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ハーレーダビッドソンやインディアンが強い北米のクルーザー市場に、1801ccの空油冷フラットツインで勝負を挑むBMW。日本にもR18/クラシックの派生モデル「R18トランスコンチネンタル」と「R18B」が上陸した。激しい雨が降る中、車重440kg(!)のトランスコンチネンタルをメインに試乗した模様をレポートする。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:BMWモトラッド
’22 BMW R18トランスコンチネンタル
【’22 BMW R18 TRANSCONTINENTAL】■全長2650 全幅970 全高1500 シート高720(各mm) 車重440kg ■空油冷4スト水平対向2気筒OHV4バルブ 1801cc 91ps[67kW]/4750rpm 16.1kg-m[158Nm]/3000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量24L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70R19 R=180/65B16 ●色:黒 ●価格:403万2000円
【これぞ大陸横断ツアラーだ】先に登場したR18/クラシックと共通の空油冷フラットツインを専用設計のシャーシに搭載するR18トランスコンチネンタル。外観では大型フェアリング&スクリーン/レッグシールド/調整可能なウィンドディフレクター/45Lのトップケース/27Lのパニアケース/エンジンガードなどが特徴と言えるだろう。グリップヒーターや前後ヒートシーターなど快適装備も充実している。
【ライディングポジション】日本仕様は720mmのローシートが標準装備となり、足着き性は良好だ。フットボードは足の置き場の自由度が高く、長距離向き。[身長175cm/体重62kg]
【’36 BMW R5:元ネタは大戦前のスーパースポーツ】R18シリーズのスタイリングやフレームワークのベースとなっているのは、大戦前の1936年に登場したR5だ。当時としては超高回転型の494cc空冷フラットツインや、楕円断面パイプによるダブルクレードルフレームを採用した、言わば往年のスーパースポーツだ。燃料タンクの造型やブラックペイント、オープンシャフトドライブなどの特徴ををうまく採り入れたのがR18である。
[◯] Vツインとは対照的なドイツ流を貫いた走り
信じられないだろうが、ウルトラリミテッドに代表されるハーレーダビッドソンのグランドアメリカンツーリングファミリーは、峠道でバンク角の少なさをうらめしく思うほど、あの巨体にしてスポーティな性格を内包している。そして、当カテゴリーに正攻法で挑んだBMW。「R18トランスコンチネンタル」の走りは、やはり運動性において一切妥協はなかった。
このR18トランスコンチネンタル、ハーレーと同様にフォークを逆オフセット&スランテッドアングルとした専用設計のフレームを採用する。巨大なフェアリングとトップケースによって常に高重心感は付きまとうが、動き出してしまえば操舵は軽快であり、それでいてグラッとくる恐さはない。ハンドリングは、軸距が1720mmもあるので(ウルトラリミテッドは1625mm)旋回力こそ高くはないが、倒し込みや切り返しの操作に対するレスポンスは良好だ。荷重に応じてリヤの車高を自動的に調整する電子制御サスペンションのおかげもあって、乗り心地は非常に優秀。ウェット路面でも接地感は薄れることがなく、安心してクルージングすることができた。
1801ccの空油冷フラットツインは、セッティングも含めて先に登場したR18と共通で、ライディングモードは元気のいい順にロック/ロール/レインとなっている。R18でのロックモードはレスポンスが過敏に思えたが、車重が約100kg重いトランスコンチネンタルは、その一発ごとの力量感を楽しめるだけの余裕がある。反面、レインモードは雨の中でもやや物足りなさが…。エンジンフィール自体は、スロットル開閉時のトルク感を強調しているものの、高速巡航中はフラットツインらしくジェントルそのもの。脈動感/熱量/メカニカルノイズなどで常に存在を伝えてくるハーレーのVツインとは対照的で、ここで好みが大きく分かれそうだ。
防風効果はBMWだけあってほぼ完璧で、走っている限りほとんど雨に濡れることもない。また、標準装備のACC(アクティブクルーズコントロール)もR1250RTと同様に作動はほぼ完璧で、高速道路では必ず使いたいと思うほどだ。装備について不満らしい不満はない。
【広い回転域で極太トルク発揮】1801cc空油冷OHV4バルブ水平対向2気筒は、最高出力91psや3種類の走行モードも含め、R18シリーズ全車に共通。トラクションコントロールの一種であるASCや、エンジンブレーキを制御するMSR、ヒルスタートコントロール、リバースアシストなど、ライダーエイドな機能のオンパレードだ。
【シャーシは専用設計】R18/クラシック(K34)とR18トランスコンチネンタル/B(K35)の違い。フレームはヘッドパイプから後方を強化して耐荷重をアップ。またフロントフォークはネガティブオフセット&スランテッドアングルとし、フル積載の状態でも軽快なハンドリングと十分な安定性を両立している。
アルミキャストホイールはフロント19インチ/リヤ16インチ。ホイールトラベル量は前後とも120mmで、自動的に車高と減衰力を調整する高機能な電子制御サスペンションESAを採用。なお、ブレーキはフルインテグラルABSだ。
【日本仕様はACCを標準装備】R1250RTに続いて採用されたACC。BMWではアクティブクルーズコントロールと呼称する。前走車との車間だけでなく、コーナリング時にも適正な速度に調整する。なお、ボッシュの中距離レーダーセンサーはヘッドライト上部に埋め込まれる。
ヘッドライトには約10km/h以上で傾斜角7度になると内部のモジュールが回転して進行方向を照らすコーナリングライト機能を標準装備。その両サイドにはLEDの補助ライトも。
4つのアナログメーターと10.25インチのTFT液晶ディスプレイを組み合わせたコックピット。サウンドシステムは英マーシャル社とBMWが共同開発している。一番右側にあるのはエンジンの余力を視覚的に表示するパワーリザーブメーターだ(写真右)。
[△] クルーザーを望む人に好まれるかは未知数だ
ハーレーのツーリングファミリーは、フレーム剛性やサスセッティングなど年々モダンになってきているが、それでも適度な”ユルさ”が残されている。R18トランスコンチネンタルはそれが非常に少ないため、この真面目さが受け入れられるかが気になるところ。
[こんな人におすすめ] 正攻法で勝負。この新モデルで起死回生なるか
R1200CやK1600Bなど北米市場を強く意識したモデルを投入し続けてきたBMW。起死回生を図って発売したのがこのR18トランスコンチネンタルであり、クラシカルな外観に最新の電子制御デバイスをフル装備する手法はまさに正攻法だ。期待しかない。
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