
「せっかく高性能リヤショックを取り付けたのに、パフォーマンスが改善しない」なんてことを過去に何度も見てきたモトメカニック編集スタッフ。ショックユニット本体が素晴らしい働きをしてくれるからといって、取り付ければ即OK! 即高性能! ではないし、装着後メンテナンスもせずにずっと放置では、本来の性能をスポイルしてしまう。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:カーベック
せっかくだからリヤサスペンションまわりの汚れをキレイに
カスタムされたカワサキGPz900Rニンジャ[1993]のメンテナンス中で気になったのが、リヤサスペンションまわりの汚れだった。この車両を預かる直前に、雨中のロングツーリングに出かけていたために、このような状況になってしまったようだ。あまりにも汚れがひどいので、リヤサスペンションまわりを取り外し、洗浄やグリスアップなどのメンテナンスを徹底的に実践することにした。
高性能リヤショックを取り付けたからといって、それだけでサスペンション性能を引き出せるものではない。セッティング幅が広がったからといっても、作動範囲でメカニズムがスムーズに動いていなければ、高性能ショックユニットの性能は生かせない。ズバリ、周辺のリンクユニットの作動性は大丈夫か!? スイングアームピボットがスムーズに動いているか!? これらが確約されて初めて、高性能ショックユニットは“本領発揮”してくれるものなのだ。
分解洗浄&グリスアップ後に、各作動摺動部の動きをひとつひとつ確認しながら復元。すると、リヤまわりは作業前と比べてピョンピョン跳ねるかのように作動。細かなセッティングを施すことで、高性能ショックを自分好みの足まわりにできる。伸び縮みの減衰力調整等でセッティングを楽しもう!!
リヤサスペンションまわりのメンテナンスを実践。屋外メンテは地獄のような暑さだった。屋外露天作業時は、メンテシートやメンテカーペットがあると便利だ。
リンク付きモノサスペンションの場合は、スイングアームピボットの摺動だけではなく、リンクまわりの摺動抵抗が作動性のカギを握る。ボルトも防錆対策でグリス塗布しなければならない。
簡単に取り外せただけでも助かったのだが、リンクまわりが渋くなっていると、思い通りにショックユニット本体を取り外すことができなくなってしまう。見ての通り、激しい汚れが気になる。
カジってはいないものの、プッシュロッドアッパーボルトが楽に抜けなかった。ブレーキキャリパーピストンツールがあると、ボルトの頭を押しやすく、スーッと抜ける。
タイロッドエンドを利用した車高調整機能付きプッシュロッドのリヤサスペンションリンク。複数ある締結ピンやブッシュが正しく作動してこそ、高性能リヤショックが威力を発揮する。
露出タイプのピロボールが付くタイロッドエンドには、定期的な注油を行おう。メーカー純正シフトチェンジロッドのピロ部分のように、ダストカバーが付くと理想的。
おそらく純正部品とは違ったレバー比を採用したリンクアームユニット。3か所の締結ポイントには、ニードルローラーベアリングが組み込まれている。多少のグリスは残っていた。
内部のグリスをきれいなウエスで拭き取ってから、新たにグリスを塗布した。ニードルローラーベアリングが入るので、作動性は良い。純正部品の中にはメタル受けモデルもある。
締結ピンは、パーツクリーナーで洗浄後、摺動部分に段差や摩耗がないことを確認してからグリスアップする。動きが渋くカジっていたピンなどは、摺動部分の色が変わり凸凹になっていることも。
ピンに凸凹があったら、新品ベアリングに打ち変え、ピンも新品部品に交換しなければならない。アルミ削り出しで作られたリンクアームとプッシュロッドピボット。美しくありたいパーツだ。
スイングアーム単体で、運動方向の作動性とピボット左右方向にガタがないか確認した。作動性は良好だったが、違和感がある際には、スイングアームピボット& シャフトにもグリスアップしよう。
パウダーコートでおなじみ、カーベック(愛知県)の駐車場で行った今回の作業。ショップや工場向けの人気商品・スプラッシュショットで、高性能リヤショックを洗浄するができた。見た目は別物の美しさに。
脱脂洗浄剤を混ぜたお湯で強烈に洗浄するのがスプラッシュショット。グリスが詰まったベアリングでも、内外輪を押さえれば、グリスのみを溶かして吹き飛ばし、クリーニングできる。
あっという間に美しく仕上がった高性能リヤサス。普段の走行においては、ドロや砂利が研磨材になって、部品を傷だらけにしてしまうことも。雨天走行後は、高圧洗浄機を使って外部からリヤサスまわりを洗いたい!!
部品が美しくなっただけで、分解前とは大違いの印象だ。要所要所にグリスを塗布して組み上げた。タイロッドの調整でスイングアームのセット角度が変わり、リヤまわりの車高を調整できる仕組み。
リヤホイールとブレーキキャリパーまわりを復元する際にも、要所要所にグリスを塗布しよう。特に、リヤホイールアクスルへのグリス塗布はしっかり行おう。シャフトの白い粉は防錆不足の証だ。
ホイールのサイドカラーには、メーカー純正部品のスチール製部品が組み込まれていた。スチール部品はメッキの擦れでサビが発生してしまうので、表面に薄っすらグリスを塗布しよう。
自作のステップスタンドを取り外し、リヤショックまわりを動かすためにシートレールを地面へ向けて押し込む。作業前と比べて、リヤまわりがポンポンとスムーズに持ち上がるようになった!!
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