●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:ライトアーム
今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家より奥義を授かる。本記事ではヤマハが放った異端のモデルにして世界中で熱烈な支持を獲得した「VMAX」のメンテナンスチェックポイントについて、ライトアーム・矢田氏に解説してもらう。
VMAXとは?:異端のモデルでありながら世界中で熱烈な支持を獲得VMAXの歴史/その進化:フロントまわりの構成が異なる前期型と後期型中古車相場は30〜90万円:100万円オーバーの個体はごくわずかウィ[…]
一般的な消耗部品の交換で本来の資質が取り戻せる
VMAXの新規ユーザーを対象として、ライトアームでは67項目の点検とキャブレターの調整&同調、車体各部の締め付けトルク確認を行う「コンディションレベルチェックパック」というメニューを設定している。そしてこの点検作業の次は、車両のコンディションに応じてさまざまな整備を行うのだが、定番と言うべきオイル/フルードの全交換やフロントフォークのオーバーホール、水まわりの見直しなどに加えて、同店では電装系とラバーパーツを刷新することが多いそうだ。
「弱点というレベルではありませんが、バッテリーの容量不足やイグニッションコイルの割れ、水が溜まりやすいプラグホール、’90年代半ばから対策品に変更されたレギュレーターなど、電装系にはいろいろと改善したいところがあります。ラバーパーツに関しては、各部のシールの劣化に加えて、ストッパーが存在しないバンドの締め過ぎで、Vブーストのジョイント部に亀裂が入っている個体が多いですね」
整備に関してちょっと意外な気がしたのは、同店ではエンジンをオーバーホールする機会がほとんどないということ。「どうしてもという場合は引き受けますが、ネットオークションにはヒトケタ万円台のVMAXの中古エンジンがたくさん出品されているんです。もちろん素性が不明の中古を使う場合は、各部の点検が必要になりますが、40〜50万円をかけてオーバーホールするより、載せ換えを選択したほうが、費用は確実に安く抑えられるでしょう」
キャブレーター:並列4気筒用と比べると、整備の難易度はやや高め
ジョイントラバー:バンドの締め過ぎでラバーが破損しやすい
トランスミッション:乱暴な操作をすると2速のドッグが磨耗
スタータークラッチ:電圧の低下が破損の原因になる
クラッチレリーズ:定期的なフルード交換でレリーズの劣化を防止
ファイナルギヤ:耐久性は抜群だが、使い方次第で問題が発生
プラグキャップ:対策品に交換すれば水分の侵入を防げる
サーモスイッチ:電動ファンの作動は純正の温度設定でOK
ウォーターパイプ:漏れが生じる前に一度は全交換したい
フレーム:独自の補強ユニットでヨレを解消
フロントフォーク:’80年代に流行したエア加圧式フォーク
ステアリングステム:勘合長の増大でネジレを最小限に
フロントブレーキ:フロントの定番はMOSキャリパー
タイヤ:前後セットで選べるのは2種類の純正のみ
電装部品:長い目で見れば必ず劣化する電装系
バッテリー:通常電圧がやや高いMF式を推奨
エンジン/ファイナルギヤオイル:上質なオイルでライフが伸びる
パーツ流通:現在でもほとんどの補修部品を入手することが可能
外装の大半やVブーストコントローラー、前期型用フォークの一部などが欠品になっているものの、初代VMAXの消耗部品は現在でもほとんどが入手可能。しかもネットオークションには膨大な数の中古パーツが出品されているので、維持で困ることはなさそうだ。
「ただ、現役時代を知っていると最近の純正部品の価格上昇には驚きますね。欠品の外装やVブーストコントローラーは現状では中古で何とかなっています」(矢田氏)
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