空力デバイスはフロントウイングだけじゃない

MotoGPマシンはリヤタイヤを冷やしたい? スイングアーム下のスポイラーの役割って?

最近のMotoGPマシンの進化で目に見えてわかりやすいのは、カウリングの形状や空力デバイスの進化。エンジンやフレームの進化は正直わかりにくいものが多い。今回は第5戦ポルトガルGPの予選で気になったリヤタイヤを冷やすためのスポイラーの形状に注目してみた。


●文/まとめ:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:ミシュラン

ドライでは装着していないメーカーも……

スイングアームの下に装着された、当初はスプーンと呼ばれた空力デバイス。2018年のテストから登場し、2019年から本格的に採用したのはドゥカティだった。また、その後にホンダがリヤタイヤのダウンフォースを発生させるための装置として同様のパーツを申請するが、それはレギュレーションで認められていなかったため却下。数時間後に同じパーツをリヤタイヤの冷却用として申請し、受理されたというアイテムでもある。

このスイングアーム下の空力デバイスは、最近では全メーカーが採用。当時はタイヤ温度がかなり下がると言われ、タイヤに厳しいコースで使われていた。その後、ウエットレースでの定番に。現在、ドライレースでは装着しているメーカーもあるし、装着していないメーカーもあるが、ウエットレースではほとんどのメーカーが装着している。これはタイヤを冷やすというよりはタイヤにかかる雨の量を減らすため。水の量を減らし、タイヤが水を掻き出す作用を向上させているのだ。

もちろんその形状を見れば、冷却だけでなくリヤタイヤ(スイングアーム)を路面に押し付けるダウンフォースも発揮しているはず。

空力競争はリヤタイヤにまで発展し、各メーカー試行錯誤している。スポイラー、スイングアームアタッチメント、デフレクターなどと呼ばれ進化してきた。

2022年シーズン第5戦ポルトガルGPのフリープラクティスで各メーカーの形状を見ることができたので紹介したい。リヤスポイラーの形状だけでなく、ウエット時のフロントディスクカバーにも注目していただけるとメーカーの個性やセンスが見れてさらに面白いと思う。

アプリリア RS-GP
スプーンはドライは1枚仕様で、レインは2枚仕様となっていたアプリリアのRS-GP。左がドライで右がウエット時。コースの特性なのか路面の状況なのか、今シーズンさらに注目していきたいと思う。開幕から調子が良いだけにそのチャレンジはきっとそれなりの効果を生んでいるに違いない。

こちらは1枚仕様の別アングル。かなり凝った形状で、何枚かのウイングによって構成されていることがわかる。現在、空力デバイスをもっとも積極的に開発しているのはアプリリアのような気がする。ブレーキまわりやカウル下の処理もとても美しく、無駄がない。

ウエットレースは様々なディテールに注目しながらレースを観戦すると面白いかも。フロントディスクのカバーは天候によってはもちろんコースによっても変わる。昔はウエットだとカーボンディスクを使えなかったが、最近はカーボンが主流。

KTM RC16
KTMも様々な形状を持っている模様。左がドライで、右がウエット。KTMはドライでも装着していることが多いが、テック3は装着していなかったりと様々。

カーボン製の美しいつくり。テック3はウエット路面でもファクトリーのドライ用と同じような形状のものを採用していた。

ドゥカティ デスモセディチGP
ドゥカティはドライ時は装着していないが、ウエット時に装着。しかし、アンダーカウル前半部分はどのメーカーにもない凝った形状をしていて、マシン全体を地面に押し付けているのがよくわかる

ホンダ RC213V
ホンダもドライ時は装着していないパターンが多い。ウエット時は比較的小ぶりなデザイン。ウエット時はフロントブレーキのカバーも異なる。

ヤマハ YZR-M1
ヤマハもドライ時は装着していないことが多い。こちらもコンパクトなデザインを採用している。

スズキ GSX-RR
スズキはドライレースでも採用していることが多い。国産は比較的シンプルなデザインと作りであることが多い。

最後に怪しいディテールを発見したので掲載。フロントのライドハイトデバイスの機構? フロントフォークの前方部分にダンパー?らしきものが見える。


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