Z900RSの上級バージョンにして、カワサキのヘリテイジカテゴリー「Z-RS」シリーズの頂点モデルでもある「Z900RS SE」がついに発売。予約殺到で入手困難とされるこのSEに試乗した。前編のディテール紹介に続き、本記事ではヤングマシンのメインテスター・丸山浩氏による公道インプレッションをお届けする。
●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキ
Z900RS SE:伝説カラーをまとうZ-RSシリーズの最上級モデル 伝説のイエローボールをまとい、オーリンズ製リヤショックとブレンボ製ブレーキシステムを足まわりに採用して、より上質なライディングフィ[…]
同じライディングポジションでもしなやかな上質感
Z900RSの上級バージョンであるSE。本来であれば’21年11月にデリバリーされる予定だったが、新型コロナ禍の影響で延期。それが’22年1月、待ちに待ったライダーの元にようやく届けられることとなった。
このSEはリヤにオーリンズと共同開発した専用サスペンションを装着し、フロントには専用セッティングとした倒立フォークとブレンボのブレーキシステムを採用。車体には欧州向け初代Z1に設定された通称”イエローボール”を彷彿とさせる専用色をまとっている。
実車の前に立つと、なるほどゴールドの前後サスペンションを、これまたゴールドに塗ったホイールで引き立たせた高級感あふれる佇まい。サスペンションを変更したことで空車状態の最低地上高とシート高は10mmアップしているが、これは足まわり変更に伴いサスセッティングを見直した結果で、ライダーが跨った1G状態ではSTDと変わらない高さになるという。
たしかにその通りで、足着き性に関してはSEもSTDも両足指の腹まで接地し、ほとんど違いが感じられない。念のために地面からかかとまでの寸法を測ってみたが、どちらも約50mmと同じだった。シート高の違いは初期作動でよく動くオーリンズの特性を引き出すためだろう。前後に車体を揺らしてみると劇的に変わるほどではないものの、たしかにサスにしなやかさが生まれている。ハンドルバーやシートはSTDと同じなので、Z900RSらしい鷹揚なライディングポジションのまま、もっと高級なバイクに跨った気分だ。
走りの上質感をどの速度域でも感じ取れる
Z900RSは、その伝統的な姿とは裏腹に、もともと走りの上では軽快で現代的なハンドリング性能を持ち、ネイキッドとしてはすでに高いスポーツ性能に到達していた。あえて指摘するとすればリヤサスの突き上げ感がちょっと強めで、長時間乗っているとお尻が痛くなってきそうな部分だろうか。
しかしそのあたりはスポーツ性ではなく、いわば上質感とか快適性といった類のもの。STDサスペンションでは実現しきれなかったこの乗り味の上質さを、SEでは一番に追求したという印象だ。スポーツ性を追求するならサスを硬めにしていくところだが、SEの前後サスはSTDよりも伸び側の減衰力がやや弱められている。これは動きのいいオーリンズの初期ストローク部分で不快なショックを吸収させるためだろう。空車で10mm高いシート高が乗車すると一緒、ということがそれを示している。
そして、ブレンボとなったブレーキシステムが上質さをさらにプラスする。メッシュホースやマスターシリンダー径の最適化も相まって、コントロール性がとにかく秀逸だ。軽く握った初期タッチから速度の微調整がしやすく、別に攻めずとも街中の普段走りからその素晴らしさが味わえる。
もちろん奥まで握りこめばブレンボだけにストッピングパワーは絶大。フロントサスペンションのバネレートはこの増大したストッピングパワーを受け止めるために高めた印象だ。おかげでサスがブレーキ性能に負けることなく、ハードなブレーキングの安定感もSTDよりワンランク上。SEは、Z900RSを所有する喜びを走りの上でもさらに実感させてくれた。
丸山の結論:念願のZライフをより満足させるSEだ!
’17夏のデビューから早いものでもう5年目。伝統的なスタイルと軽快で扱いやすい現代的な走りが融合した令和の”カワサキZワールド”をすっかり確立した感のあるZ900RSだが、今回のSEによってさらにそれが深まることとなった。価格はSTDより22万円アップとなるが、オーリンズとブレンボ、それにイエローボールの専用色が付いてこの価格なら、パーツ代だけでもお買い得と思える内容。それに、ただでさえ入手しにくい状況が続くZ900RS。せっかく念願のZに乗るのだ。さらに乗り味が上質になったSEなら、より豊かなバイクライフを送ることができて価格差以上の満足感を得られるはず。50周年記念車も気になるが、そちらの足まわりはSTDと一緒。どちらも魅力的で選ぶのが悩ましい。
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