「オフロードマシン!!GoRIDE(ゴー・ライド)」の人気コーナー『令和の世に放つ 愛と青春のオフロードマシン』を今回はお届けしよう。バイクが熱かった時代にラインナップされて、懐かしのオフ車を振り返っていく、ちょっと箸休め的コーナーだ。しかし、読者の思い出補正がバッチリはまり、楽しみにしてくれているかたも多いという。今回、WEBヤングマシンで初登場だ。みなさんの青春時代に振り返って楽しんでいただこう。
文:濱矢文夫
Vol.1:甘酸っぱい思い出。わが青春の原チャリ編
これまで数多のオフロードマシンが登場して消えていった。その中には誰もが知っている有名モデルだけでなく、人知れず消えた日影のモデルもあった。売れないこと=悪い、ではない。前に進むことができればすべていいバイク。ここは、そんな精神でメジャー、マイナーさまざまなオフ車を掘り起こして並べ、うまい棒のような軽いコメントで解説する、外角高めに外れたボール球のような企画である。反響がなければ次号は消えているだろう(たぶん)。でもバイクと一緒でそれが悪い企画にはならない、といいわけしておこう。
Honda MT50 安定した不安定感がステキすぎる
今見ても斬新なスタイルが素晴らしい。同時期にあったのはCB50のエンジンを積んだXE50で、他メーカーも似たようなスタイル。その中にこれなんだから斜め上を行っている。フレームやエンジンはMB50ベースで、これだけ前衛的スタイルなのに、黒い食パンまんのようなXR風角ライト顔にした面白さ。ジャンプするとXバックボーンフレームにぶら下げたようなエンジンをごろんと地面に落っことすんじゃないかとお尻の菊座がもぞもぞしてしまう。卵を抱えたエビのようでもある。いい意味でも悪い意味でも時代を突き抜けたセンスが好きだ。
Honda MTX50R もう原付には見えない本格派
MT50と同じMB系空冷エンジンだが落っことさないですむ(落ちないけど)、セミダブルクレードルフレームになって、エンジンも最大トルクを上げ低中速寄りにした。フロント21インチホイールにプロリンクサスのMTX50を1982年に販売。けれどヤマハが同年に水冷のDT50を出したもんだから、HY戦争末期とはいえ「負けられねぇ」とやる気スイッチが入ったホンダ。翌年に水冷化したMTX50Rを発売したのである。空冷MTX50を買った人は涙目。サスストロークは前200mm、後170mmでデザインも含め立派なオフ車。ただ、やや重かった。
Kawasaki AE50 少し野暮ったいけれど当時クラス最強のメイド
“キリリッっとひきしまった精悍なスタイル”とカタログには書いてあったが、今見ると、バイザーがメイドの頭に載っかっているやつにしか見えない。緑色のメイド(赤もあった)が「お帰りなさいませ、ご主人様」という姿を想像する───わけない。カタログでうたうほど精悍なスタイルだと思えないところが反省会場の議題。AR50のエンジンをベースに5速化とともにトルク特性を低中速域に変更しているけれど、最高出力は当時の原付オフ車最高で自主規制上限いっぱいの7.2PS というのが最速好きのカワサキらしさ。リヤサスは1本足のユニトラック。
Suzuki TS50ハスラー アラレちゃんが出てこないハスラー
80年代前半から中ごろにかけてのスズキは神がかっていた。RG250Γで世間をあっといわせ、レーサーレプリカブームの起爆剤になり、クラス最軽量のGSX-R(400)、RG400/500Γ、GSX-R750。オフ系ではロケットのようなRH250の発売。その勢いは水冷化したこのハスラー50にも。RG50Γ譲りのピストンリードバルブエンジンの最高出力、最大トルクはクラス最強。同じ原付水冷オフ車では最軽量。リヤにはフルフローターサス。フォークアウターも黄色でピカチュウも西武線もびっくり。おっさん世代のハスラーは4輪車じゃなく、こっち。
Yamaha DT50 原チャリオフの進化のビッグバンや〜
ロードスポーツでヤマハRZ50が登場したからMBX50、RG50Γが出たのと同じで、トレールバイクで、このDT50が登場したから、MTX50R、水冷ハスラー50が誕生したといっても過言ではない。このRZ50譲りのYEIS付ピストンリードバルブエンジンは低中回転域からのツキがよくて乗りやすかった。リヤはモノクロスサス。それながらパワフル。♪ かわいいふりしてあの子わりとやるもんだねと♬ なんて歌が流行っていたころの、実際にかわいい顔した実力派。少年たちは“餃子か!”とツッコむくらいにDT50に乗って心に羽根を持った。
※カタログスペック、価格はすべて発売当時のものです。
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