2023年11月7日に開幕したEICMA(ミラノショー)で、ホンダが「CBR1000RR-Rファイアーブレード/SP」の2024年モデルを発表。一見しただけでは従来型とほぼ変わらない…かのようだが、実はアップデート項目はかなりの多岐にわたり、フルモデルチェンジに迫る内容。218ps/11.5kgf-mの最高値を維持しながら、ドラバビリティの向上も図られているのだ!
●文:ヤングマシン編集部(田宮徹)
MotoGPにおける近年のトレンドをホンダも市販車に導入
ホンダのフラッグシップスーパースポーツとして、2020年型から販売されてきた「CBR1000RR-Rファイアーブレード/SP」が、2024年型で2年ぶりのモデルチェンジ。イタリアのミラノで11月7日に開幕したEICMA2023に合わせて、アップデート内容の詳細が発表された!
外観の違いですぐに気づくのは、ミッドカウルに配されたウイングレットの変更。従来型までは、2017~2018年仕様のRC213Vから技術がフィードバックされたダクトウイング(ウイング内蔵ボックス)だったが、2024年モデルでは、MotoGPマシンからの技術転用という点は同様ながら、ミッドカウルの上部に“コ”の字状に張り出した、より最近のRC213Vを思わせるデザインに刷新されている。このウイングレットは、従来型と同レベルのダウンフォースを発生するが、高速コーナーにおけるヨーモーメントが10%低減され、ハンドリングの向上にも貢献している。
もちろん、最新型ウイングレットの採用に伴って、ミッドカウル本体の形状も変更。さらに、これとつながるアンダーカウルも従来型とはデザインが異なり、ライダーの足に当たる走行風をより減らして空力特性を高め、後輪周辺の整流効果アップによるトラクション性能向上も図られている。
また、燃料タンクおよびカバーも形状が見直され、これまでより高さを抑えることで、ライダーが伏せた状態での前面投影面積を減少。よりニーグリップしやすい形状が用いられ、燃料容量は0.4L増の16.5Lになった。
218馬力の最高出力を維持しながら戦闘力をさらにアップ
MotoGPマシンと同じ81mmボアを採用する999cc水冷並列4気筒エンジンにも、全回転域でのパワー&トルクアップを目指して、細かい仕様変更が妥協なく施されている。圧縮比は13.4→13.6に高められ、より軽量な吸気バルブと3段階楕円形状プログレッシブ構造のバルブスプリング、軽量化が施されたクランクシャフトおよびコンロッドとこれに最適化されたクランクケースを採用。これらに合わせて、バルブタイミングも見直された。
最高出力は218馬力、最大トルクは11.5kgf-mが維持されているが、その発生回転数はそれぞれ500回転下がり、最高出力は1万4000回転、最大トルクは1万2000回転で発揮。さらに、1~6速のギヤ比と一次減速比がすべてショート方向に振られており、これらのことからコーナー立ち上がりでの加速力がさらに高められていると想像できる。
排気系は引き続きアクラポヴィッチ製のチタンマフラーを採用するが、マフラー容量は1L大きくなり、これにより従来型よりも5dBの静粛性向上。従来型はかなり勇ましいエキゾーストノートを奏でるが、やや静かになったことで、音量規制が厳しいサーキットでの心配事が減るかもしれない。
パワーユニット関連でその他に見逃せない変更としては、スロットルバイワイヤの2モーターシステム化。1番シリンダーと2番シリンダー、3番シリンダーと4番シリンダーにそれぞれモーターを使用することで、スロットル操作に対してよりリニアな反応が実現され、必要に応じてエンジンブレーキの効果をこれまで以上に高めることが可能になっているという。
なお、エンジンの仕様変更に合わせて、トラクションコントロールやエンジンブレーキコントロールをはじめとする多彩な電子制御システムは、すべてセッティングが最適化されている。
ちょっぴりライダーに優しいポジションになった!
車体面ではまず、最低2mmの肉厚で成形されたアルミ製ダイヤモンドフレームの剛性バランスが最適化され、単体では960g、エンジンハンガーボルトで140gの軽量化も達成された。フレームの肉薄エリア拡大により、横方向剛性は17%、ねじり剛性は15%のダウン。これにより、よりしなやかなハンドリングフィールを狙っている。
従来型はかなりスパルタンなライディングポジションだったが、2024年モデルはこれも見直され、ステップ位置は19mm低くなり、ハンドルグリップ位置は19mm上方かつ23mm手前に。シート高はこれまでと同じ830mmで、全体ではちょっと“楽”になった。とはいえこれは、公道用モデルとしての快適性を高めるためではなく、サーキットのスポーツライディングにおけるより自在なコントロール性を追求した結果だ。
スタンダードタイプのCBR1000RR-Rファイアーブレードは、倒立フロントフォークがショーワ(日立アステモ)製のBPF、プロリンク式で上部がブラケットを介してエンジンのクランクケース背面にマウントされるリヤモノショックが、同じくショーワ製のBFRC-lite、フロントブレーキキャリパーがニッシン製のラジアルマウント4ピストン仕様、リヤブレーキキャリパーがブレンボ製で、これは従来型と同じ。リヤリフトとコーナリングを加味した制御が施されるABSには、従来のスポーツモードとトラックモードに加え、リヤのみオフとなりコーナリング対応制御が省かれたレースモードが追加された。
SPは電子制御サスペンションとフロントブレーキも最新バージョン
軽量なリチウムイオンバッテリーをはじめ、さらに上級な装備が満載のCBR1000RR-RファイアーブレードSP。パワーユニットや車体の変更点はスタンダードタイプと同様だが、それに加えて従来型にも採用されていたオーリンズ製の前後セミアクティブサスペンションやブレンボ製のフロントブレーキシステムにも、改良が加えられている。
まずオーリンズ製の前後サスペンションは、フロントフォークがNPX仕様、リヤモノショックがTTX36仕様なのはこれまでと同じだが、新設計のスプールバルブを内蔵して、ハードウエアと連携する新たなチューニングインターフェイス(OBTi)を採用した、第3世代のオーリンズスマートECシステムに進化した。これにより、より細かいセッティングと適正な制御が可能になった。
また、フロントブレーキキャリパーは従来型のスタイルマから最新のスタイルマR4タイプとなり、サーキット走行における高温対応力がさらに向上。これまで同様、マスターシリンダーおよびレバーもブレンボ製だ。
限定300台のSPカーボンエディションも新登場
2024年型のCBR1000RR-Rファイアーブレード/SPは、スタンダードとSPともにグランプリレッド(トリコロール)の車体色のみ設定。グラフィックデザインは従来型から変更されているが、カラーリングイメージはほぼ踏襲されている。
ただしSPには、限定300台のカーボンエディションが設定され、こちらはマットパールモリオンブラック塗装を採用している。ミッドカウル/アンダーカウル/ウイングレット/フロントフェンダー/フロントシェルター/マッドガードカバーにはカーボン素材が使われ、エアボックスカバーには記念のプレートを装着。車重は1kg減で、スタンダードと同じ200kgとなっている。
全日本ロードレース選手権のST1000クラスなど、改造範囲が狭いレースでは好成績をマークし続け、ストック状態でのポテンシャルではライバルを圧倒してきたRR-R。さらなるブラッシュアップでさらに伸ばした戦闘力を、サーキットで確かめられる日が待ち遠しい!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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