
2022年に多くのファンに惜しまれながらも生産終了となった、4気筒の金字塔「CB400 SUPER FOUR(CB400SF)」。その名車が、ホンダの誇る最新テクノロジー「E-Clutch(イー・クラッチ)」を身にまとい復活したのは記憶に新しい。そんな新型CB400SFが2026年9月に開催される「2026 鉄馬 with TSK」に出場を果たす。しかも駆るのは、ホンダ開発チーム自ら。この参戦は単なるお祭り騒ぎのプロモーションではない。その裏には、将来を見据えた技術者たちの「真の狙い」が隠されているのだ。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真/外部リンク:ホンダ
「賞典外」でも関係ない。名車CB400SFがE-Clutchを積んでサーキットへ降臨する衝撃
バイク乗り、特に中型クラスを愛する者にとって、CB400SFという存在は特別なものだ。その美しい直列4気筒の咆哮が、まさか最新の「E-Clutch」を搭載して再びサーキットに響き渡ることになるとは、一体誰が予想できただろうか。ホンダが発表した今回の「2026 鉄馬 with TSK」への参戦は、バイク界を大きく揺るがすビッグニュースだ。
出走するマシンは「CB400 SUPER FOUR E-Clutch仕様」。 しかも、このレースにおける立ち位置は「エキシビション参戦(オープン参加)」であり、順位がつかない賞典外としての出走となる。つまり、勝ってトロフィーを持ち帰ることはできない。では、なぜホンダの開発チームは、わざわざ莫大な労力をかけてまでこの極限のレースに挑むのだろうか。そこには、技術者たちの「真の目的」が存在していた。
単なるプロモーションではない。未来のプライベーターに道を開く「ルールメイキング」の裏事情
ホンダが今回、賞典外での実証参戦に踏み切った最大の理由、それは「未来のレースレギュレーションの策定」である。
現在、クラッチ操作を自動化しつつマニュアルの楽しさを残す「E-Clutch」は、ストリートにおいて支持を集めつつある。しかし、この技術がサーキットやレースの場に持ち込まれたとき、どのような影響を与えるのだろうか。 「電子制御でクラッチ操作を自動で行うシステムを搭載した車両は、マニュアル車と同じクラスで戦って公平なのか?」という、新しい技術ゆえのルール上の疑問が必ず持ち上がる。
ホンダ開発チームの本音の狙いは、まさにここにある。 彼らは今回の実践データをもとに、将来的にE-Clutchテクノロジーを使ってレースに挑戦したいと願う一般の「プライベーター(個人参戦者)」たちが、不当に排除されることなく公平に戦えるための技術的な基準(レギュレーション)を確立するための基礎データを収集しようとしているのだ。
「新しい技術だから一律禁止」にするのではなく、「新しい技術だからこそ、誰もが公平に楽しめるルールを先回りして作る」。この先見性と泥臭いデータ収集の姿勢こそが、ホンダ開発陣の技術に対する誠実さであり、今回の参戦に隠された真の狙いなのだ。
ライダーの「脳内メモリ」を100%走りに集中させる。E-Clutchがサーキットで剥く牙
一般的に「E-Clutch」は、エンストの心配をなくし、街乗りでの疲労を低減するための「イージードナビ用」の装備だと思われがちだ。しかし、サーキットという1000分の1秒を争う極限状態において、このシステムは全く異なる「戦闘力」を発揮する。
レース中、ライダーの脳内は常にフル稼働している。ライン取り、ブレーキング、タイヤのグリップ限界の察知、ライバルとの位置関係、そして「完璧なタイミングでのクラッチ操作とシフトチェンジ」。 E-Clutchは、この複雑なタスクの中から「クラッチレバーを握る・離す」というフィジカルおよびメンタルの負担を完全に自動で引き受けてくれる。
クラッチ操作から解放されたライダーは、その分の脳内メモリを100%、ブレーキングの限界やコーナリングのライン取り、スロットルの開閉だけに集中させることができる。 結果として、走りの引き出しが広がり、より高次元での「バイクを操る楽しさ」を体現できるようになる。ストリートでの快適装備が、サーキットでは「ライダーの能力を極限まで引き出すための新たな武器」へと昇華するのだ。
「バイクの楽しみ方を広げる」ホンダが2026年秋に証明する未来
今回の実証参戦は、2026年9月にHSR九州で開催される「2026 鉄馬 with TSK」でお披露目となる。最新のE-Clutchを引っ提げて復活したCB400SFが、サーキットで咆哮する。この取り組み自体が、ホンダが掲げる「ライダーがそれぞれのスタイルでバイクの多様な魅力を楽しめる世界を広げる」という強い意志の表れだ。
ただ新型車を売るだけでなく、名車の遺産を活かしながら、最新の技術をサーキットという極限の地で磨き、さらにその先のルール作りまでデザインしていく。 2026年秋、HSR九州のストレートを駆け抜ける「E-Clutch搭載CB400SF」の姿は、次のモータースポーツのあり方を考える新たな一歩となる。その咆哮に、耳を傾けてみよう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(CB400SF/SB)
