4月上旬、JAIA(日本自動車輸入組合)による輸入車の試乗会が開催されたので参加してきた。当日はさまざまな外国車をとっかえひっかえ試乗することができたので、短めではあるがインプレッションをお届けしたい。今回はトライアンフが誇る巨大なロードスター「ロケット3 ストームR」だ。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:トライアンフモーターサイクルズ
トルクが凄ぇ! でも意外なほど普通に走る
2294ccの直列3気筒エンジンを搭載した初代ロケットIII(現在はロケット3)を初めて目の前にしたとき、こんな大きなバイクをまともに走らせられるんだろうかと思ったものだった。結果的にそれは杞憂だったのだけれど、初代のですらそう感じたのだから量産バイクで世界最大排気量を誇る2458ccの最新ロケット3はさらに乗り手を威圧するのだろうか……。
まあ例によってそれも杞憂、というか車体の巨大な押し出し感という意味では最新型のほうが洗練された感があり、威圧感は少し抑制されている。サイドスタンドからの引き起こしも317kgという車重の割には苦労せずに済み、跨れば足着き性も十分。燃料タンク後端は絞られているため膝が大きく開くこともなく、しいていえばハンドルグリップがやや遠めに感じられる程度で違和感なしだ。
エンジンを始動すると、3気筒の図太いサウンドを奏でながらアイドリングする。縦置きクランク特有のトルクリアクション(回転の上下で車体が左右に揺すられる)に備えたが、それは全くと言っていいほど感じない。車体は低く前後に長く、懐に巨大なエンジンを抱えているのを大柄なタンクの向こうに垣間見ることができる。
車格イメージからすると拍子抜けするほど軽いクラッチレバーを引き、シフトペダルを踏み込むと特に大きなショックもなく1速に入る。発進は余程乱暴なクラッチ操作をしない限りエンストする気配もなく、アイドリングのままスルスルと走り出す。
エンジンが冷えているとアイドリングが高めにキープされるが、その状態だとアイドリングのままシフトアップしても、たとえばスーパーカブ110あたりでそれなりに快活な加速をしたのと同程度の感じで速度が増していく。22.9kg-m/4000rpmの最大トルクは伊達じゃない。
街乗りの速度域だと2000rpmも回せば十分で、ちょっと機敏な加速をしようと思っても3000rpmを超えることはあまりなさそうだ。スコスコと小気味よくシフトアップ/ダウンでき、スロットルの開け始めや戻し始めもスムーズ。とりあえず発進して止まるだけなら免許取りたての方でも怖さを感じずにできてしまうのではと思うほどだった。
速度高めの領域では意外な運動性を見せる
じゃあ走る/止まるに“曲がる”を加えたらどうなるのかというと、これもある程度の経験があれば自然に行えそう。グラリときたらもちろんそれなりに重いが、バイクに変な動きを与えないように操作すれば、長いホイールベースと300kg超の車重でもハンドルが切れ込んだり不自然に立ちが強い/弱いといったこともなく、手に力が入って疲れてしまうようなことはない。
さすがにタイトターンはちょっと苦手だがそれも許容範囲。ここで感心したのはブレーキの扱いやすさだ。前後ともブレーキのかけ始め/緩め始めがスムーズで、低速で曲がるようなときもコントロールしやすい。エンストしそうな気配がないエンジンに助けられている面もあるだろう。
クローズドコースでの試乗なので、スロットルを思い切ってワイドオープンしてみると、182ps/7000rpmの最高出力が炸裂する。高回転に向かって盛り上がるというよりは、極上のトルクが回転上昇とともに増していく感じで、まさしく怒涛の押し出し感。3気筒のゴリゴリとしたフィーリングもわずかに残しながら、モーターサイクルとして調教の行き届いたスムーズかつ極厚のトルクという、他に類を見ないエンジンフィーリングが楽しめる。
速度を上げていった際にもブレーキのコントロール性はとてもよく、制動力も十分。そういえばシャフトドライブの挙動も特にクセは感じなかった。また、ジャイロ効果がロール方向に影響しない縦置きクランクゆえか、寝かし込みは意外なほど軽い。スーパースポーツは無理でも、ワインディングで快走する大型ツアラーやビッグネイキッドなどと一緒に走っても、さほど気後れする必要はなさそうだ。
もちろんこの車重なので、力任せのライディングではどうにもならない。ビッグバイクならではの“スロットルワークで操る”をより強く意識する必要があるし、ブレーキ操作も丁寧さが必要だ。
ツーリングを想定した走り方では、回転を一定に保ちやすい特性が光った。スロットルの据わりがいいというか、狙った速度で走り続けることが全く苦にならないのだ。当然のようにパワーモード切替やトラコン、クルーズコントロールも装備しており、ツーリングも快適にこなせそう。よりリラックスしたライディングポジションで小型ウインドスクリーンなどを装備するロケット3ストームGTなら、さらに快適な走りを楽しめそうだ。
TRIUMPH ROCKET 3 STORM R[2024 model]
