シャーシ:商売っ気が微塵もない、勝つための調整
ホンダ新型CBR600RRのシャーシは、劇的な変更がないように見えるが、必要にして十分な改良が施されている。メインフレームは、従来型を踏襲した中空アルミダイキャスト製ツインチューブ。溶接部分や構成部品を減らした4ピース構造で、軽量かつ重量バランスに優れる。変更しなくても”戦える”との判断なのだろう。
一方、スイングアームは別物に進化した。外観から見分けはつかないが、剛性バランスや内部構造を最適化し、軽量化も促進。デザインを変更すれば、アピールポイントとなろうものを…。商売っ気より実質的な性能を選んだ改良に、ホンダの本気が感じられる。
【メインフレームは踏襲】(左)肉薄な中空アルミダイキャスト製メインフレームを継承。中央を貫通した大型のステアリングヘッドも健在だ。(右)専用品のHESD=電子制御式ステアリングダンパーは従来から継続。車速を検知し、減衰特性を自動可変する。 [写真タップで拡大]
【スイングアームは板厚変更と内部構造を最適】スイングアームは、右側がアルミプレス、左側がアルミ押し出し材。剛性バランスを見直し、各部の板厚を変更した。さらに内部構造の最適化を図り、150gの軽量化を達成。 [写真タップで拡大]
足まわりはブレーキの進化がトピック。最新のスーパースポーツ専用ABSを採用し、従来比で2.5kgの軽量化を達成した。IMUの情報も活かし、車体姿勢に応じてブレーキを緻密に制御。ハードブレーキングや旋回中の減速もサポートするため、ライダーは安心してトータルコントロールの”操る喜び”を味わえる。サスペンションに関しては、フロントはフォーク長を伸ばし、突き出し量を増やすことで車高アップに対応。地味ながら本気で走りたい人を見据えた良変更だ。
ディメンションについては、キャスター角が若干起き、軸間距離は5mm短縮。リヤアームはエンドピース接合部をずらしたことでロング化と同じ効果を狙う。
【BPFは全長が伸び、突き出しが増加】ショーワ製のφ41mmビッグピストンフロントフォーク(BPF)を踏襲するが、新型では全長を伸ばし、突き出し量を増やすことで車高アップが可能に。リヤアームと同様、セッティング幅が拡大しているのがミソだ。BPFはプリロード&伸/圧減衰力が可変のフル調整式で、ストローク初期の動きが穏やかなのが特徴。ブレーキはトキコ製の対向4ポット+φ310mmディスクを踏襲している。 [写真タップで拡大]
【ユニットプロリンクを踏襲し、タイヤを最新銘柄に】ユニットプロリンク式リヤサスペンションを新型も継続。サスを車体から独立させた構造のため、軽量化に有利で外乱も受けにくい。タイヤは最新のダンロップ製ロードスポーツ2だ。 [写真タップで拡大]
一気に緻密&軽量化を果たしたABSシステム
’09年型から採用した電子制御式コンバインドABSに代わり、最新のスーパースポーツ専用ABSを導入。CBR1000RR(SC77)と同様のシステムで、従来より2500g軽量だ。ニッシン製のABS用ECUが、前後の車輪速センサーとIMUによる車体姿勢の情報を基にブレーキ圧を制御。急制動時におけるリヤリフトを抑えるほか、旋回中のブレーキングでも切れ込みや車体の起き上がりを緩和する。
ユーティリティ:実用装備は最低限
●文:沼尾宏明 ●写真:山内潤也
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