CB400 SUPER FOUR E-Clutchの反応 まずは普通自動二輪免許で乗れるCB400 SUPER FOUR E-Clutchから。跨った方の多くが口にしていたのは写真で見るよりも実車は「[…]
新型『CB400 SUPER FOUR E-Clutch』のすべてが明らかに!? “すべての瞬間が、楽しさにつながる”を開発コンセプトに掲げ、扱いやすさ・安心感・上質さ・走行性能といったCBシリーズの[…]
直4の咆哮。心震わす吸排気サウンド 「エンジンを回した瞬間、鳥肌が立った」。そう言いたくなるほど、両車のサウンドチューニングは秀逸だ。 新設計の399cc水冷直列4気筒エンジンは、最高出力58PSを1[…]
58馬力を絞り出す新設計の直列4気筒エンジン 「もう一度、あの甲高い直4サウンドを響かせて走りたい」。そんなライダーの切なる願いに、ホンダの技術陣は新設計の399ccエンジンで完璧に応えてみせた。 最[…]
【魅力1】新設計4気筒エンジンと「Eクラッチ」の融合によるイージースポーツ 「あの甲高いエキゾーストノートをもう一度味わいたい」。そんなライダーたちの熱い想いに応えるように、ホンダは完全新規の直列4気[…]
最新の関連記事(レース)
全クラス制覇から常勝への軌跡 創業者の本田宗一郎が1954年にマン島TTレースに出場宣言。59年に125クラスに初参戦し、6位・7位・8位に入る快挙を成し遂げ、ここから世界GPに本格参戦。なんと196[…]
1ヶ月早い開催が招いた雨のドラマ。絶対王者HRCと迫るYAMAHA、BMWの表彰台争い 2026年の鈴鹿8耐(第47回大会)は、例年より約1ヶ月早い「7月上旬」という超異例のスケジュールで幕を開けた。[…]
不等間隔爆発とスロットルシンクロが生み出す極限のリニアトルク YZF-R1は、1998年に欧州仕様の販売を開始して以来、スーパースポーツカテゴリーを牽引してきたヤマハモーターサイクルのフラッグシップモ[…]
パンアメリカでのレースは今回が初参戦。それでも決勝では見事なスタートを決め、ホールショットを奪った。 ハーレーダビッドソン高崎の経営母体であるヤナセオート。そのスタッフである“抹茶いぬ”こと越山大地さ[…]
アラゴンGPで圧倒的な強さを見せて完全復活を果たしたマルク・マルケス選手。自身の好調さを証明しつつも、実は怪我で離脱中の小椋藍を密かにライバル視している。完全復活を遂げた王者が、若き挑戦者との直接対決[…]
人気記事ランキング(全体)
シリーズ累計5700万部突破!猫猫の「毒と薬」の魔力が現代の読者を惹きつける 架空の中華風帝国「茘(リー)」を舞台に、後宮の薬師・猫猫(マオマオ)が、美形の宦官・壬氏(ジンシ)に翻弄されつつ、王宮の事[…]
世界初、独自機構を貫いたキャブレター式ターボの誕生 1981年の東京モーターショーに、XJ650をベースとしたターボ車が出展された。会場には電子制御式フューエルインジェクションとキャブレターの2種類が[…]
R1のDNAとYCC-Tを凝縮。クラス最軽量149kgを掲げたYZF-R2の全貌 インドで世界初公開されたヤマハの新型YZF-R2は、急成長を続ける200ccプレミアムスーパースポーツセグメントに向け[…]
ヘリコプター用「フラット6」をリヤに積む狂気 まず度肝を抜かれるのが、圧倒的な低重心とハイパワーを求めて、開発者プレストン・タッカーが選んだヘリコプター用・空冷水平対向6気筒エンジン。タッカーはこれを[…]
先代比14kg軽量化の177kgを達成したハイパーモタードV2 SPの構造 新型ハイパーモタードV2 SPは、2005年のEICMAで発表されたプロトタイプから20年を経て再構築されたスーパーモタード[…]
最新の投稿記事(全体)
座面が小さいシートや、タンデムにも使えるゲルザブRSと同時装着で暑い日も快適な座り心地 猛暑のツーリングでシートがフライパン並みに熱くなり、尻が蒸れて集中力が切れた経験は誰にでもあるはず。「ゲルザブR[…]
レース由来の超軽量鍛造ホイールと専用コックピットがもたらす旋回性能 新型パニガーレV2 MM93およびパニガーレV2 FB63は、ベースモデルとなるパニガーレV2 Sの基本設計を受け継ぎつつ、サーキッ[…]
サビて固着したネジやナメて外せなくなったネジを簡単に外せる デイトナから発売されている「バイク用ショックドライバーセット(品番:95392)」は、錆びついて固着したボルトや、ネジ緩み止め剤が塗布された[…]
欧州の砂漠8000kmを走破した本物。ADX 250が体現する「リアルクロスオーバー」の骨格 SYM ADX 250は、車検のない日本の軽二輪クラス(126〜250cc)の税制・登録メリットに適合させ[…]
アッパーまでライムグリーンに染まったニューグラフィック VERSYS 650は、オンロード性能に主軸を置きつつ、多様な路面状況の変化にも対応できる走破性を備えたカワサキのミドルクラス・マルチパーパスだ[…]
- 1
- 2





































