
日本では’17年モデルを最後にラインアップから消えていたが、’21年型で3代目に生まれ変わったスズキ ハヤブサ。新型は販売店の予約開始からあっという間に年内の日本国内向け販売台数が完売してしまった。相変わらずの超絶的人気を誇る”最強の猛禽類”を、旧型2代目と比較しながら公道/テストコースで徹底試乗。テスターはヤングマシンおなじみの丸山浩氏が務める。本記事では高速走行のインプレッションをお届けする。
●テスター:丸山浩 ●まとめ:田宮徹 ●写真:長谷川徹 真弓悟史 山内潤也 ●取材協力:スズキ
ライダーを大満足させる、”溜め”からの湧き上がるトルク感
ハヤブサが生き生きするフィールドのひとつが高速道路。「そうは言っても、日本の公道で合法的に出せるのは120km/hまでだし…」という人もいるだろうが、じつはハヤブサのエンジンは、トバさなくても十分すぎるほど気持ちよかった。1340ccという超大排気量に由来した、低回転域から「ズヴォ~~」と立ち上がるトルクこそが持ち味だからだ。
そして新型は、その部分にさらなる磨きをかけてきた。最高のパフォーマンスを発揮する回転域よりもはるか下、3000回転くらいからのむずがゆくて”うずうず”してしまうような領域での加速感。ハワイ島キラウエア火山のマグマが止めどもなく湧き出るような壮大な盛り上がりを、中低速域の加速だけで楽しめてしまうのだ。
この回転域においては、スロットル開け始めで唐突にドンと加速力が立ち上がるわけではなく、クランクの慣性マスを利用したような”溜め”がまずあり、「ググッゥ…」とリヤタイヤが地面にトラクションをかけて捉えるのが先で、そこから「ズヴァ~ン!」と車体が前に突進する。
新型は、ここでの演出がより素晴らしく、”溜め”感は同じようにあるのだが、加速が開始してからの盛り上がりがスゴい。もちろん、そのままスロットルを開ければあっという間にトンデモない速度域に達するのだが、そんなことをしなくても、開け始めの加速がスタートする瞬間を味わうだけで満足できてしまう。
また、加減速がない一定速度での巡航時も含め、やはり新型は全体的にブラッシュアップされている。たとえばエンジンの振動は抑えられ、洗練されたフィーリング。ゴリゴリとした感触が残る旧型も、その荒々しい雰囲気を好むユーザーはいるだろうが、上質さという点では新型がだいぶ上を行く。

新型の前後サスペンションは旧型と比べてよく動く設定だが、それでいて日本の公道における高速域では直進安定性でも旧型を上回っている。シフターのタッチと制御の精度も特筆モノ。一方の旧型は、前後サスペンションのダンパーをハード方向にセッティングすることで超高速域に対応しているイメージ。そのぶん、ギャップ通過時のショックを新型よりも感じやすい。 [写真タップで拡大]
日本の高速道路を走る速度域での防風性は、スクリーン形状はかなり違うとはいえ、上半身については新旧ほぼ変わらないイメージ。下半身に関しては、カウルのボリュームが増したことなどから新型のほうがやや当たる風が少ない印象だが、とはいえ旧型も十分な防風性を備えている。
シートの座り心地に関しては、どちらもかなり快適な設計だが、その中でも新型のほうがやや上。直進安定性についても、しっかりとしているのは新型だが、これについても旧型が悪いというわけではなく、新型のほうがさらに良好と解釈してもらいたい。
ちなみに新型には、量産2輪車初のシステムとして、ライダーが40~200km/hの範囲内で任意に上限を設定できるアクティブスピードリミッターが搭載されているが、こちらの作動も不快感は皆無。上限に達したときにリミッターが唐突に作動するような感覚はなく、ごく自然に加速をやめる。
スロットルひと開けですぐ200km/hを超える乗り物なので、自制心を保つために設定しておくのもいいだろう。
車体に関しては、前後サスの設定を含め、旧型のほうがどちらかと言うとスーパースポーツの路線で、新型はもう少しツアラー方向に舵を切った印象。そのぶん、長時間の高速巡航では新型のほうがだいぶ快適だ。それに加えてエンジンフィーリングは上質で、これも快適性につながる。
丸山浩の10点満点評価
新型:10/10|旧型:8/10
高速走行のポイント:新型はクルーズコントロールで巡航時の疲労軽減
新型はクルーズコントロールも新採用。2速以上2000~7000回転で走行している30~200km/hの範囲内で設定可能で、スイッチ操作による速度調整もできる。セットした速度のキャンセル後に、前回セットした速度に戻すレジューム機能付き。 [写真タップで拡大]
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