二輪車の”初”を切り拓き、偉大なる足跡を残した車両を年代順に紐解いていく。本稿では1984年モデルから、世界初カムギアトレーン「幻に終わった渾身の最速V4」’84ホンダVF1000R、400cc初アルミフレーム「クラス最軽量、GS直系ミドルレプリカ」’84スズキGSX-R、世界初大型水冷直4「新基準を確立した次世代の『Z』」’84カワサキGPz900R等を紹介する。
※本稿で取り挙げる「初」は、“公道走行可能な量産二輪市販車”としての「初」を意味します。また、「初」の定義には諸説ある場合があります。
世界初カムギアトレーン「幻に終わった渾身の最速V4」HONDA VF1000R[1984]
水冷V4のVF1000Fを基盤に、市販車レースの公認取得用に大刷新したR仕様。吸排気バルブを歯車で駆動させるカムギアトレーンを市販車で初投入した。レーサーRS1000RW譲りのハイテクで、高回転域の伝達ロスが少なく、信頼性が高い。さらにクイックリリース式アクスルホルダーやNSコムスター、フローティングディスクなどもRS譲りだが、レース規則が上限750㏄に変更。戦績を残せず、登場2年で殿堂入りした。
「先代ホモロゲマシンは空冷直4」HONDA CB1100R[RC][1982]
世界耐久などの勝利を目指して開発された旗艦で’81年に登場。CB900Fをベースに、排気量アップした空冷直4と専用フレームを与え、アルミタンクやFRPカウルなどの豪華装備を誇る。これの後継に当たるのがVF1000Rだ。
VF1000Rは、実測246㎞/hで公道最速マシンに君臨。これと覇を競い合ったのが空冷直4のFJ1100だ。ゼロヨンは当時最速の10秒台。最高速は233.82㎞/hだった。
400cc初アルミフレーム「クラス最軽量、GS直系ミドルレプリカ」SUZUKI GSX-R[1984]
RG250Γに続き、スズキは4スト400㏄にもアルミフレームをいち早く投入した。その名もGSX-Rは、クラス最軽量の152㎏と最強の59psをマーク。さらに2眼ライトとハーフカウル、ヨシムラ譲りの集合管など、’83鈴鹿8耐で勝利したGS1000Rをモチーフにした装備も与え、大ヒットに。レースで強く、’86〜’87鈴鹿4耐で連覇している。
「初代F3王者に輝いた好敵手」YAMAHA FZ400R[1984]
’84年に開幕した全日本TT-F3用のワークスマシンと共同開発。59psの強心臓を角断面スチールパイプフレーム+フロント16インチの車体に積む。GSX-Rより重かったが、優れたトータルバランスを発揮した。ワークス車は見事、初代F3の王座を戴冠している。
世界初大型水冷直4「新基準を確立した次世代の『Z』」KAWASAKI GPz900R[1984]
カワサキが満を持して投入した次世代フラッグシップが、初代ニンジャの本作である。Z1系に代わる最速旗艦として様々なエンジン型式を検討し、辿り着いたのがDOHC4バルブヘッドの水冷直4。排気量はZ1に原点回帰した908㏄を選び世界初の大型水冷直4マシンとなった。サイドカムチェーンによりコンパクト設計としながら最高出力は115psを発生。これを同社初のダイヤモンドフレームに積み、軽量化も促進した。前輪は流行の16インチ、リヤは近代的なリンク式モノショック。鋭角的なフルカウルは、デザイン性はもちろん、空力特性も優秀だ。
ライバルより控えめな排気量ながら最高速は圧倒的で、ついに250㎞/hの領域へ突入。一挙に現代レベルの走りに到達し、マン島TTで優勝を飾るなど実力を証明した。ちなみに「ニンジャ」とは北米仕様のペットネームで、以降、同社のスポーツバイクの名称に定着していく。ニンジャの登場でビッグバイクの基準は大きく底上げされ、このクラスは当面カワサキを軸に動くことになる——。
Z1を継ぐ第2の「マジック9」
最高速のみならず運動性能も鋭い
国内にはボア×ストロークをダウンし、748㏄化したGPz750Rを発売。排気量以外は基本的に900と同様だ。’91年には国内版900も登場した。下記『トップガン』カラーに最も近いのが、この’84年型の黒×赤(G1)だ。
【映画『トップガン』で人気に拍車がかかった】
’86年に公開され、全米興業成績1位を記録した『トップガン』。戦闘機パイロットの主人公(トム・クルーズ)が劇中でGPz900Rを駆り、ニンジャ人気を後押し。ユーザーは戦闘機乗りの気分に浸ったものだ。
【2020年公開続編にも“ニンジャ”が!?】
それから34年を経て、続編の『トップガン・マーヴェリック』が公開される。もちろん主役はトム様で、予告映像ではカバーの中から900Rが現れるシーンと、現代のニンジャH2で走る姿が確認できる。
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