「プロスペックまつだ」が説明します

NSR250R『そこそこ』マニアックス①<前編>

こんにちは。まつだと申します。本業はヤングマシンの編集部員なのですが、NSR250R好きが高じて、「プロスペック」という専門誌を副業(?)で作っていたりするNSRマニアです。このプロスペック誌、作り手の興味の赴くままに作った結果、NSR乗り以外は理解不能な超マニアック本になってしまったので、ここでは『詳しくない人にも、ざっくりとNSRを理解していただく』をコンセプトに、NSRについて極力やさしく綴っていこうと思います。以降よろしゅうお願いいたします。

 

その①:NSRの「形式」を判別する方法<前編>

‘86年に発売され、‘99年に生産終了となったNSR250Rには、大別して5つのモデルが存在します。まずは前編として、初代MC16型から、3代目となる‘89年式のMC18型までを説明します。

MC16型(‘86〜87年式)

NSR250R・MC16型

NSR250Rの初代モデルとなるのがMC16型。搭載されるのは249ccの水冷2サイクル・90度V型2気筒で、このエンジンはNSRの最終型まで基本構成を踏襲している(ホントの基本だけで、中身は毎モデルごとにほぼ別物ですが)のですが、以降の年式に対し、車体構成の独自性が強いのが初期型の特徴。ぱっと見の識別点は以下のような部分です。

①ホイールが3本スポーク(以降は6本スポーク)
②フロントキャリパーが片押し2ポット(以降は対向4ポット)
③テールライトが四角形(以降は丸目2灯)
④Φ39mm径の正立フロントフォーク(以降はΦ41mm径)
⑤「目の字」断面のアルミツインチューブフレーム

機能面ではエンジンがシリーズ唯一のリジッドマウントだったり、それに伴いステップがラバーマウントされていたりしますが、カスタム車両やニコイチ・サンコイチも多いNSRで、MC16を見抜くには⑤のフレームを見るのが確実。断面が漢字の「目」の字になる四角いアルミフレームであれば、そのNSRはMC16です。

フレームは内部に仕切りを入れて剛性を高めた四角いアルミ素材で、スパッと両断すると断面が「目」の字になる形状。MC16だけの特徴だ。

ちなみにMC16型は約2万台が生産されましたが、現在の登録台数は3000台ほどとかなり希少。オーナーさんには申し訳ないですが、現在の人気度も歴代NSR中ではあまり高いとは言えません。旧車って初期型信仰が強いものですが、NSR・MC16型にそれが当てはまらないのは、次の‘88年式があまりにも伝説的な存在になり過ぎているから、かもしれません。

 

MC18型(‘88年式)

NSR250R・MC18型(’88年式)

言わずと知れた「最強伝説」のNSRです。登場からわずか1年でフレームもエンジンも足回りも、MC16と全く共通項がないほどに刷新され、NSRの評価を確定させたのがこの‘88年式のMC18型。その後に繋がるNSRの基本構成も‘88年式が完成させたといってよく、事実、これ以降の年式は車体まわりの部品にけっこう互換性があります。そんな“ハチハチ”の特徴は……

①ホイールが6本スポークに(リムも幅広化)
②フロントキャリパーを4ポット化
③フロントフォークをΦ41mm径に大径化
④テールライトを丸目2灯に
⑤角型ヘッドライトを小型化
⑥フレームの断面形状を五角形に

MC16からの共通点がほぼ皆無なのがご理解いただけたところで、ハチハチを見抜くための識別点ですが、これもフレームに着目。MC16の四角い「目の字断面」から角を落とし、変形の五角形とされたのがMC18フレームの特徴です。

‘88年式MC18のフレームアップ。上面の角を斜めに落としてフレーム断面を五角形化している。車体の専門家によると、断面を四角→五角へ変更することで、フレームにはしなやかさが生まれるのだとか。

さて、ハチハチが伝説的存在となった理由ですが、当時としては高荷重設定で、上手く走らせるにはテクニックが要求されたという敷居の高さもさることながら、リミッター解除があまりにも簡単だったことも挙げられるでしょう。カタログ上はいちおうメーカー自主規制値の45psとされていましたが、テールカウル内の配線を1本引っこ抜くだけで、高回転域で開度が規制されていた排気デバイス(NSRでは「RCバルブ」と呼ぶ)が全開となり、後輪の実測値ですら60ps弱を発揮! つまり、もともと60psのバイクを規制値に押し込めていた……というのがハチハチの実情だったと言えるでしょう。ちなみに速度リミッターはありません。

