海外ビルダーの振り切りっぷりを見よ!

【ホットロッドショー】ロイヤルエンフィールド「ショットガン650」が大化け! 昨季アワード3冠のマシンも登壇

【ホットロッドショー】ロイヤルエンフィールド「ショットガン650」が大化け! 昨季アワード3冠のマシンも登壇

日本のモーター&カスタムカルチャーの最前線が集結する横浜ホットロッドカスタムショーが今年も12月7日に開催され、いつにもましてホットな盛り上がりを見せてくれた。とりわけ、バイクのカスタムは年を追うごとに台数を増すばかりか、その完成度、存在感はとどまるところ知らぬ勢いだ。中でも、目を奪われたのはロイヤルエンフィールドのカスタムマシン。世界初公開の2台を含め、総勢5台ものマシンが登場し、もはやカスタムカルチャーのトップランナーと呼ぶにふさわしい。ここでは、海外ビルダーの作品に加え、昨年のアワード3冠を受賞したマシンをご紹介しよう。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s

ザ・キングスマン (Kingston Custom)──全長4メートルのストリームライナーに変身したショットガン650

キングスマンは2014年に作られたスパイ映画で、ドイツのビルダーのキングストン・カスタムはその世界観をマシンづくりに反映している。ロイヤルエンフィールドのミドルクラスネイキッド、ショットガン650をベースに選んだとはいえ、もはや原型は見る影もない。ストリームライナーと呼ばれる50年代の流線形をオマージュしたフルカウルが架装されたマシンは、全長4メートルに及んでいる。

キングストン・カスタムが得意とするフルスクラッチでありながら、ヘッドライトやポップアップメーター、あるいは空冷エンジンのヘッドをチラ見せするなどして、ロイヤルエンフィールドであることを静かに主張する。前輪を覆うスパッツには映画で使われたキングスマンのブランドロゴが配置されるなど、遊び心も抜かりない。

ネイキッドモデルのロイヤルエンフィールド・ショットガン650がベースとはにわかには信じがたいキングストン・カスタムの「ザ・キングスマン」

遊び心といえば、リヤテールには隠されたトランクスペースが用意されており、ピクニックアイテムが収容されるという余裕もまた一流のカスタムビルダーらしい心配りといえよう。無論、スタイルだけでなく実際に走行可能に仕上げられているのも驚くべきポイント。フラットに近い前傾ポジションは、映画に出てきたキングスマンというジェントルスパイにふさわしく優美でエキサイティングな走りをもたらしてくれること請け合いだ。

フロントのスパッツには映画「キングスマン」をほうふつさせるブランドロゴ。50~60年代のレトロフューチャーをイメージさせてくれるもの。

リヤタイヤの後ろには秘密のトランクスペースが設けられ、ピクニックアイテムを収容するという洒落たカスタムが施された。

シート後部のタンクキャップ。どこもかしこもディテールは精緻で抜かりなく、世界的ビルダーのセンスと底力を見せつけている。

細身のストリームライナーというコンセプトを貫いた結果、リヤエンドは三日月状のプロファイル、ロケットタイプのテールランプを採用している。

キャリバー・ロイヤル(ROUGH CRAFTS)──アルミとカーボンで別格の美しさを作り上げた逸品

バイクカスタムに取り入れるアルミ素材やカーボン使いの巧みさでは右に出るものがいないとされるのが、タイに本拠を置くラフ・クラフツだ。数々のコンプリートカスタムをリリースするだけでなく、オリジナルパーツの販売もしており、機能性に基づいたセンスの良さは全世界から支持されているという。

そんな彼らもショットガン650の秘めたるポテンシャルに気づき、横浜ホットロッドカスタムショーに持ち込んだのが、漆黒のスピードマシン「キャリバー・ロイヤル」だ。フロントフェンダーと一体化したカウルは彼らのアイデンティティともいえる造形で、精緻なカーボンテクスチャー、ボディとの一体感などアイコニックというだけではすまされない。

タイのラフ・クラフツはアルミやカーボンのオリジナルパーツ販売でも名の知られたビルダー。今回のキャリバー・ロイヤルでも得意の素材使いで注目を浴びていた。

また、カーボンとアルミのコラボによるタンクの仕上がりもため息が漏れるほどの完成度。ショットガン650の躍動感あふれるスタイルを継承しつつ、カスタムの神髄すら感じさせる逸品に違いない。さらに、アルミ削り出しのスイングアームも複雑な曲線を描くもので、強度一点張りでなさそうなデザインが目を引く。SCプロジェクトのマフラーにつながるワンオフのマニホールドの美しさも別格。セパハン&シングルシーター化というカスタムの常道を進みつつ、ここまでのレベルまで引き上げているのは見事としか言いようがない。

独特の形状を見せるスイングアームもオリジナルのアルミ削り出しパーツ。ホイールもカーボン製を装着していることにもご注目。

ラフ・クラフツらしいカーボン&アルミのタンク。形状といい、カーボンの地肌を活かしたブラック塗装といい、カスタム好きなら嘆息ものの出来栄えだ。

ベースはショットガン650ながら、シングルシーターへとカスタムされ、上質そうなレザーシート、そしてシャープなシートカウルが装備されている。

空冷パラツインからまっすぐに延ばされたエキゾーストパイプが勇ましい。マフラーはSC Projectの製品が選ばれている。

サムライ(SURESHOT)──海外でも活躍してきたサムライの凱旋帰国

国内カスタムシーンのトップランナー、シュアショットがロイヤルエンフィールド・ショットガン650をベースとしたフルカスタムマシン「サムライ」を初公開したのは昨年のこと。だが、その後にサムライは海を渡りグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどのイベントに参加。その仕上がりを見せるだけでなく、実際に走る雄姿を見せつけており、今回の出品はいわば凱旋展示といったところ。

軽くてよく走りそうなフレームから、特徴的なスイングアーム、そしてフロントのインボードディスクなどシュアショットの仕事は枚挙にいとまがない。シート下に配置されたモノショックの見せ方など、工夫やオリジナリティはもはや世界レベルと言って差し支えないだろう。

日本を代表するカスタムビルダー、シュアショットが「サムライ」を発表したのは2024年のこと。当時はアワード3冠という快挙を成し遂げた。

また、空冷パラツインエンジンはS&Sのキットを使用して865ccまで排気量をアップ。そのパフォーマンスはまさにサムライスピリットに満ちたもので、ヨーロッパのメディアも大々的に取り上げたほど。なるほど、昨年の横浜ホットロッドカスタムショーでベスト・モーターサイクル・ヨーロピアンをはじめとした3つのアワードを獲得するわけだ。

小ぶりなカウルは全体のスタイルとあいまって、コンパクトで軽量なレーサーといった印象を引き立てる。

切り欠いたようなシート形状がモノショックの存在感を際立たせる。もちろん、実走可能であり、海外でもその走りに注目が集まったという。

アルミ削り出しのインボードディスクブレーキ。精度や仕上がりは写真では伝わらないかもしれないが、表面の美しさ、切削の送りなど素晴らしいの一言に尽きる。

ワンオフのスイングアームもまた削り出したもので、強度と軽さに優れていることが一目瞭然だ。

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