’18年秋のインターモトでデビューしたインディアンFTR1200/Sは、全米フラットトラック選手権で圧倒的な強さを見せたFTR750のスタイリングを踏襲した公道市販モデル。その後の’19年秋のミラノショーでバリエーションモデルとしてオフロード色を強め登場したのが、今回試乗した’20年モデルの「FTR1200ラリー」だ。
高いスポーツ性能で可能性は無限大と再認識
実車を目の当たりにすると、ダートトラックレーサーの血統をより強く感じる仕上がりになっていて、心ときめく。φ43mm倒立フォークやラジアルマウントキャリパーを備えるスポーティな足まわりをそのままに、ホイールをアルミスポーク仕様とし、F19/R18インチのリムには、ピレリ製のブロックパターンタイヤ「スコーピオン・ラリーSTR」を装着。荒れた路面でも抑えが効くようハンドルは50mm高いプロテーパーバーとなり、ヘッドライトにはコンパクトなバイザーが追加装備された。シートはレトロなムードのブラウン表皮だ。
ダート志向が強くなったものの、オンロードモデルであることに変わりはなく、転がりの軽いタイヤの影響でハンドリングはヒラヒラと軽快感が増し、大径ホイールならではのニュートラルなステアリングフィールに磨きがかかっている。肘を張って乗るライディングポジションも相まって操作性がよりイージーになり、自在にコントロールできるのもいい。前輪19インチならではの大らかさがあり、スロットルを開けて豪快に曲がるのが楽しいことも付け加えておく。
1200ccの大排気量車とは思えぬフレンドリーさと俊敏性で、まさにストリートトラッカーと呼ぶにふさわしい。230kgの車体重量は同クラス国産ネイキッドと比較しても軽く、ダウンドラフト吸気で燃料タンクをシート下に配置するなどマスの集中もしっかりされていることを操作していても実感できる。
そう感じるには、レスポンス鋭いエンジンもなくてはならない。水冷DOHC4バルブVツインエンジンは123PSを発揮し、最大トルクは120Nmにも達する。6速での100km/h巡航は3600rpmでこなし、そこから上もまだまだパワーはみなぎり、9000rpm(メーター表示)でレブリミッターが効くまで粘り強く力を絞り出すから、心臓部はかなりタフで強靱だ。
60度Vツインの爆発間隔は300-420度で、鼓動を味わいつつ流すのではなく、90度Lツインのドゥカティのようにアクセルをアグレシッブに開けたくなり、気がつけば速度はグイグイ上がっていく。高速道路では小さいながらもウインドスクリーンが防風効果を発揮し、セット後も2km刻みで速度調整できるクルーズコントロールが秀逸で使わずにはいられない。シンプルな装いとしたラリーだが、これを残してくれたのはたいへんありがたい。
ドンッと出ていく全域でパンチのある元気ハツラツとしたエンジンと、それにマッチするしっかりとした足まわり、そして剛性感としなりが巧みに共存するトラスフレームの好バランスは、ラリーでも健在。カーボンパーツを多用したアッパーモデルも発表されたが、今回の試乗ではFTRシリーズの可能性はまだまだ無限大に拡がっていることを予感させた。たとえばカフェレーサースタイルや、この運動性能ならフルカウルのロードスポーツもあっていいだろうと、あれこれ妄想せずにはいられない。つまりカスタムもジャンルレスに楽しめそうということだ。
フラットトラッカー魂宿る走りを意識した装備
●文:青木タカオ ●撮影:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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