエアロダイナミクスの良さそうなフルカバードボディの250cc4気筒をリリース。 最大の特[…]
ツーリングの目的地としても楽しめる「日本の峠」たち ツーリングの醍醐味にはいろいろあるが、バイクならではの「五感で感じる風景」や「季節の移ろい」を楽しむことも大きな魅力。 山/海/川/田園風景など、走[…]
- 1
- 2