’80s国産名車・スズキ油冷GSX-Rシリーズ完調メンテ【識者インタビュー:バイクとの対話が楽しい】

’80s国産名車・スズキ油冷GSX-Rシリーズ完調メンテ【識者インタビュー:バイクとの対話が楽しい】

今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はスズキ独自の油冷4気筒を搭載したGSX-Rシリーズを紹介。本記事ではガレージdb・田憲明氏のインタビューとおすすめモデルをお届けする。

●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:ガレージdb

ガレージdb田憲明氏
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【ガレージdb・田憲明氏】’71年生まれの前田氏は、20歳の頃に油冷GSX-R1100を初体験。当時は特に感心はしなかったものの、数年後にGSF1200を入手して自分なりのスタンスでいじり始めると、このシリーズの魅力に開眼。現在は油冷4気筒シリーズ全車の構造を熟知している。

抜群の耐久性と生き物のような感触

前々記事前記事では、’85年型GSX‐R750から’07年型バンディット1200までをひとくくりで語ってきたが、実際の油冷4気筒の乗り味は各車各様である。エンジン特性を大雑把に表現するなら、ゴリゴリしたフィーリングのGSX‐Rに対して、GSF1200以降はマイルド化が図られている。

「確かにそういう傾向ですが、エンジン特性は調教次第と言えなくもないです。GSX‐Rをスムーズで扱いやすくすること、GSF以降をワイルドでパワフルに仕上げることは、十分可能ですからね。ただし大型初心者がこれから油冷に乗るなら、シリーズ末期に登場したフレンドリーなモデル=イナズマ/バンディット1200/GS1200SSがいいかもしれません。年式によって差はありますが、GSX‐Rの基本特性はスパルタンだし、GSF1200はパワーが控えめでも乗り味がちょっとヤンチャなので(笑)」

もっともその一方で、油冷4気筒シリーズには全車に共通する魅力がある、と前田氏。「一番の魅力は耐久性です。それはエンジンだけではなく、車体や電装系にも言える話で、このシリーズはとにかく造りが丈夫。耐久性に続く魅力は、生き物のようなフィーリングが味わえること…でしょうか。というのも、油冷は季節や気温の変化に敏感で、調子のいい悪いを乗り手が察知しやすいし、手を入れたら入れた分だけ答えが返ってくる。そういう特性だからこそ、僕を含めた油冷好きは、このシリーズから離れられないんだと思います」

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これまでに整備やカスタムを手がけた油冷を通して、耐久性の高さを認識した前田氏だが、中古車の程度は着実に悪くなっているし、生産年を考えれば、GSX‐RやGSFはそろそろフルレストアが必要という説がある。「そのあたりは微妙な話で、まず予算が潤沢にあるなら、大金を投入してフルレストアをするのも大いにアリでしょう。でも油冷の場合は、なるべくお金をかけずに使えるモノはそのまま使うという姿勢でも、十分に楽しめるんですよ。もちろん最近の油冷の中古は整備不良車が増えていますから、お金をかけないと言っても限度がありますが、たとえばカワサキZ系などのようにフルレストアが大前提かと言うと、油冷はまだその領域ではない」

取材時の同店に入庫していた油冷4気筒は、いずれも何らかのカスタムが行われていて、ノーマル車は皆無だった。この状況は、カスタム好きの前田氏の趣向の表れなのだろうか。「いや、僕は関係ないです(笑)。油冷は現役時代からカスタムされることが多くて、ウチではマフラー/リヤショック/フロントブレーキなどの刷新が昔からの定番です。逆に油冷好きでノーマルにこだわる人って、ほとんどいないんじゃないでしょうか」

これから油冷4気筒を購入しようと考えている人に対する前田氏からのアドバイス。「中古を購入して少しでも違和感を持ったら、好調の油冷を知っているショップやベテランライダーに相談してほしいですね。現役時代を知らない人の場合は、『古いバイクだからこんなものかな…』と思いがちですが、整備状況が良好なら、初代油冷の’85年型GSX‐R750でも現代の路上を普通に走れますから。もちろん、今どきのバイクほど至れり尽くせりではないですが、旧車特有の気遣いは油冷にはほとんど必要ないと思いますよ」

ガレージdb GSF1200レーサー

【レースで油冷4気筒の限界を追求】筑波で開催されるTOTやドラッグレースのJD‐Sterで何度も上位入賞を飾っている、前田氏のGSF1200レーサー。WEBカムやGSX‐R1100用ハイコンプピストンを投入したエンジンは、後輪で160psを発揮。キャブはFCRφ41mmで、排気系はKファクトリー+プロドラッグ。足まわりにはアドバンテージ・イグザクトホイールやナイトロンの前後ショックを投入している。 [写真タップで拡大]

おすすめモデル:膨大な選択肢の中からどの油冷を選ぶか?

油冷に興味があるが、どのモデルを選ぶべきかがわからない。そんなお客さんに、前田氏は以下のように答えているそうだ。「油冷なら何でもと言うのであれば、やはり年式が新しくて経年劣化が少ない、バンディット1200の最終型に近いモデルがいいでしょう。カスタムの素材としてはGSF1200が魅力的ですが、最近は程度のいい中古車が減ってきたので、安易に推奨はできないですね」「GSX-R750/1100シリーズのオススメは、いろいろな面で熟成が進んだ一方で、正立式フォークと短めのホイールベースを維持していた’89年型です。と言っても、’90年型以降の漢気あふれる乗り味を評価する人も多いですが、油冷GSX-Rの後期型はシリーズ前半と比べると車体の大きさと重さを感じるんですよ」

SUZUKI BANDIT 1200

’07 SUZUKI BANDIT 1200 [写真タップで拡大]

SUZUKI BANDIT 1200S

’07 SUZUKI BANDIT 1200S
スズキ独自の油冷ネイキッドとして定評を得たGSF1200は、’00年から全面的な刷新を図ったバンディット1200/Sに進化。’07年にはファイナルエディションが発売された。 [写真タップで拡大]

SUZUKI GSF1200

’95 SUZUKI GSF1200
ゼファー1100やCB1000SFへの対抗馬として生まれたGSF1200は、スチールダブルクレードルフレームに油冷GSX-R1100用エンジンを搭載。カムシャフト/ピストン/吸排気系などは新規設計。 [写真タップで拡大]

メンテナンスコスト

1 エンジン腰上オーバーホール:30万円~
2 エンジンフルオーバーホール:50万円~
3 キャブレターオーバーホール:5万円~
4 正立フォークオーバーホール:2万5000円~
5 倒立フォークオーバーホール :3万5000円~
※価格は税抜き

上記の価格はいずれもガレージdbのメニューで部品代込み。ただしエンジンオーバーホールはあくまでも目安で、たとえば腰上の場合、ピストン交換やボーリングの必要がなければもっと安く抑えられることもあるそうだ。フロントフォークは、インナーチューブの向きが任意で変更できる正立式の方が、倒立式より寿命が長い傾向。


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マシン・オブ・ザ・イヤー2021
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