
バイクにまったく興味がなくても、ホンダのスーパーカブやモンキー/ゴリラの名前は知る者が多いだろう。本記事に登場する黄色ゴリラは、ノーマルフォルムで楽しむ方向性。ボアアップに合わせて、オーバーホールを終えたビッグキャブの取り付け実践と試運転からのセッティングを行った。
●文/写真:たぐちかつみ(モトメカニック編集部) ●外部リンク:シフトアップ
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむホンダのモンキー&ゴリラ
シフトアップ製88ccキットを組み込み、ノーマルキャブのままでセッティング変更せずに普通に走ることができた、6ボルト仕様の初期型黄色ゴリラ(Z50J-III Golilla 1978)。
排気量アップするとメインジェットを交換しないといけないイメージだが、ノーマルキャブのままでも、コンプレッションレシオとのバランス関係で、そのような結果となったのは勉強になった。
排気量アップしたことで、ノーマルの50cc仕様と比べて、圧倒的にトルクフルな走りになった。しかしながら、吸排気系がノーマルのままなので、最高速度的には大差がなく、さらなるスピードアップを望むことができなかった。やっぱりビッグキャブ化と抜けが良いマフラーの組み合わせは必須だと思う。
そこで、オーバーホール済みのTL125S用純正PWキャブを装着することにした。マニホールドには、筆者のガレージ在庫で眠っていた、旧SPT製砂型部品(懐かしいねぇ〜♪)をチョイス。しかし、フロートチャンバードレンとシリンダーがモロ当たりするので、ベーク製インシュレーターを追加で組み込み、ゴリラエンジンに取り付けた。
スロットルケーブル問題は、アウターケーブルに自作アダプターを組み込むことで辻褄合わせ完了。しかし、ノーマルスロットルのままではワイヤーケーブル巻き取り不足で、スロットルバルブが全開にならない!? スロットル全開にしても、8割程度の開度である。
そんな状況のまま、現状におけるキャブセッティングを先行した。メインジェット変更とジェットニードルのクリップの段数変更で、コントローラブルかつスムーズに走るようになった。
PW型キャブはフロートチャンバーが大きいので、オーバーヒート気味でもパーコレーション症状(チャンバー内ガソリンが沸騰する症状)は起こらないと思う。
さてさて、キャブ交換後、セッティングが決まると「それはもう驚きのスピード感」に!! メーター指針は、遥か遙か先まで進むようになった。
筆者の友人であるこのマシンのオーナーに試運転してもらったが、それはもう驚きの様子。今後はマフラー交換して、スロットルバルブが全開になるようにハイスロットル化。再度キャブセッティングすれば、より速くなると思う。いよいよ黄色ゴリラもチューニングカスタムの蟻地獄へ突入でしょうかね〜!?
ビッグキャブ+マニホールドを交換してセッティングした後にオーナーさんに納車した。試運転するなり「メーターの針がずっと先までいっちゃうね〜♪」と大満足。
シフトアップ製でケーヒンPC20型キャブレターに対応したエアフィルターを購入。ブローバイガス還元ノズルが取り付けられていたが、今回はフィッティングを外して栓ボルトを締め付け、ブローバイ機能はそのままにした。
最初に預かった時、走り出すとメーターから「ギューギューッ」と異音が聴こえたので、メーターケーブルの差し込み回転部周辺にグリスを押し込んだ。現在は無音で快適〜!
いつもの農免テストコースでセットアップ。メインジェットを交換し、ジェットニードルのクリップ段数を調整しただけで、このプラグの焼け具合。もう少し寒くなったら再度キャブセッティングが必要だね。
12V時代になってからのシリンダーヘッドと比べ、吸入ポートや吸排気バルブのサイズが大きかった6Vエンジン時代、ノーマルのマニホールドを外して面出し実施中。
ボアアップ時にはヘッドのシートカットとバルブ擦り合わせをiB井上ボーリングさんでお願いした。旧SPT時代のマニホールドだと干渉部分があり、そのまま使えなかった。
おそらくスーパーカブの縦キャブ時代用? ベークライト製の純正インシュレーターを取り付け部分に追加して、キャブボディ(フロートチャンバー)との干渉から逃がしてみた。
断熱目的のペークインシュレーターを追加すれば、フロートチャンバードレンフィッティングとシリンダーの干渉を避けることができる。フィッティング廃止でも良かったが…
ベークライトインシュレーターのボルト締め付けピッチが広くてC50系エンジンと一致しない。そこで締め付け孔を加工した。簡易クランプでも切削加工できて良かった。
加工したことでC50系エンジンのインマニ締め付けピッチに対応できた。しかし、インシュレーター側の方が、ポートサイズが圧倒的に大きい。ヘッド側を拡大する!?
