佐藤寿宏のレース通信

2年振りの鈴鹿2&4レースで物議を醸したユッキーのタンデム走行【全日本ロードレース】

2021年4月24日(土)~25日(日)に鈴鹿サーキットで開催された『鈴鹿2&4レース』。決勝日に緊急事態宣言が発出された都府県もあるなか、新型コロナウイルス感染症対策をしながらレースが行われた。ヤマハファクトリーの中須賀克行が敵なしの強さを見せつけ、開幕戦から快進撃を続けている。


●文/写真:佐藤寿宏

JSB1000クラスと4輪のスーパーフォーミュラが併催

鈴鹿2&4レースの日曜日に、ちょうど4都府県に緊急事態宣言が発令されましたが、新型コロナウイルス感染症対策のもと、予定通り開催されました。昨年、鈴鹿2&4レースは、コロナ禍の影響を受け中止となったため2年振り。4輪のスーパーフォーミュラ、スーパーフォーミュラ・ライツとの併催で全日本ロードレース選手権はシリーズ第2戦としてJSB1000クラスのみが行われました。

まさに敵無しの強さを見せるYAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行。連勝記録をどこまで伸ばすか!?

大方の予想通りYAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行がセッションをリード。2レースともスタートで飛び出した清成龍一を終盤にかわしてトップに立つとスパート! そのままトップでチェッカーという展開でした。2戦連続ダブルウインで開幕4連勝を飾り、10回目のタイトル獲得に向けて快進撃を見せています。

ル・マン24時間が延期されたため急きょスポット参戦したYOSHIMURA SERT MOTULの渡辺一樹だったが、初日の転倒で左手首を骨折してしまった。

その中須賀を手こずらせる存在になりそうだったヨシムラの渡辺一樹は、初日の走行でマシントラブルのために1コーナーで派手に転倒。左手首を骨折してしまい残念ながら欠場を余儀なくされました。本人は、予選で乗ってみて(出るか出ないか)決めると言っていましたが、残念ながらドクターストップがかかってしまいました。

2レースともトップ2の面子は一緒でしたが、レース1では“ユッキー”こと加賀山就臣が、レース2では、亀井雄大が3位に入り表彰台に上がりました。

レース1のセーフティーカー解除後、その経験を活かしてトップの2台に食らいついて行ったユッキーでしたが、今シーズン抱えている問題もあり徐々に遅れると、追い上げて来た岩田悟と一騎打ちの3位争いとなります。

必ず仕掛けて来ると読んでいたユッキー。そしてJSB1000初表彰台のチャンスとなる岩田。レース1だけが鈴鹿8耐へのトライアウトも兼ねており、ここで転倒すれば、それも叶わないことになってしまいます。それでも岩田は、勝負することを選んでいました。

最終ラップのバックストレートでピタリとユッキーのテールをマークした岩田は、130Rで勝負を仕掛けます。ユッキーは、抜かれてもクロスラインを取るため線引きをしていました。そのユッキーもうなるほどのレイトブレーキングで岩田は前に出て行きますが、そこでHonda CBR1000RR-Rのフロントは限界を超えてしまいスポンジバリアまですべっていってしまい無念のリタイアとなってしまいます。

全日本に戻り自らのチームを立ち上げて10年。日本のレース界を盛り上げてきてくれたユッキーには、まだまだ活躍してもらいたいものだ。

一方、3位でチェッカーを受け、クールダウンラップを周ってきたユッキーは、130Rでマシンを止め、岩田を呼ぶとタンデムしてお客さんに手を振りながらピットに戻ってきました。この行為は、車両保管が解除されるまで、他のライダーがマシンを触れてはいけないというレギュレーション的にはNGでしたが、多くの人が賛同するものでした。「最後までいいレースをした岩田をコースサイドに止めておくのは、どうなんだと思ったし、応援してくれたファンの皆さんに一緒に手を振ろうと思った。レースはお客さんに見てもらってこそってところがあるのだから」とユッキー。今回は、厳重注意となりましたが、ペナルティがなかったことが、この行動が支持されたということを表しているでしょう。この機会に、MotoGPと同じく赤旗、チェッカー後は、除くということに変更してくれればいいなと思います。

ユッキーは、昨年の第4戦ツインリンクもてぎ以来の表彰台となり、自身の持つJSB1000最年長表彰台記録を更新しました。一方、岩田の所属するTeam ATJは、鈴鹿8耐トライアウトファイナルである、鈴鹿サンデーロードレース第2戦(5月15日・16日)に参戦しなくては、ならなくなったと思われていましたが、後日発表されたリストには、Team ATJの名がありました。岩田は完走扱いとなっており、複数台出ていたチームもあったため、ギリギリ参戦権を獲得することになり、岩田もチームもホッと胸を撫で下ろしていました。

セーフティーカーのスピードが遅かったという意見が多かった。スリックタイヤの温度管理は、かなりシビアなものだけに改善してもらいたいところだ。

レース1では、セーフティーカーが5周に渡って入りました。14周のスプリントレースでは、かなり長かったと言えるでしょう。3周目にデグナーカーブ2個目立ち上がりで起きた多重クラッシュは計5台が転倒するアクシデントでしたが、一人は腓骨と仙骨を骨折する重傷でした。セーフティーカーよりも赤旗にすべきだったと言う意見もありましたし、内より、セーフティーカーのスピードが遅くタイヤが冷えてしまっていたことが問題でした。多くのライダーが蛇行してタイヤを暖めようとしていましたが、セーフティーカーが解除されるタイミングで最終コーナーで名越哲平が転倒し、その餌食となってしまいました。大きなケガがなかったのが不幸中の幸いでしたが、鈴鹿8耐で優勝経験のあるMuSASHI RT HARC-PRO. Hondaがトライアウトファイナルのために鈴鹿サンデーに参加しなくてはならなくなってしまいました。

チームの主軸となった亀井雄大がJSB1000初表彰台を獲得。ホームコースだけに、たくさんの人に祝福されていた。

開幕戦のレース2では、3番手を走りながらマシントラブルで表彰台を逃していた鈴レーの亀井は、悲願の表彰台を獲得しました。レース終盤は、前エースライダーだった日浦大治朗が亀井を追い上げていたのが、運命的でしたが、ゴール後は、しっかり亀井を大治朗が讃えていたのが、微笑ましい瞬間でもありました。「今シーズンは数回表彰台に上がりたい」と開幕前に語っていた亀井。部長に就任し、チームを引っ張って行く立場となって、チームのホームコースで結果を残しました。さらなる活躍に期待しましょう。


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