ウエルカムプラザ青山を拠点にした取り組み

創業者・本田宗一郎氏との一問一答【ホンダ高山正之のバイク一筋46年:第6回】

ホンダ広報部の高山正之氏が、この7月に65歳の誕生日を迎え、勇退する。二輪誌編集者から”ホンダ二輪の生き字引”と頼りにされる高山氏は、46年に渡る在社期間を通していかに顧客やメディアと向き合ってきたのか。これを高山氏の直筆で紐解いてゆく。そして、いち社員である高山氏の取り組みから見えてきたのは、ホンダというメーカーの姿でもあった。連載第6回は、ウエルカムプラザ青山を訪れる創業者・本田宗一郎氏とのやりとりや、トークショーイベント「バイクフォーラム」について振り返る。

ウエルカムプラザ青山は、単なるショールームではなく、情報発信基地として双方向でのコミュニケーションを実践する場という位置づけです。1986年1月に始まったトークショー「バイクフォーラム」は、その目玉のひとつ。当初は冒険家の風間深志氏を司会者に、風間氏の友人をゲストにお招きして、毎月1回の開催です。私は、第7回から関わることになりました。私の使命は、企画から運営までを社内で行い費用を圧縮して、継続的にできる体制を作ることでした。ゲストとの交渉からシナリオの作成、マルチ画面に映し出すスライドの作成や、PR誌への情報掲載などを担当しました。

バイクフォーラム本番では、音響や照明の調整、そして話に合わせてスライドや映像を流すことも担当です。お客様が多すぎれば「後ろから見えにくかった」と苦情をいただきますし、観客が少ないと上司から「PR方法が悪い」と言われました。そんなイベントを継続していますと、さまざまな縁が生まれます。風間氏の交友関係から舞台演出家の蜷川幸雄氏をお招きしたり、私の生命保険の担当をしてくれた保険外交員の方から格闘家の前田日明氏を紹介いただくなど、著名な方々と打ち合わせをする機会を得ることができました。

月1回のバイクフォーラムに加え、チャンピオンライダーやドライバーのスペシャルトークショーなども手がけていましたので、頭の中ではシナリオがいつまでも完了しない状態でした。私が担当だった時代、ウエルカムプラザ青山で85回のバイクフォーラムを担当し、継続の大切さを知りました。継続できた要因はほとんど内製で行っていたためで、費用も驚くほど低予算でした。上司の口癖「高山君、お金はないけれど、アイデアは無尽蔵だからね」 この名言には抵抗できません。バイクフォーラムは2冊の書籍にもなり、二輪文化の一端を担うことができたと感じています。

1986年頃のバイクフォーラムの会場。’86年1月19日に根津甚八氏と宇崎竜童氏を招いた「アドベンチャー・バイク談義」が第1回。演出家の蜷川幸雄氏は’86年12月14日の「道が舞台だ」(第12回)に、格闘家の前田日明氏は’89年5月13日の「格闘技とオートバイ」(第40回)に登壇した。

バイクフォーラムとは別にチャンピオンフォーラムも高山氏は担当。写真は1987年全日本モトクロスチャンピオンの東福寺保雄選手のトークショーだ。この時の司会は、オフロード誌『GARRRR(ガルル)』編集長の打田稔氏(写真左端)が担当していた。

1988年2月に発行されたバイクフォーラムの書籍『風のように、少年のように』(風間深志著/CBS・ソニー出版)の表紙。’86年に出演したゲストの中から10名の談話が紹介されている。著者の風間氏は、’86年に実施されたバイクフォーラム全12回の司会者でもあった。

手弁当のバイクフォーラムは二輪文化の一端に

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