
「ファンティック」というバイクをご存知だろうか? イタリア・トレヴィーゾで創業し、トライアルの世界では1980年代中盤にチャンピオンを数多く獲得した歴史あるオフロードブランドだ。今回はそんなファンティックの魅力をモータリスト代表の野口さんに聞いてみた!
●文&写真:モータリスト ●まとめ:高橋祐介 ●BRAND POST提供:MOTORISTS
「ファンティック」ブランドの歴史と出会い
1985年TRIAL WORLD CHAMPIONSHIP | FANTIC 301
まず、ファンティックとは、どんな歴史のあるバイクブランドなのでしょうか?
「ファンティック、というブランドを古くからご存じの方の多くが、思い出すのはトライアル・モデルです。1980年代中盤にティエリー=ミショーというライダーを抱えて、ファンティックは世界選手権トライアルで3回、チャンピオンを獲得しています。85年、86年と88年です」
1986年TRIAL WORLD CHAMPIONSHIP| FANTIC 301Progress2
さらに野口代表はファンテックとの出会いを語ってくれた。
「当時、私自身はトライアルはほぼやったことがないに近い状態でしたが、仕事をしていたオートバイ専門誌の企画で、読者と一緒に素人がトライアルに挑戦する、という企画を立てて遊ばせていただいたことがあります。88年、鈴鹿でケビン=シュワンツがペプシ・カラーのGPマシンで優勝したその日、僕は日光にいてトライアルをやっていました。テレビを見ながらだったので鮮明に覚えています。その年のトライアルの世界チャンピオンが、ファンティックのミショーだったのです」
昔は、ロードレースをメインに走られていたとお聞きしてましたが、そこからのトライアルに挑戦とは、どのような心境でしたか?
「当時はバイクブームといっていいくらい猫も杓子もバイクに乗っていまして、僕自身もまだロードレースの全日本で走るのをやめたばかりで一応まだまだやれる気満々でしたから、違うカテゴリーの競技にも興味津々」
「オートバイの仕事をさせていただいていましたから、あらゆるジャンルをかじっていましたので、トライアルにもチャレンジできる、という話にすぐ飛びついたものでした。でも素人とはいっても一度くらいは乗っておこうかな、とHMS=ホンダモーターサイクリストスクールってやつに行ってトライアルバイク乗ってみたりもしたものです」
1988年TRIAL WORLD CHAMPIONSHIP| FANTIC 303Siries2
「今思えば、ロードレース参戦時にオフロード始めていればもうちょっとうまかったろうに……。でも当時は(見ることは好きでスーパークロスも行きましたが)土の上走るとか一ミリも興味なかったのです。トライアルは、スタジアムトライアルってのを見ていて、そっちをやってみたかったのでチャレンジしたのですね。身の程知らずといいます」
トライアルで培われたファンティックの機能美
当時のファンティックは、他社とマシンの何が違ったのでしょうか?
「ファンティックは、前後にディスクブレーキを装着したトライアルマシンを市販した最初のメーカー(らしい)です。モノショックを搭載したのも早く、ヤマハのTY250Rが83年に初めてリンク式モノクロスを搭載して発売されたのに続くモデルだった(はず)。ヤマハは前後ドラムブレーキですから、前後ディスクにしたファンティックはライダーだけではなくマシンの飛躍的な進歩もあって、世界選手権を席巻したのです。日本でも相当な台数のファンティックが輸入されたと聞いています」
「ちなみに、モータリスト・ファクトリーにもミショーがチャンピオンをとった当時のトライアル・モデルが今も実働状態で展示されています。僕個人も自宅に1台置いてありますし、実際、僕レベルなら今乗ってもそこそこ走ってくれるので遊びトライアルには十分です。そのくらい、先進的なマシンを作り上げたのがファンティックでした。ぜひ一度、モータリスト・ファクトリーにご覧になりにいらして下さい」
市販車で最先端の技術を盛り込んだファンティックだからこそ、人気があったのですね!
「当時のファンティックをご存じの方にとっては、圧倒的に高性能なマシンを作れるメーカー、のイメージがあった(らいいな)はずです。その後紆余曲折あってファンティックはつぶれかかっては再生を2度ほど繰り返し、今のオーナーが2014年に買い取ってちょっとづつブラッシュアップさせてきました。最初は、評価の高かった50㏄のエンデューロモデルから。そして、電動アシストスポーツ自転車をいち早く送り出し、バッテリーをフレームに収めた全く新しいデザインのeBikeをヒットさせたのです」
2014年Esposizione Internazionale Ciclo Motociclo e Accessori| FANTI Ccaballero50/125/200
ストリートモデル「キャバレロ」との出会い
「そんなファンティックとの出会いは、トライアルがきっかけです。その後、国内のエンデューロレースの会場で、たまたま知っていたライダーがファンティックに乗っていたのをお手伝いする機会が何度かありました。でもまぁ、それは別に困っている人を助けた、くらいの話です。でも、かわいらしいデザインのバイクを作るメーカーなんだな、くらいには思っていました。でもそれっきり。多分数えるほどの台数しかなかったと思いますし、一般ユーザーが広く乗っているイメージもありませんでした」
次にファンティックのバイクを目にしたのはいつ頃でしたか?
