
よもや、カフェレーサーに一片でも実用性を求める方はいないでしょう。究極までそぎ落とされた無駄のない車体、ストイックなまでのポジション、あるいはこだわりの部品選びなど、カフェレーサーカスタムは魅力に事欠きません。ベルギーのカスタムビルダー、フレッド・クルーガー(Fred Krugger)もカフェカスタムの魅力に取りつかれたひとりであり、その腕前は世界が認めるもの。今回は、そんなフレディが「ジャパン・トリビュート」と題して作り上げたホンダCB450をご紹介しましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
世界中のカスタムアワードを総なめしてきた有名ビルダー
2013年、ベルギーで開催されたブリュッセル・モーターショーのホンダブースは異様な熱気に包まれていたといいます。
ジャパン・トリビュートのタイトルどおり、日章旗がペイントされたタンクを見ても、ほとんどの観客がベース車両を言い当てられませんでした。
が、オールドスタイルのフレームに、モダンデザインのホイール、極めつけは妙なところに配置されたキャブレター。排気管と前後を逆にした配置は、まれにレーシングマシンでは試されたものの、公道向けカスタムとしては突飛としか言いようがありません。
フレディ・クルーガーの作品は、それまでもアメリカのAMDショーをはじめとした世界各国のカスタムコンテストで優勝するなど、高い評価を受けています。いずれも、実用性を度外視し、ベースの面影はかけらもなく、それでいて高質なワンオフパーツによる再構築は見るものの度肝を抜くことしきり。
もともとは、4輪のレーサーだったものの、好きが高じてハーレーのカフェカスタムを個人的に始めたのがビルダーになったきっかけだったとか。無駄と思えるものすべてをそぎ落としていく感覚は、極限性能を求めるレーサーだからこそ持ち得るものかもしれません。
ジャパン・トリビュートCB450は、ベルギーの有名ビルダー、フレディ・クルーガーが日本に敬意をこめたカフェカスタム。
ハーレーが使うリムや、シートカウルから覗くマフラーなど、自由奔放なセンスがさく裂。オークションでは約280万円で落札されています。
シリンダーヘッドをなぜか前後逆回転⁉
さて、ジャパン・トリビュートのベースは1966年モデルのホンダCB450。カフェカスタムの文法通り、バッテリーレスやハンドルとシートの高さが等しいなどの特徴もさることながら、驚くべきはシリンダーヘッドを回転させて前後逆に作り変えられたこと。
走行時にはよほど気を付けないと、前方からの砂やほこりを吸い込んでしまい、百害あって一利なしと言えなくもありません。とはいえ、クルーガーは加工だけで30時間以上をかけたとしており「誰も見たことのないものを作りたかった」とコメントしています。
このシリンダー前後逆転カスタムを受けたものか、排気管はシートの真下を通り、シートカウル左右に出口を設けるというスタイル。当然、ライダーに対する熱の影響が考慮され、シートはケブラー素材で成形され、遮熱版が張り付けられているようです。
もっとも、ショーの後で、フレディはこのマシンでソルトレイクのスピードウィークに挑戦しています。競技仕様と考えれば、こうした過酷なパッケージも納得できなくもありません。むしろ、理にかなった潔さ、と評価を受けるべきでしょう。
日章旗がペイントされたタンクは、これまた有名なペインター、ダディグラフの作品。フレークのニュアンスが絶妙ではないでしょうか。
生誕から10年たっても衰えぬ価値と存在感
そのほか、ベリンガーのブレーキシステム、ウィルバースのショートダンパー、リムはハーレーホイールの専門ブランドであるレネゲードホイールズといったパーツを使用しているものの、随所にワンオフパーツが製作されているところも見逃せません。
リリースから10年以上を経ていても、その存在感とクオリティの高さには少しの曇りもありません。実際、先ごろオークションに出品された際は1万5210ユーロ(約280万円)で落札されています。
フレディの作品は、このCB450以外にもハーレーダビッドソン、トライアンフ、ビューエルなど多岐にわたります。生粋のカフェカスタム好きなら、ぜひチェックしてみてはいかがでしょう。
スタイリッシュなシートはケブラー素材で成形され、ていねいな革張り。底面には金属の遮熱版が装備されています。
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