最終的にGPZ900Rとなる「次世代Z」開発初期、何度もテストを行った900ccの空冷並列6気筒は「スムーズすぎてバイクらしさやパンチがない」という結論となった。そこで並列4気筒路線を選択するも、エンジニアたちは振動対策に苦心する。また、空冷で高出力を狙うと当然、熱の問題も出てくる。たどり着いたのは「4バルブの水冷並列4気筒」という解だった。
●原文:大光明 克征 ●写真:八重洲出版 ●編集:モーサイ編集部(上野茂岐) ※当記事は『別冊モーターサイクリスト1984年5月号』GPZ900R 対 FJ1100の記事を再編集したものです。開発エンジニアへのインタビューは当時のものとなります。
1982年後半、開発コード990の水冷エンジンが回りだした
4バルブにした目的は低速を犠牲にしないようなカムを使って、高出力を出すことだ。しかし、出力を上げていくとどうしても冷却不足になってしまう。
「コンパクトにしようと、シリンダーピッチを狭めたという要素もありますが、それは広げたからといって解決はしません。前にはエキパイがあるし、後ろにはキャブレターやエアクリーナーがあって、もともと熱伝達の悪い空気がなかなか抜けてくれないんです」(エンジン設計担当・島田和夫技術部係長)
バルブ挟み角を広くすると、ヘッドまわりの冷却はよくなるが、球形に近い、よい燃焼室ができず、高性能が望めない。
「4バルブというやつは、本質的に水冷と組み合わせないとできないという結論になりまして。結局、落ち着く所へ落ち着いたということですわ」(開発プロジェクトリーダー・稲村暁一技術部部長)。
1982年暮れに、開発コード990の水冷エンジンは回り出した。
「水冷にすると、圧縮比を上げてもノッキングが出ません。プラグ座温にして水冷なら250度からせいぜい270度。それが空冷だと、まず260度は超えて、悪いやつは300度。ノッキングは出るし、オイル消費量も非常に多くなり、各部の摩耗も激しくなります」(島田)
ウエットライナーを採用したので、シリンダーも非常によく冷えるようになった。谷田部テストコースをフルスロットルで走り続けた場合、空冷だとリッター500kmというオイル消費量が、水冷にすると5000〜1万kmも伸びるようになった。
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