主要諸元■全長─ 全幅920 全高1125(ミラー含まず) 軸距1677 シート高773(各mm) 車重317kg■水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ 2458cc 182ps/7000rpm 22.95kg-m/4000rpm 変速機6段 燃料タンク容量18L■タイヤサイズF=150/80R17 R=240/50R16 ●価格:298万9000円 ●色:赤×黒、黒、青×黒
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トライアンフ)
ファッションからスポーツまで。現代のバイクライフにフィット このバイクは只者じゃない−−。僕はマヨルカ島のリゾートホテルのエントランスに鎮座するトライアンフの「スピードツイン1200RS」に初対面した[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
トライアンフの歴史を華々しく飾った一流スタントライダーの記念碑的モデル トライアンフ・ロケット3は、2458cc水冷並列3気筒エンジンをクランク縦置きで搭載するメガクルーザーだ。このたび発表された特別[…]
伝説のロゴが語る歴史 2024年現在でこそ、三角形にブロック体のアルファベットといった趣の、トライアンフロゴ。しかし100年以上続く、歴史あるブランドだけあって、1902年の盾型デザインに始まり、いく[…]
タイガーシリーズの快走ツアラーが新エンジンとともに トライアンフのアドベンチャーシリーズには実にさまざまなバリエーションが揃っているが、このたび新登場する『タイガースポーツ800』は、既存モデルである[…]
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
ベテランカメラマンに「これはアートだ」と言わしめる流麗なフォルム リヤタイヤが路面を蹴り飛ばすかのような、豪快で胸の空く加速フィールはスタートダッシュだけではなく、速度レンジが上がってからもまだまだ続[…]
2018 カワサキ ニンジャ400:250と共通設計としたことでツアラーから変貌(2018年8月30日公開記事より) 2018年型でフルモデルチェンジを敢行した際、従来の650共通ではなく250共通設[…]
リグニスによるカスタムコンプリートのニューモデル『フリスコスタイル』とは 「これこれっ、これなんだよなぁ」と、エボリューションVツインを知る人はもちろん、もしかしたらハーレーダビッドソンに乗ったことが[…]
ジクサー150でワインディング 高速道路を走れる軽二輪で、約38万円で買えて、燃費もいいというウワサのロードスポーツ──スズキ ジクサー150。 まだ子どもの教育費が残っている50代家族持ちには(まさ[…]
ワイルドさも残る洗練のクロスオーバー スズキの量産バイクで初めて電子制御サスペンションを採用したGSX-S1000GX(以下GX)は、前後17インチホイールを履いたクロスオーバー・アドベンチャー。欧州[…]
人気記事ランキング(全体)
アッパーカウルはフランスで882.5ユーロ 1980年代のGSX1100S KATANAをモチーフにしたスペシャルモデルを製作することは、S2コンセプトのスタッフが何年も温めていたアイデアだった。それ[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
ライトグレーのボディにライトブルーのホイールが新鮮! ヤマハが「MT-25」の2025年モデルをインドネシアで世界初公開した。欧州で発表済みの兄弟モデル・MT-03に準じたモデルチェンジ内容で、現地価[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
欧州&北米で昨秋登場した新型YZF-R3の250cc版 ヤマハはインドネシアで新型「YZF-R25」を発表した。2024年10月に欧州&北米で登場した新型YZF-R3と同様のモデルチェンジ内容とした2[…]
最新の投稿記事(全体)
先日、バイク好きな友人と車でドライブしているときに(私は助手席だけれど…)ライダー同士がすれ違う際に、ピースをしあっている光景を見た。なんだか楽しそうなことしてるなーと思い、「あれって、車に乗ってる俺[…]
スパナプライヤー:刻みのないジョーが平行にスライド。スパナのように使えるプライヤー ストレートのスパナプライヤーは、細部の形状や仕上げは異なるものの、ヒンジの仕組みや特徴はクニペックスのプライヤーレン[…]
ハイパワーだけでなく、本来持つテイスティさを損なわず、より“らしさ”を強調するストロークアップ エンジンを強化する際、排気量アップが効果的なのはたやすくイメージできるだろう。ハーレーダビッドソンはエボ[…]
直線基調の斬新スタイルへの挑戦 「デザインの源流はバック・トゥ・ザ・フューチャー」 好みにカスタムしたバイクで行きつけのカフェに向かい、日がな一日、気の合う仲間とバイクを眺め、バイク談義に耽る。 その[…]
1位:ホンダ新型「CB1000」8月時点最新情報まとめ ホンダがCB1000ホーネットをベースに、CB1300の後継機として開発を進めているというウワサの新型CB1000。その8月時点のスクープ情報ま[…]
- 1
- 2