![[バイク雑学] スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/attachmentfile-file-5858.webp)
●文:ライドハイ編集部(伊藤康司)
ワークス耐久レーサーのために開発した画期的なホイール
バイクのホイールといえば、ロードスポーツ車の多くが装備する、アルミニウムで一体成型された“キャストホイール”か、オフロード車/アメリカン/クラシックタイプが装備する“ワイヤースポークホイール”の2種類が主流だ。
そもそも車輪の歴史を簡単に振り返れば、一番最初は“木製”。次に木製車輪の外周にゴム板を貼ったモノが考案され、その後に現在のような空気入りタイヤが登場する。
そして木製のホイールは、耐久性とメンテナンス性に長けた金属のワイヤースポークホイールに変化。このワイヤースポーク時代が1900年代初頭から1970年代まで長く続き、1970年代中頃にアルミニウムを鋳造して作るキャストホイールが登場した。
この手の“最新パーツ”の多くは「レーシングマシンが装備→市販車にフィードバック」のパターンが多いが、ことキャストホイールに関しては、市販車の方が先に広まり(標準装備もカスタムも)、レーサーは依然としてワイヤースポークホイールを履いていた。その最たる理由は“重量”で、当時のキャストホイールはかなり重かったからだ。
そしてキャストホイールには、チューブレスタイヤを使える大きなメリットもある(スポークホイールはスポーク穴があるのでチューブが必要)が、当時はチューブレスのレーシングタイヤが存在しなかった、という面もある。
しかしながら、キャストホイールの普及とともにチューブレスタイヤも増え、レーシングマシンもキャストホイールを履くようになった…のだが、ここで独創性を発揮したのがホンダ。レーシングマシンで重要な“軽さ”に長け、高い剛性と強度を持ち、チューブレスタイヤも使える「コムスターホイール」を、挑戦を始めたばかりの欧州耐久レースのワークスマシンRCB1000用に開発したのだ。
【1976 HONDA RCB1000】ホンダがヨーロッパ2輪耐久ロードレース選手権に参戦するため、CB750FOURの4気筒エンジンをベースに開発したワークス耐久レーサー。このマシンのために、軽量なコムスターホイールが開発された
バイク用のチューブレスタイヤも、コムスターだから採用できた。
コムスターホイールは、車軸周りのハブとアルミ製の軽量なリムを“スポークプレート”で繋ぐ、革新的な構造を有した。
スポークホイールの“スポーク増し締め”といったメンテナンスも不要なうえに、チューブレスタイヤを履くことで、釘など異物が刺さった際も急激な空気漏れを起こさないため、安全性も増し、パンク修理も容易。そしてスポークともキャストとも異なるスタイルで独自性を主張できる。そこでホンダは、1977年発売のCB750FOUR-IIにコムスターを初採用し、その後は125クラスから輸出車のオーバー750まで、多くのロードスポーツ車に装備を広げていった。
ちなみに、コムスターとは“Composite(合成)”と“Star(星)”との合成語。ワイヤースポークホイールの軽さとキャストホイールの高い剛性など、それぞれのホイールのメリットを併せ持ち、星型をしているところから命名された。
【1977 HONDA GL500】コムスターホイールの大きなメリットのひとつが、チューブレスタイヤの装着が可能になったこと。写真のGL500(1977年12月発売)が、2輪車初のチューブレスタイヤ装着車だ。ただし市販車で最初にコムスターホイールを装備したのは、1977年4月発売のCB750FOUR-II(この時点では2輪車用チューブレスタイヤが存在しなかった)。
コムスターはデザインの自由度にも長けていた
市販車用のコムスターホイールは、登場当初はスポークプレートがスチール(鉄)製だったが、1979年のCB750F用を皮切りに、アルミ製スポークプレートの「オールアルミコムスターホイール」が登場。そしてスポークプレートのプレス加工や形状変更で、毎年のように新デザインのコムスターホイールが生まれていった……
【1979 HONDA CB750F:通称“表コムスター”】初期のコムスターはスポークプレートがスチール(鉄)製だったが、1979年発売のCB750Fや、スタイルを踏襲するHAWKⅢ(CB400N)が“総アルミ製のコムスター”を装備した。“表コムスター”は、あくまで以降のコムスターと区別するための通称。
【1981 HONDA CB750F:通称“裏コムスター”】従来のコムスターのスポークプレートを裏返したようなデザインから、こう呼ばれる(もちろん裏返したワケではない)。プレートはブラックやゴールドに塗装され、豪華な雰囲気を醸した。1980年頃のアメリカンタイプ(CB750カスタム)等から採用が始まった。
【1982 HONDA CB750F:ブーメラン型コムスター】1981年発売のCBX400Fや1982年発売のVT250Fが、ホンダ独自のフロントブレーキ・インボードベンチレーテッドディスクと組み合わせて装備。その後は通常のディスク車も多く採用した。
※本記事は2021年7月6日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ライドハイの最新記事
勝つための合理性と最新テクノロジーが辿り着いたパラレルツイン! レーシングマシンは勝つためを最優先に開発される。だから優位なテクノロジーなら躊躇せず採用する斬新で個性の集合体のように思われがち。 とこ[…]
BMWの牙城を崩そうとドイツの開発チームと熟成をはかる! ホンダはスーパースポーツで世界を制覇、その勢いはフラッグシップで呼ばれる豪華ツアラーモデルでもリーダーを目指し、水平対向4気筒のGLゴールドウ[…]
2ストGT時代から世界ではツーリングモデルで定評のブランド! 2ストロークエンジンのメーカーだったスズキも、排気ガス規制などに対応できる4ストローク化を急務としていた。 そして1976年、初の4ストロ[…]
