今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家より奥義を授かる本連載、今回はホンダ第2世代の並列4気筒モデルとして大ヒットした「CB-F」シリーズを取り上げる。まずはその歴史から。
3種類の排気量を設定してライバルのZやGSに対抗
’78年9月から欧米、’79年6月から日本での販売が始まった「CB-F」シリーズは、ホンダにとって第2世代の並列4気筒車である。当時のライバル勢の動向を振り返ると、カワサキZやスズキGSも’80年から第2世代に移行したのだが、第1世代からの飛躍という面ではCB-Fがダントツだった。
というのも、第1世代のCBフォアシリーズは昔ながらのオーソドックスなスタイルで、エンジンの動弁系はSOHC2バルブ、キャブレターはピストンバルブ式、ホイールはスポークだったのである。一方、”インテグレーテッドストリームライン”と命名された流麗なボディに身を包んだCB-Fは、DOHC4バルブヘッド/負圧式キャブレター/コムスターホイールなど、耐久レーサー・RCBで培った革新的な技術を随所に採用したのだ。
当初900cc/750ccの2本立てでスタートしたCB-Fは、ライバルへの対抗策として、’81年には市販レーサーの1100R、’83年にはそのストリート仕様となる1100Fを追加。もっとも、当時の日本にはナナハン規制が存在したため、900と1100は逆輸入でしか入手できなかったし、’75年の免許制度改正後は、ナナハンも高嶺の花になりつつあったのだが…。
そんな状況でも、CB750Fは爆発的な人気を獲得。4年間で約3万9000台(日本仕様のみの数字)が販売された大ヒットモデルとなった。
当時の日本仕様の現存率が高いためだろうか、リッタークラスが大人気のカワサキZやスズキGS/GSXなどとは異なり、CB-Fシリーズの中古車市場の主力は、現在も依然としてナナハンである。今回の取材に協力してくれたジェイズに入庫するCB-Fも、ナナハンが多数派だという。
「タマ数の少ない1100はさておくとして、CB-Fの場合は、900と750の動力性能の差がそんなに大きくないですから。トルクで走るロングストロークの900より、回して楽しめるスクエアストロークの750のほうが好み、という人も多いですね。好調の維持という視点で見ても、もっとも環境が整っているのは750でしょう」
そう語る同店の宮繁順一代表ではあるが、だからと言って900と1100の入手と維持が極端に難しいわけではない。良好なコンディションの中古は少なくなってきたものの、リプロパーツが着実に増加し中古部品の入手が容易になった昨今では、CB-Fシリ―ズを楽しむためのハードルはひと昔前より下がっていると言えるだろう。
CB750Fの進化:機種コードは5種類だが、仕様は大別すると3種類
CB750Fシリーズには、’79FZ/’80FA/’81FB/’82FC/’83FDが存在。もっともFDの国内販売台数はわずかだったため、日本ではFCが最終型という認識が一般的のようだ。
FZとFAの基本構成がほぼ同じだったのに対して、FBはブラックコムスターホイールやエア加圧式フォークを採用(前19/後18インチ、φ35mmという数値は不変)。フロントブレーキキャリパーは片押し式1→2ピストンに改められた。なお’80年には、日本独自の限定車としてFBBとF2BBも販売されている。
FCの特徴は、前後18インチのブーメランコムスターホイールや、TRAC機能付きφ39mmフォーク、リザーバータンク付きリヤショックユニットなど。ただし輸出仕様の750FC/Dは、FBと同様の構成だった。
中古車相場は70~150万円:ライバル勢と比べれば入手は容易
上記の価格はCB-Fシリーズ全体で、750=70~130万円、900=80~150万円、1100=100~150万円が現在の中古車販売店における相場だ。ひと昔前と比べると、750はかなり高くなったものの、一方の900と1100はライバル勢と比較すると、意外に上昇していない…? という印象だ。ちなみにCB1100Rは、300~500万円近辺。
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