佐藤寿宏のレース通信

全日本開幕! それぞれ見応えあるレースが繰り広げられた


●文/写真:佐藤“ことぶき”寿宏

2021年の全日本ロードレース選手権開幕戦が無事終わりました。どのクラスも、見応えのあるレースが繰り広げられたと思います。中でもレース直前に雨が降ったST1000クラスは、劇的な展開となりました。

ピットスタートから激しい追い上げを見せた高橋裕紀

グリッドに着いた時点では、雨は降り続いていたため半分以上はレインタイヤをチョイス。しかし、雨雲レーダーを見ると、雨は止む方向でした。このためスリックタイヤを選んだライダーも少なくありませんでした。その中に、ゼッケン1をつける高橋裕紀もいましたが、決勝朝のウォームアップ走行終了間際にマシントラブルが発生し、エンジンを載せ換えることになってしまい、ペナルティとしてピットスタートを余儀なくされていました。ST1000クラスは、周回数が全日本の4クラスの中では最も短く14周しかありません。ウエット宣言が出たことで、さらに2周減算の12周で争われることに…。裕紀的には、上位入賞は絶望という状況でした。

ホームストレートからスタートするライバルをピットレーンから見ている#1 高橋裕紀。全車が通過してからコースインして行く。

レースがスタートするといきなり1コーナーでドッグファイトの谷本音虹郎がクラッシュ! 雨が降り続く中、スリックを選んだライダーは慎重に走っていました。レインを履いたライダーは、ここぞとばかりにペースアップ。中でもTONEカラーのBMW S1000RRをライディングする渥美心の速さはピカイチ! オープニングラップで2番手以下を大きく引き離してホームストレートに帰って来ます。これを、やはりレインを履く山口辰也が追う展開でしたが、雨は止み、太陽が出てくると路面は急激に乾いて行きます。

ここで後方から凄まじい追い上げを見せていたのが高橋でした。高橋はスリックをチョイスしながら、同じスリックを履く渡辺一馬、作本輝介のAstemo勢を次元の違う速さで抜き去り3番手に上がると、6周目には渥美をかわしてトップに浮上! そのまま独走で優勝を飾ってしまいました。ピットスタートから優勝という劇的な勝利は、聞いたことがない、と思っていたら、その日の夜に行われたMotoGP第2戦ドーハMoto3クラスでペドロ・アコスタもピットスタートから初優勝を飾るという、こちらも快挙を成し遂げています。同じ日にピットスタートから優勝というレースが2度も見られるなんてビックリな日。これは後世に語り継いでいかなくてはなりません。

裕紀にとっても、すごくうれしい優勝になったと言っていました。昨年の最終戦もケガから初めてのジャンプスタートでペナルティから追い上げ王座獲得。今回も初めてのピットスタートから劇的な優勝と年をまたいでやってくれました。

開幕戦を優勝で飾り、幸先よいスタートを切った高橋ですが、今シーズンはEWC世界耐久選手権にもフルエントリーしているため、現状では全戦に参戦できません。今回もレースの翌日にル・マンに向けて出発する予定でしたが、フランスがロックダウンしたためル・マン24時間が6月に延期されました。これにより5月に予定されていたドイツ・オーシャスレーベン8耐も延期されたため、第3戦SUGOには出場できることになりましたが、ル・マン24時間耐久が6月になったため第4戦筑波に出ることができなくなってしまいました。その後の、第5戦鈴鹿、最終戦オートポリスも現状では、EWCと重なっており、タイトル防衛は依然赤信号のままと言えるでしょう。ただコロナ禍のため、まだ予断を許さない状況であるため、流動的な部分もあると言えるでしょう。

中須賀を止めるライダーはいるのか!?

前週の公開テストで転倒し腰とお尻を強打していた中須賀克行。本調子ではなかったがライバルをねじ伏せた。

JSB1000クラスは下馬評通りヤマハファクトリーの中須賀克行が前評判通りダブルウインを飾りました。一番の対抗馬と目されていた清成龍一はレース1でトップを快走しますが2位、レース2はマシントラブルでリタイアでした。ヨシムラの渡辺一樹が事前テストなしながら、ダブルポールポジションに3位/2位とキレのある走りを披露してくれました。レース2でその中に割って入る走りを見せた鈴鹿レーシングの亀井雄大もトップ争いを盛り上げてくれました。そのままゴールすれば3位初表彰台でしたが、こちらも残念ながらマシントラブルでリタイアとなってしまいました。

ぶっつけ本番で臨んだヨシムラの#14渡辺一樹が快走を見せた。鈴鹿2&4でも期待できそうだ。鈴レーの#11亀井雄大もホームコースで表彰台に上がりたいところだ。

ST600クラスは“コヤマックス”こと小山知良が自身の開発したニューHonda CBR600RRをデビューウインに導き、埜口遥希、國峰啄磨が続いたことでHonda勢が表彰台を独占しました。成長著しい横山尚太もトップ争いに加わりましたが惜しくも4位。ヤマハ勢では最上位でした。

ST600クラスは、ニューCBR600RRが表彰台を独占! 開発ライダーも務めた#3コヤマックスが勝利!!

J-GP3クラスは、このクラスに久しぶりに復帰した尾野弘樹が4台のバトルを制して優勝。後ろで様子を伺っていた小室旭は、勝負するタイミングを逃し悔しい2位。15歳の小合真士が3位に入り初表彰台と健闘しました。

Moto3でポールポジションを獲得したこともある尾野弘樹(中央)が久々の軽量クラスで優勝を飾った。

それぞれ、このレースに挑むヒューマンドラマがあり、おもしろいレースだったと思います。ただ、トップの面子が変わらない、1000ccのカテゴリーが2つあって分かりにくい、といった意見もありました。開幕戦、JSB1000は17台と寂しい状況でした。一方、ST1000は、36台と倍以上いました。改造範囲の違い、タイヤワンメイクと言っても見た目は、あまり変わらず、初めて見る人には、理解しにくいでしょう。プライベーターとしては、ST1000の方が参加しやすいためエントリーが集中している状況です。このままでは、JSB1000へのエントリーが増える要素はなく、ST1000との混走、レギュレーションの歩み寄りが必要だと思います。鈴鹿8耐との兼ね合いなど、いろいろ事情があるところですが、レースをうまく盛り上げていけるように現場の意見を聞いて決めて行って欲しいものです。

さて、今週末は、第2戦鈴鹿2&4レースです。2輪は、JSB1000クラスのみですが、土曜日のレース1は、鈴鹿8耐へのトライアウトがかかっていることもあり、67台のエントリーを集めています。確かに台数は多いですが、2019年の同じレースは72台ですから、少し減っている状況です。

まだまだコロナ禍は続きそうですが、感染対策をして、レースを楽しんでもらえたらと思っています。今週末は、ぜひ鈴鹿へ!


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