ヘッド側のポートを拡大すれば、さらなるパワーアップと高回転化が可能になるのだが、現状エンジンではバランスが悪いので、インシュレーター部をテーパー仕様に…
アルミ棒からテーパーアダプタ―を削り出し、ペークインシュレーターのポートに低圧入+エポキシ接着剤で固定した。段差がなくスムーズな吸入が可能になるはず。
ペークインシュレーターをシリンダーヘッド側から見ると、ご覧の通りの感じになる。純正インシュレーターなので、適正サイズのOリングが入る構造となっている。
ハンドル側のスロットルパイプやホルダーは現状部品のままでビッグキャブに対応しようとすると、スロットルケーブルインナーが余ってしまった。そこでスペーサーを自作。真鍮棒に旋盤で貫通孔を開けて、段付き加工を施したピースを作ってみた。最初に削ったのが下の部品だが、スロットルケーブルの遊びがまだ大きかったので、しっかり採寸してから上の部品を削り出した。バッチグー〜♪
アルミ削り出し新型マニホールド登場!
シフトアップの開発担当者さんから「こんな部品も作ってますよ」と画像を着信。ケーヒンPC型とミクニVM型用のアルミ削り出しマニホールドを新規開発中だそう。キャブ本体はもはや入手困難になりつつあるが、近い将来、こんな商品も発売されそうだ。
【ミクニVM用】ミクニVMキャブ用はラバーインシュレーター越しにキャブ装着となる。
【ケーヒンPC用】
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
ネットで注文できる1サイズ&1プライスガレージ。完成状態で運搬されてクレーンで据え置きされる サンデーメカニックなら誰もが知る工具ショップ・アストロプロダクツのホームページ上に「BIKE小屋」という商[…]
前後バランス配分が崩れてしまったフロントまわりを構築 フロントフォークの動き云々もあるが、動き以前に長さが違って前後バランス配分が崩れてしまうと、まともに走れなくなってしまうのがバイクだと思う。とりわ[…]
歴史的な価値のあるパーツに使われることが多いマグリコート ホイールやエンジンカバー、といっても一般的な市販モデルではなく、アフターマーケットパーツやレース用のホイールやカバー類に使われることの多い、マ[…]
走行回数の多さと模擬レースのセットでコストパフォーマンスの高さは折り紙付き 絶版車やクラシックマシンでサーキットを走行してみたいが、レースに参戦するほどではない。あるいはクラシックレースにエントリーし[…]
エアインパクトレンチ:手のひらに収まるサイズで500Nmを発揮。狭い場所で活躍する力自慢 ガレージにエアコンプレッサーを導入したら、まず揃えておきたいのがエアブローガンとエアゲージ、そしてインパクトレ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
ネットで注文できる1サイズ&1プライスガレージ。完成状態で運搬されてクレーンで据え置きされる サンデーメカニックなら誰もが知る工具ショップ・アストロプロダクツのホームページ上に「BIKE小屋」という商[…]
前後バランス配分が崩れてしまったフロントまわりを構築 フロントフォークの動き云々もあるが、動き以前に長さが違って前後バランス配分が崩れてしまうと、まともに走れなくなってしまうのがバイクだと思う。とりわ[…]
【ご注意】本記事は、エンジンオイルの過剰注入がエンジンに与える影響を確認するための実験であり、一般使用車両での実施や再現を推奨するものではありませんのでご了承ください。 オイルの規定量は守らなくちゃイ[…]
旧車の開発に使われた”鉱物油”にこだわる 1992年に創業した絶版車ディーラーのパイオニア・ウエマツ。販売だけでなく、整備にも徹底して力を注いできた同社がそのノウハウをフィードバックし、旧車に特化した[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」、今回は大ヒット街道まっしぐら、女性人気も高いホンダ「レブル250(S[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかって[…]
インフレの今、価格破壊王のワークマンがまたやってくれた! 春から初夏にかけ、ツーリングのシーズンがやってきた。爽やかな空気を全身に浴びてのライディングは最高だ。しかし…この期間はジメジメ・シトシトの梅[…]
ネオクラシックながら”新しさ”で対抗 ヘリテージやネオクラシックと呼ばれるカテゴリーで、登場以来絶対的な人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズ。現代スポーツネイキッドをベースに、名車Z1を絶妙にアレ[…]
実は”ホンダエンジン”時代からの愛車だった マンセルがF1のパドックで乗っていたのは、ホンダのダックス70(CT70)でした。1988年モデルとも、1987モデルとも言われていますが、いずれにしろ当時[…]
◆今回のPRO解説者:以前にはネオクラ車の解説記事もお願いしたバイクデザインのプロフェッショナル。1980年代前半に某社に入社したベテランで、オンロード系をメインに排気量の大小を問わずさまざまな機種を[…]
最新の投稿記事(全体)
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむホンダのモンキー&ゴリラ シフトアップ製88ccキットを組み込み、ノーマルキャブのままでセッティング変更せずに普通に走ることができた、6ボルト仕様の初期型黄色ゴリ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc 400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。 そんな400cc[…]
完全に消える? それとも復活する? ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「Ninja ZX-4R」が登場し、唯一無二[…]
マイナーチェンジを実施し、ヘリテイジカラー追加 並列3気筒845ccエンジンを搭載する“ネオレトロ(Neo Retro)”ロードスポーツバイク「XSR900 ABS」。独特のサウンドも魅力の並列3気筒[…]
意表をついたZ1-RデザインがカワサキZの新しいトレンドに! 1972年に世界で量産されていなかった900ccのDOHC4気筒で大成功を収めたカワサキ。 しかし王座に君臨していられた時期が長く続いたわ[…]
- 1
- 2