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近年のMotoGPで見た目にわかりやすい進化はエアロダイナミクスだけ。MIGLIOREでは度々その形状や進化に触れてきたが、今回はフロントディスクブレーキのカバーに注目してみよう。
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:ミシュラン
カーボンディスクは温度管理がシビア。 ウエットでは冷やしたくない?
2022年のMotoGPは前半戦を終了。ファクトリー勢のマシンがまとまってくるなど、例年通りの流れで進んでいる。MIGLIOREではMotoGPマシンの様々な空力デバイスに注目してきたが、今回はフロントブレーキディスクのカバーに注目してみよう。
というか、近年、見た目に変化がわかるのは空力デバイスやライドハイトデバイスくらいしかなく、フレームやエンジンに関してはシーズンオフのメーカーインタビューでも秘密裏で、なかなか真相が見えないというか掴めないのが現状だ。
前半戦最後の第11戦オランダGPではダッチウェザーもあり、各メーカーのウエット&ドライのフロントブレーキディスクカバー(以下、ディスクカバー)をみることができたので見てみよう。決勝でもダッチウェザーを警戒してかディスクカバーを装着しているバイクが多かった。
少し前まではカーボンディスクは冷えている状態だとまったく効かない性質だった。それもありウエット時は、2017年あたりまではステンレスディスクを使用する選手もいたが、ここ数年は技術の進化もあり、冷えている時でも性能が安定してきたのかウエット時もカーボンディスクが主流になっている。
そしてカーボンディスクの温度を管理するためのディスクカバーは様々な形状がある。ここまでメーカーが試行錯誤しているのをみると、単なるカバーではなくブレーキのセッティングパーツだということがよくわかる。
ちなみにリヤディスクはずっとステンレスのままで変化を感じにくい。これは温度にシビアなカーボンディスクだと、制動というよりはマシンの姿勢制御に使われる役割が大きいリヤブレーキの性能を出すのがまだまだ難しいのかもしれない。
現在ランキングトップのクアルタラロは、オランダGPのウィーク中だけでも様々な形状のディスクカバーを装着して走行していた。メインカットになっているウエット時はフルカバードだが、こちらはドライでもディスクのカバー率が高めのもの。
こちらはディスクカバー率が少ないもの(左)。右は前戦のドイツ。ディスクカバーを装着せずに走っているから、ブレーキの使用頻度や気温などにより、かなり操作時のフィーリングに差があるのだと思う。
数年前からフロントブレーキまわりのエアロダイナミクスにもっとも真剣に取り組んでいるのがアプリリアだ。ウエット時はフルカバード。ディスク内の温度を緻密にコントロールしていると思われる。ラジエターにダクトテープを貼って水温の低下を防ぐのは昔ながらの手法だが……
サテライトチームはフロントフォークの下部に台形のパーツを装着するケースがかなりある。もちろんディスクカバーなしでこの台形パーツだけを装着するケースも。右はフロントフォークのインナーチューブまわりに注目。ステアリングダンパーのような物があり、これがライドハイトデバイスの何かかと思われる。
こちらは2017年の日本GPの写真。ホンダのダニ・ペドロサやドゥカティのホルヘ・ロレンソはステンレスディスクを使用していた。ちなみにチームメイトのマルク・マルケスやアンドレア・ドヴィツィオーゾはすでにカーボンディスク×ディスクカバーの組み合わせだった。
ホンダのウエット仕様はオーソドックスなカバータイプ。
GPライダーはとてもシビアな選択を迫られている?
各メーカー、様々な選択肢があるブレーキまわりの空力デバイス。MotoGPライダーは、この中から状況に合わせてベストなチョイスをしなければならない。サスペンションや車体姿勢はもちろんだが、タイヤやディスク、パッドとの組み合わせなども考慮しながら選ぶわけだが、乗り方や電子制御の選択も含めてMotoGPライダーは年々忙しくなっている。そして、普通のバイクからはどんどんかけ離れていっているのは間違いなく、四輪レースのF1が加速しているような気がしてならない……。
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