もう1点、‘88年式NSRにおける革新的な出来事が「PGMシステム」の採用です。これは点火時期やキャブレター、RCバルブ、オイルポンプなどをコンピューター制御するシステムのことで、これこそがNSRを最速たらしめた、キモといえるメカニズムです。NSRが速かったのは、それまで低速スカスカ、高速パイーンだった2サイクルエンジンをコンピューター制御し、扱いやすさとパワーを両立させたから。以降、NSRとともにPGMも進化していきますが、その起点となったのもハチハチというわけです。

ちなみに、‘88年式MC18は量産車世界初となるマグネシウムホイールを装備したSPを後に追加。NSRのキラーアイテムと言えるロスマンズカラーもこの‘88年式SPで初採用されたもので、麻雀で言うなら役満のような仕様とされていました。

ハチハチNSRをさらに孤高の存在たらしめたのがロスマンズカラーのSP。北斗の拳ならラオウ、ガンダムならシャア専用ザクのような、今も鉄板の人気を誇る1台です。

 

MC18型(‘89年式)

NSR250R・MC18型(‘89年式)

販売台数でも250ccクラスのナンバーワンに輝くなど、まさに無双の存在となった‘88年式MC18ですが、そのあまりに過激かつギリギリの仕様にライバルメーカーから物言いが付いたと聞きます。そこで、モデルチェンジされた‘89年式は「台形パワー」を謳い、過激さを抑え、トルクバンドを広く取って扱いやすさを狙ったエンジン特性に変更されました。

シャシーダイナモに載せて実測しても、‘89年式のパワーカーブは見事なまでに「台形」で、実際の性能はともかく、体感的にはドッカンパワーの‘88年式が速く感じられたことも事実。といっても、’89もリミッター解除(ハチハチよりは難しくなったものの、それでも簡単です)すれば話は違ってくるのですが、ノーマル状態での‘89年式のこの特性も“ハチハチ最強伝説”を生むフックのひとつになったと考えられます。

この‘89年式は型式名のMC18を踏襲することからも分かるように、基本的には‘88年式のマイナーチェンジモデルなので、変更点はさほど多くありませんが、見た目の識別点としては、

①フロントカウルのスラントノーズ化
②サイレンサーをアップマウントに
③リヤホイールのワイドリム化
④リヤキャリパーをフローティングマウント
⑤タンデムステップを格納式に変更
⑥スイングアームを五角断面化

といったあたりがポイントです。デザイン的に②は大きな‘89の特徴なのですが、社外チャンバーに交換されたら判別不要になってしまいますし、‘88年式のシート前方にある、サメのエラのような3本のダクトが‘89にはないのは割と使える識別点ですが、決定打はやはりフレーム。基本形態は‘88譲りながら、リヤキャリパーをフローティングマウント化した‘89は、右側スイングアームピボット上にトルクロッド取り付け用の穴が開いています。ここを見れば一発です。

‘88と‘89のフレームを見分けるには、右側スイングアームピボットに開けられたブレーキトルクロッドの取り付け穴に着目。五角断面化されたスイングアームも‘89の識別点ですが、それすら年式を超えて交換されがちなのがNSRの怖さ(?)。特にMC18系に‘90年式以降の通称「ガルアーム」を流用するのはけっこう定番。さりげなく、燃料タンクのウイングマークのデザインがモダン化されたのも‘89の特徴です。

機能面ではPGMシステムが「2」に進化してより高度化。ハチハチに隠れてやや日陰的な存在の‘89ですが、250ccクラスの販売台数は2年連続でナンバーワンを記録しています。さらに追加されたSPモデルでは、やはりNSRのキラーアイテム・乾式クラッチを初採用。「シャラシャラシャラ……」というクラッチプレートの共振音が走り屋のココロを揺さぶったのはこの‘89年式からです。ちなみにMC18型は‘88〜89を通じて4万5000台以上が生産され、現在も約1万台が登録されています。

前編はここまで。徐々に内容が「やさしい」とか「そこそこ」と離れてきている気がするのには気づかないフリをして、残りの2台は後編でご紹介します。

マツ

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「西部警察」と「北の国から」をこよなく愛する本誌編集部員。NSR専門誌・PROSPECのほか、フリーペーパーとして復活を果たしたビッグマシン零(ゼロ)の編集長も兼任する。
■1975年生まれ
■愛車:HONDA NSR250R(1992)/HARLEY-DAVIDSON XL883(2009)

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