オフロード専門誌『ゴー・ライド』連載中の「令和の世に放つ 愛と青春のオフロードマシン」より、バイクが熱かった時代にラインナップされた、懐かしのオフロードマシンを、”迷車ソムリエ”ことムッシュ濱矢が振り返る。今回は51cc以上90cc以下のちっちゃいものクラブ特集というメニュー。思い出深い人も多いのではなかろうか…。
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小さいけれどビンビンに元気だった黄色ナンバー排気量の思い出
- ホンダ CRM80
- ヤマハ TDR80
- ホンダ XLR80R
- カワサキ KSR-Ⅱ
- ホンダ EZ-9
車体が同じサイズでも、原付一種よりも交通法規的な使い勝手がよく、4輪保険の特約が使えるなど、原付二種クラスの優位性は多くの人が知るところだ。そういえば80年代中頃にホンダからDJ-1Lという、まさにその恩恵を狙った56ccというボーダーラインを気持ち超えただけの機種が発売されたこともあったっけ。見た目は普通のDJ-1だった。
50ccに乗って「これでもうちょっとパワーがあったらなぁ」と思うところに用意されていたのが50ccと同じサイズで90cc以下の、桃色じゃなく黄色ナンバーの原付二種バイクだった。多くの場合、基本的に50ccとまったく同じ車体とエンジンで、排気量だけ増量したもの。
これが125ccになると50ccより車体が大きくなり、オフロード車だったらフルサイズホイールを履いていたりなんかする。それはそれで面白いのだけれど、小さいボディに小径ホイールでちょこまかと動ける美点はスポイルされてしまう。同じ原付二種カテゴリーでも魅力が少し違う。
何といっても、本格派ではないオモチャ感がいいんだな、これが。アウトドア用品店に行くとワクワクして、使うかどうかもわからないメタルマッチなどを思わず買ってしまうのと似ていて、つい欲しくなってしまうのである。小さくてカワイイ。パワー的も50ccと比べ余裕があるから、さらに使える走りになっている。
そんな黄色ナンバーが最近はめっきり少なくなった。国内でそこのマーケットが小さくなったという事実はあるだろうが、同時に遊び心も小さくなったようで寂しい…。
ホンダ CRM80:キビキビ走れて、いざとなったら筋肉だ!
新しいルートを見つけたら、後先考えずとりあえず突っ込んでみる、という人間的にはダメなタイプの人向けの「CRM80」である。これならたとえ蜘蛛の巣がまとわりつくシングルトラックの倒木祭りでも、にっちもさっちもどうにもブルドッグになったとしても、足着きがよく、元気な2ストパワーで進めて、いざとなったら軽く小さい車体をエイヤっと持ち上げて走破できる素晴らしさ。据え膳食わぬは男の恥派組合(1名)の代表としては最強マシンだと思う。「フルサイズじゃなきゃ」「サスストロークが」「最低地上高が」なんていうのは坊やだ。最近のオフ車に足りない面白い養分が詰まっている。
ヤマハ TDR80:昔はよかった…、なんて言いたくないけれど
玄関を開けて「タロイモ」と言ったら、「おかえり」と家族は言うだろう。今度やってみるといい。「TDR80」とはまったく関係ない話だが…。KS-IIが先にあって、KSR-IIが後から出て、他にYSR80、NSR80などが存在した。隣りの部屋に行ったけど、何の目的で来たのか思い出せないまだ若かった頃にあった、小径ホイールのちびっ子たちは、今見てもワクワクさせる。RZ系から発展した水冷2ストエンジンに12インチ車輪でオフ車という、よりモタード車的な。パワーが近く、似た大きさの現行グロムより約10kg軽いのがミソ。秀逸なデザインで、原付二種なのにタンデム不可という潔さ。
ホンダ XLR80R:オフロードにハマる&ハメられるのに最適だ
オフロード入門車としては最適な1台「XLR80」。実際、これで筆おろしした人も多いだろう。「大丈夫、大丈夫」という無責任な言葉にのせられて、オフロードなんてほとんど走ったことがないのに草エンデューロレースに出てしまい、マディの激坂の下りや上りの脇で、口からエクトプラズムを出しているライダーの横にXLR80Rがあったりした。何周してもそこにいて、キックレバーを蹴り込む気力も果てて、そのままほっといたら森の妖精になるんじゃないか、という場面が多々あった。オフ好きの「大丈夫、行けるよ」は、だいたいが裏付けのないものである。肝に銘じておくように。
カワサキ KSR-II:楽しい思い出をくれた2ストミニ・スーパーバイカーズ
「KSR-II」は楽しかった。地面に近い視点でシャキシャキ走る面白さ。2ストエンジンは50ccのKSR-Iより断然パワフル。攻め込んでいくとリヤがちょいと不安定になってくるスリリングさもいとおかし。実際、人気が出て売れた。後継車になる4ストKSR110が、クラッチレバー操作なしの自動遠心クラッチで登場した時は、「フィーリングカップル5対5の5番か!」とツッコミたくなるくらいだった。夜中まで遊んで明け方を迎え、「じゃぁ」と別れを言って走り去った友人が、駐車場に張られたチェーンに気が付かずに突っ込んで、見事に飛んでいったのもKSRだったな。いつも身近にあった。
ホンダ EZ-9:我は問う、何のために生まれてきたのか
この頃のホンダは突き抜けていた。これ以外にも、ガソリンスタンドで「それ街で乗っていいんですか?」と何度も言われたZOOKもあった。「EZ-9」は不整地をスクーター感覚で走る新しい乗り物として登場。でも2スト90ccエンジンのパワーはそれほどでもなく、サスペンションストロークもそれほどでもなく物足りず。さらになんと、「きれいな姿だろ。ウソみたいだろ。公道乗れないんだぜ、これで」(タッチ風に)。さらにこのEZ-9が久保田利伸としたら大久保利通のような(“利”しか合っとらんやないかい)、フロントにスキー、リヤにトラックベルトを装着したEZ SNOWもあった。
●文:濱矢文夫(※カタログスペック、価格はすべて当時のものです) ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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