レースを制しブランド強化。絶対王者のYZF-R6に挑む
北米を除き、’16年に生産終了したホンダCBR600RR。新型として復活を遂げた背景には、やはりライバルの存在が大きい。レースで強いヤマハYZF-R6と、公道でのスポーツ性も追求したカワサキ ニンジャZX-6Rだ。中でもアジア圏のレースで破竹の勢いを示すYZF-R6に対抗するのが主たる狙いと言えるだろう。
アジア選手権SS600で、YZF-R6は’18~’19シーズンに連覇を果たし、先代CBR600RRよりエントリー台数も多い。タイ/インドネシア/マレーシアなど、モトGP人気が高くレースブームが到来しているアジア圏で、YZF-Rブランドの価値は上昇するばかり。同じくレース指向の600RRが復活するのに十分すぎる理由である。
3車を比較すると、YZF-R6は高回転+ハイパワーの心臓で圧縮比も高く、足まわりも硬め。カリカリのレース指向だ。一方でストリート向けなのは、やはりZX-6R。レース規則の枠を飛び越えた636ccの排気量で、下から扱いやすくトルク感に余裕がある。サス設定やライディングポジションもマイルドだ。
先代CBR600RRは2車の中間的なキャラだったが、新型は大きくYZF-R6寄りに接近した印象。エンジンは高回転化を促進し、最高出力もR6を超えてきた。そして電脳の充実度ではRRが頭ひとつ抜きん出ている。しかし3車とも排ガス規制はユーロ4対応。次期規制に対応せず、現行型でラストになる可能性がある。これが最終決戦になるのか?
【最新電脳で差をつけたCBR600RR】車体寸法については、CBR600RRの軸間距離がショート化され、ZX-6Rと並んでコンパクトに。599cc同士で比べると、最高出力/最大トルクともRRが上回った。さらに電子制御では、サポート項目、調整範囲とも最後発のRRが逆転し、もっとも豊富に。価格でもRRが最高値となり、R6を4万円上回った。
ホンダCBR600RR:8年ぶりのマイナーチェンジで打倒R6
生産終了した’16年から4年ぶりに復活したCBR600RR。’13年型のモデルチェンジからは8年ぶりの刷新となる。「ストレスフリー”Total Control”」をテーマに、高回転化と空力性能を追求。兄貴分譲りのフル電脳も注入した。
【600ccスーパースポーツ唯一のTFTカラー液晶】新たにフルカラーTFT液晶メーターを採用。国産600SS唯一の装備で、表示モードや背景の変更も可能だ。電子制御のレベルもわかりやすく表示される。
【高回転の+αと電脳化で勝負】従来型は軽量コンパクトな車体による俊敏なハンドリングが持ち味。サーキットのほか、公道での乗りやすさも兼ね備えていた。エンジンは国内と海外仕様では別モノで、フルパワーはかなり過激。新型では電脳サポートでハードルを下げつつ、さらなる高回転パワーとエアロカウルによって、一層キレた走りが味わえるだろう。
ヤマハYZF-R6:レース最強の超硬派モデル
スパルタンな走りを信条に、’99初代以来進化を重ねるYZF-R6。600スーパースポーツの消滅が危ぶまれる中、先陣を切って’17で9年ぶりに改良し、喝采を浴びた。チタンバルブの心臓や世界初の電子制御スロットルに加え、旧R1譲りの脚も自慢だ。
【アナログ派垂涎の大径タコメーター】中央に大型アナログタコ+液晶のギヤ表示が鎮座。視認性は抜群だ。レッドゾーンは1万6500rpm以降で、3車中でもっとも高い。燃料警告灯のみなのがレーサー風。
【エッジィなSS感を堪能できる】超高回転型のピーキーなエンジンとソリッド感のある足まわりで、実にレーシー。1万2000rpmから本領を発揮し、レッドゾーンまで伸び上がる。タイムを上げるには、この領域をキープして旋回速度を落とさずに走る技術が必要だが、上手くクリアできた時の満足感は最高。R1譲りのブレーキによるコントロール性も秀逸だ。
カワサキ ニンジャZX-6R:独自路線の+37ccで”速安”
ZX-6Rは当初599ccのみだったが、’02からレース規則に縛られない636cc版も投入。サーキットから公道まで守備範囲の広いスーパースポーツとして知られる。’16で生産終了するも、’19で排ガス対応して復活。599cc版のレーサーも限定販売されている。
【ストリート使いに配慮】先代ニンジャ1000譲りのユニットが高級感あり。レッドゾーンは1万6000rpm以降だ。スーパースポーツながらバーグラフ式燃料計を見やすい位置に配置し、使い勝手が高い。
【レース規制脱却で余裕の速さ】排気量のチョイ足しで下から上までトルクの谷を感じさせないのがポイント。スムーズに伸び、パワーバンドも8000~1万5000rpmと幅広い。特に中間域の扱いやすさが抜群だ。ショーワ製SFF-BPフォークはスーパースポーツとしてはよく動き、奥でしっかり踏ん張る。エンジンとハンドリングのバランスが自然で、万人が攻めやすいキャラだ。
4気筒SS勢はユーロ5未対応。’22年までの継続生産で終焉か?