「バケヨンカスタムご存じ?」’70年代のホンダ4発末弟はCB350Four! 1972年6月、ホンダはCB350フォアを発売した。 1969年に衝撃のデビューを果たした世界初の量産4気筒スーパースポー[…]
後輪を軸に旋回する基本通りに乗れる車体のしなやかさと従順かつ繊細なエンジン特性! 2ストロークエンジン・メーカーではなかったホンダが、’60年代に世界GP完全制覇の後に再挑戦した4ストNR500が思わ[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
いまや攻めにも安全にも効く! かつてはABS(アンチロックブレーキシステム)といえば「安全装備」、トラクションコントロールといえば「スポーツ装備」というイメージを持っただろう。もちろん概念的にはその通[…]
油圧ディスクブレーキだけど、“油(オイル)”じゃない いまや原付のスクーターからビッグバイクまで、ブレーキ(少なくともフロントブレーキ)はすべて油圧式ディスクブレーキを装備している。 厳密な構造はとも[…]
元々はブレーキ液の飛散を防ぐため フロントブレーキのマスターシリンダーのカップに巻いている、タオル地の“リストバンド”みたいなカバー。1980年代後半にレプリカモデルにフルードカップ別体式のマスターシ[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
いまや攻めにも安全にも効く! かつてはABS(アンチロックブレーキシステム)といえば「安全装備」、トラクションコントロールといえば「スポーツ装備」というイメージを持っただろう。もちろん概念的にはその通[…]
油圧ディスクブレーキだけど、“油(オイル)”じゃない いまや原付のスクーターからビッグバイクまで、ブレーキ(少なくともフロントブレーキ)はすべて油圧式ディスクブレーキを装備している。 厳密な構造はとも[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
ミリ波レーダーと各種電制の賜物! 本当に”使えるクルコン” ロングツーリングや高速道路の巡航に便利なクルーズコントロール機能。…と思いきや、従来型のクルコンだと前方のクルマに追いついたり他車に割り込ま[…]
3気筒と変わらない幅を実現した5気筒エンジンは単体重量60kg未満! MVアグスタはEICMAでいくつかの2026年モデルを発表したが、何の予告もなく新型5気筒エンジンを電撃発表した。その名も「クアド[…]
人気記事ランキング(全体)
色褪せないヘリテイジ、進化する「Z」の系譜 017年秋の東京モーターショーで世界初公開されて以来、Z900RSは常に我々ライダーの注目の的であり続けている。その最大の魅力は、往年の名車Z1/Z2への敬[…]
排気量拡大路線から4バルブヘッド開発へ 1980年代の後半はAMGにとって重要な分岐点だった気がします。もともと、彼らはメルセデスベンツが作ったエンジンをボアアップ、強固な足回りへと改造することに終始[…]
Q:雪道や凍結路は通れるの? チェーンやスタッドレスってある?? 一部の冒険好きバイク乗りと雪国の職業ライダー以外にはあまり知られていないが、バイク用のスノーチェーンやスタッドレスタイヤもある。 スタ[…]
オンロードメインで楽しむ扱いやすいツアラーモデル いい意味で、事前の想像とは大きく異なる乗り味だったのが、油冷単気筒エンジンを搭載した軽二輪アドベンチャーのVストローム250SX。このルックスから、個[…]
「着る換気扇」サーキュレーターメッシュ 今回紹介するのは、2025年9月の発売からわずか2ヶ月半で累計3万枚を突破したという「サーキュレーターシリーズ」だ。最大の特長は、裏地に採用された「サーキュレー[…]
最新の投稿記事(全体)
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
ライバル勢を圧倒する抜群のコーナリング性能 ’80年代初頭のヤングマシン紙面には何度もRZが登場しているが、デビュー当初のRZ250の実情を知る素材としてここで選択したのは、’80年11月号に掲載した[…]
寒暖差が大きくても着替えずに対応できる! ワークマンのヒーターウエア『WindCore(ウインドコア)』シリーズは、電熱ヒーターを内蔵する防寒アイテム。別売りのバッテリー(4900円)は必要だが、もの[…]
パンアメリカのオフロード性能をユーザーに体験してもらう 2021年夏に販売開始されたパンアメリカ。ストローク量の多い前後サスペンションのおかげで、ハーレーの中で唯一ダート走行が可能なアドベンチャーカテ[…]
勝つための合理性と最新テクノロジーが辿り着いたパラレルツイン! レーシングマシンは勝つためを最優先に開発される。だから優位なテクノロジーなら躊躇せず採用する斬新で個性の集合体のように思われがち。 とこ[…]
- 1
- 2


![HONDA RCB1000|[バイク雑学] スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_002_01-768x432.jpg)
![HONDA GL500|[バイク雑学] スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_002_02-768x432.jpg)
![HONDA CB750F|[バイク雑学] スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_002_03-768x432.jpg)
![HONDA CB750F|[バイク雑学] スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_002_04-768x432.jpg)
![HONDA CB750F|[バイク雑学] スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/ride-knowledge_002_05-768x432.jpg)








