「2017年、キャバレロと出会ってしまったのです。ミラノで開催されたEICMA(国際モーターサイクルショー)でのことでした。そのときはでもまだ、お、かっこいいバイクあるじゃんかー、あ、ファンティックなんだー、そんなバイクも作ってたんだー、くらいでした」
「そのEICMAでは僕は結構忙しくて、復活したランブレッタと打ち合わせしたり、ちょっと前に辞めたオーストリアの会社のOB会に呼ばれて出たり、その会社のブースに招かれてみたり、まだスペインにあったGASGASと話したりと、やること山積だったのです。でも、キャバレロの美しい姿は鮮明に焼き付いていました。ただ、出来の良しあしは置いといても、いろんなメーカーが出てきては消えるEICMAですから、いつ潰れるかわかんないけどねー、くらいの感覚で見ていたのも正直なところです」
2017年Esposizione Internazionale Ciclo Motociclo e Accessori| FANTIC CABALLERO Scrambler500
「その翌年。EICMAのファンティックのブースは飛躍的に大きくなっていました。といっても前年のGASGASくらいでしたが。この年、GASGASはオーストリアに食い荒らされて違うメーカーになってしまいました。僕は縁があってGASGASに乗ったり売ったりとお手伝いをしていたのですが、全部横取りされた感じです。資本の論理。仕方ありません。売るものないなー、という僕の目の前に、あの美しいイタリアンレッドのタンクが現れたのです。ファンティック・キャバレロ。去年も見た。でももっと美しくなって、大きなブースで、誇らしげに展示されていました」
ここでキャバレロと出会うのですね!
「市販目前に仕上がっていたのがこの時でした。ファンティックが本格的にストリートに戻ることを高らかに宣言し、キャバレロをシリーズ化してデビューさせたのです。イタリアのショーでイタリアのメーカーが復活してこれからやるぜ!と宣言しているのですからブースはごった返していました」
「僕はその人の波の中で、吸い寄せられるようにこのモデルに見惚れていました。スクランブラーって中途半端なようですが、僕はバイクの原点じゃないかと思っていたのです。それが本当に美しく形になって現代によみがえったものが、今目の前にある。これを僕が売らないでだれが売るんだろう、とさえ思いました。だから、迷わずに受付に人の波を押しのけて近づき、話しかけ、日本で俺に売らせろ、と交渉したのです」
2018年Esposizione Internazionale Ciclo Motociclo e Accessori| FANTIC FANTIC CABALLERO Rally500&Flat Track500
ファンティック側と野口代表とはどのような感じで交渉が始まったのですか?
「ファンティックは小さな会社ですから、まだ出来上がったばかりのキャバレロをヨーロッパの外に出すまでは考えていませんでした。売れたらうれしいけどまあボーナスみたいなもんだ、くらいの感じですね。『そうか日本か、インターナショナルセールスマネージャーがいるから紹介するよ』と言われて、いかにもイタリアンなイケオジと握手し、話が始まります」
「すると、『日本は代理店はないんだけど、やりたいってやつは複数いるんだ』『今年のミラノが終わってからディーラーと契約しに日本に行くから、その時に会おう』というお話。『何人かと会うからお前もまぁ精々がんばれ、決めるのは俺だ』って感じでした」
「いやいやいや、いねーから、あんたと話している日本人なんて!少なくともここミラノには、人の波に突っ込んできて話している奴はいない。それは間違いない。俺は見ていた。でもまぁ、そんなこと言ってもしょうがないのでこっちもめっちゃ余裕かましまして、『おう、でもまあオレ以上のディストリビューターはいないからお前は結局俺と話をすることになるよ、じゃあ日本で会おうぜ』という感じで別れました」
ひとめぼれしたスクランブラースタイル
最後に、ファンテックで野口代表が大切にしているコトはなんでしょうか?
「大切なのは、ひとめぼれしたデザインです。僕は、キャバレロのデザインが大好きです。今も全く飽きていません。この美しいデザインを生み出す力がある、ファンティックが大好きです。今、そのバイクに惚れて、会社が好きになって、自分から飛び込んで行ってこのバイクを売らせろっていって扱い続けているインポーターっていったいいるんですかね。でも僕は間違いなくそういう人間です。良さをとことん知り、惚れぬいたからこそ、今も売り続けています。自分でも乗りまくっています。そして、こいつを作り続け、送り出して売るファンティックが、たまらなく面白い会社なんです」
2019年Esposizione Internazionale Ciclo Motociclo e Accessori| FANTIC CABALLERO Scrambler500 50th Anniversary
「僕たちはファンティックを輸入して販売しているわけですが、同時にファンティックに市場からの声を届け、商品を改良するネタを作り続け、時には新商品の開発に貢献できるように様々なデータを提供し、プロトタイプを検証し、だれよりもファンティックをよく知って、日本で紹介させていただいています」
「ファンティックは、そんな僕たちを高く評価してくれ、僕たちのようなちっぽけな会社でも、日本の代表として、日本の4台メーカーがある市場で頑張る橋頭保(キョウトホ:事業進出や市場参入の足掛かりとなる拠点や、活動の基盤となる場所)として、ともに仕事をしていこう、と言ってくれています」
独自路線を貫くファンティックを乗って楽しんでほしい!
最後にこの記事を見ている方々に向けて、ひとことお願いします!
「ファンティックは小さな会社です。年間1万台くらいの能力でいっぱいいっぱい。そこを無理に広げようともしていません。だからと言って超高級車を出してお客さまを囲い込もうともしていません。庶民的な楽しくリーズナブルなオートバイを、そのスタイルに惚れた人やバイクが大好きでたまらないユーザーたちを大切にし喜ばせることに本気の、イタリア純血種の貴重な総合ブランドとして、これからも地道にキャバレロを作り続けたい、と願っているメーカーなのです。どうですか。キャバレロ、乗ってみたくなりませんか?」
FANTIC CABALLERO Scrambler700
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