現行の直4ミドルスーパースポーツ勢は、前述の通り次期排ガス規制=ユーロ5に未対応だ。YZF-R6、ZX-6Rは、復活して以来色変更のみ。新CBR600RRもユーロ4対応だ。今後排ガス対応をしないかぎり、欧州では’20年末で、国内では’22年11月で生産終了となってしまう。ちなみに欧州では’20年から新型車に対しユーロ5の適用がスタートしており、新型CBR600RRは販売されない。
【ZX-6R:最新KRTカラーに一番乗り】’19年から日本仕様が設定されており、早くも’21年モデルが販売中。最新のKRTカラーとホワイトを設定。現行型の欧州仕様は終了だが、国内では次期規制まで生産が継続されるか。
【YZF-R6:欧州同様、国内も’20年モデルがラスト】国内には逆輸入車としてプレストコーポレーションが取り扱っていたR6。’20年で新色の青/黒/オレンジが登場し、現行型はこれでラストだ。なおプレストは’20年6月で事業を終了した。
●文:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
シャーシ:商売っ気が微塵もない、勝つための調整 ホンダ新型CBR600RRのシャーシは、劇的な変更がないように見えるが、必要にして十分な改良が施されている。メインフレームは、従来型を踏襲した中空アルミ[…]
やれることは盛りだくさん。ニュータイプに覚醒せよ! 潔いほど電脳サポートを持たなかった先代に対し、新型CBR600RRでは電子制御が一挙に充実。戦闘力の底上げとストレスフリーな操縦性を図る。 全体の[…]
レース用ECUでは1万6500rpmレッドに 材質と構造を見直した内部チューン 高回転域で本領発揮 代名詞のエキゾーストも各部見直しで排気効率アップ 〈写真1〉〈写真2〉〈写真3〉〈写真4〉〈写真5〉[…]
シートカウル以外の空力マネージメントを刷新 多くの構成部品をアップデートしたニューCBR600RR。外装に関しても大幅な飛躍を遂げている。戦闘力を向上するため、テールを除いてカウルを一新。織りなす面の[…]
不可能とは言いたくない。だからこの1台を、世に。 残念と、当然。未練と、諦念。 相反する思いがせめぎ合う。今度ばかりは抗えない環境問題のうねりの中で、バイクの馬力競争が静かな終焉を迎えようとしている[…]
最新の記事
- 2025MotoGPヘルメット勢力図は5社がトップを分け合う戦国時代へ突入! 日本の3メーカーに躍進の予感!?
- 【SCOOP!】スズキ「GSX-8」系にネオクラが存在か!? 丸目のGS&クーリーレプリカ復活希望!!
- 「初の100ps超え!! 」全面改革で進化した第二世代のZ:カワサキZ1000J【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 3色ラインナップ化! ホンダ「CT125ハンターカブ」歴代カラー大図鑑【2022年モデル】
- 【受注限定】SHOEI「グラムスター」に新色モスグリーン! 5月発売で全5色展開に
- 1
- 2