ウエルカムプラザで鈴鹿8耐生中継

強いホンダを見てもらう新たな試みを青山から発信【ホンダ高山正之のバイク一筋46年:第5回】

ホンダ広報部の高山正之氏が、この7月に65歳の誕生日を迎え、勇退する。二輪誌編集者から”ホンダ二輪の生き字引”と頼りにされる高山氏は、46年に渡る在社期間を通していかに顧客やメディアと向き合ってきたのか。これを高山氏の直筆で紐解いてゆく。そして、いち社員である高山氏の取り組みから見えてきたのは、ホンダというメーカーの姿でもあった。 連載第5回は、ウエルカムプラザ青山での鈴鹿8耐生中継、F1ブーム時代のイベント企画について振り返る。

ホンダが初のF1コンストラクターズチャンピオンを獲得した1986年から、F1を撤退した1992年までの7年間は、ウエルカムプラザでもF1のPRにあの手この手で応えていました。私に与えられた使命は、F1レース翌日の月曜日のお昼休み時間に、フジテレビの中継番組を15分にまとめて、マルチビジョンで放映することでした。フジテレビに録画テープを取りに行ったのでは、間に合いません。モータースポーツ部門が交渉してくれて、担当者が編集したものを放映しても良いことになりました。そこで、毎戦自宅のテレビで見ながら録画です。そのテープを会社にもっていき、編集機械で15分以内にまとめる作業が待っています。番組のテーマ曲であるT-SQUARE「TRUTH」は、カットせずにそのままです。

前夜に見たシーンを思い出しながら、あの追い抜きシーンは絶対入れよう…などとやっていますと、15分では収まりません。ウエルカムプラザに来場する近隣の会社員が見るのには、15分くらいがちょうど良い長さです。いつも、12時から12時15分までのNHKニュースが終わった後に放映するのが、タイミングとして最も良かったのです。NHKニュースが流れると、さあ大変。上司から「高山君。みんな待ってるよ。早くね」と催促が来ます。このシーンを入れないとお客様が納得しないんだろうなぁ…などと考えつつ、タイムリミット。ホンダレディ(現ホンダスマイル)がアナウンスします。「皆さま、お待たせいたしました。これより、昨日行われましたF1●●グランプリのダイジェストを放映いたします。時間は約15分です。最後までお楽しみください」私がそれに合わせて、ビデオデッキのスタートボタンを押します。TRUTHのテーマ曲が流れると、私も解放され、昼ご飯を食べられます。でも最後まで見ないと何が起きるか分かりませんから、見続けたまま昼ごはんを逃してしまうことも結構ありました。

また、イベントも大盛況です。中嶋悟選手がF2チャンピオンを獲得した年のトークショーは、100名くらいの来場者でしたが、’87年にF1ドライバーの中嶋悟選手として招いたトークショーは、ウエルカムプラザ始まって以来の濃密状態。これ以上は入れません。といった具合で危険すら感じるほどでした。この経験を踏まえて、翌年からは2階の大会議室を使い、1日2回のトークショーを企画しました。

入場できるのは、往復はがきで申し込みされ、当選した方のみです。一回あたり400名でした。会社の配送センターから「段ボールが10箱ほど届いているので取りに来てほしい」と電話があり、身に覚えがないのですが行ってみますと、それは往復はがきがぎっしり詰まった段ボール箱でした。すべて中嶋選手のトークショーに応募された方のはがきです。800名のところに、たしか6万枚届いたと記憶しています。何日もかけて、仕分けをしながら抽選です。当選者には発送をしなければなりません。このような準備を経て、無事にF1中嶋選手のトークショーは終了しました。 私も、1987年から1990年までは、毎年鈴鹿サーキットでF1GPを観戦しました。結構なお金を使いましたが、強いホンダを見ることが生きがいでもありました。

日本にF1ブームをもたらした中嶋悟選手の1988年シーズン後のウエルカムプラザ青山 F1フォーラムでの記念写真。中嶋選手は’88年、ロータス・ホンダで2年目のシーズンを戦い、日本GPで予選6位になるなどの活躍を見せた。中嶋選手の左側に写っているのが高山氏だ。

【高山正之(たかやま・まさゆき)】1974年本田技研工業入社、狭山工場勤務。’78年モーターレクリエーション推進本部に配属され、’83年には日本初のスタジアムトライアルを企画運営。’86年本田総合建物でウェルカムプラザ青山の企画担当となり、鈴鹿8耐衛星中継などを実施。’94年本田技研工業国内二輪営業部・広報で二輪メディアの対応に就き、’01年ホンダモーターサイクルジャパン広報を経て、’05年より再び本田技研工業広報部へ。トップメーカーで40年以上にわたり二輪畑で主にコミュニケーション関連業務に携わり、’20年7月4日に再雇用後の定年退職。【右】‘78~’80年に『ヤングマシン』に連載された中沖満氏の「ぼくのキラキラ星」(写真は単行本版)が高山氏の愛読書で、これが今回の連載を当WEBに寄稿していただくきっかけになった。


●文/写真:高山正之(本田技研工業) ●編集:市本行平(ヤングマシン) ●協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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