
ホンダは、イタリア・ミラノで開催中のEICMA 2025において、モーターサイクルで世界初となる電子制御コンプレッサーを搭載したプロトタイプモデルを発表した。その名も「V3R 900 E-Compressor Prototype」は、低回転域から高レスポンスのトルクを発揮し、1200ccクラスの動力性能を提供するという。
●文ヤングマシン編集部:(ヨ)
“レールのないジェットコースター”のコンセプトはまさに二輪車のFUNを体現
ホンダは、昨年のEICMA 2024で世界初公開したV型3気筒コンセプトモデルに続き、「V3R 900 E-Compressor Prototype」(以下、V3Rプロト))と名付けたモデルを本年のEICMA 2025で初お披露目した。
注目したいのは車名に“プロトタイプ”と付くことで、これは市販車を前提としたものということを明示している。もちろん車名の頭には、以前に商標出願されていた「V3R」が付き、V型2気筒のVTR、V型4気筒のVFRの間に位置するV型3気筒であることを誇示。排気量は車名からも明らかなとおり900ccだ。
ちなみにV3Rの名は、“V Three R”の頭文字を取ると2気筒と同じVTRになることから“3”に置き換えたのだろう。
V3Rプロトは、開発チームの「顧客の期待を超える魅力的な製品を提供する」という目標から生まれ、ホンダ独自の、かつ前例のない技術を通じて新しい価値を創造するモデルとして開発が進められている。これはホンダの2030年ビジョンに掲げられた「自由で楽しいモビリティの喜び(Joy of free and fun mobility)」の実現を目標としている。
開発コンセプトは「レールのないジェットコースター(Non-Rail Roller Coaster)」とし、このモデルが目指すライディング体験を端的に表現しているが、最新技術と長年蓄積された開発ノウハウを融合させ、扱いやすさとエキサイト面とという相反する特性を両立。
これまでにない操る楽しさ、感動、所有する喜びを提供し、ホンダの継続的な挑戦における新たなマイルストーンになることを目指している。
世界初の電子制御コンプレッサーを搭載
V3Rプロトは、モーターサイクル用としては世界初となる電子制御コンプレッサーを採用。これによりエンジンブーストの緻密な制御が可能となり、低回転域からハイレスポンスなトルクを提供する。その性能は、900ccの排気量ながら1200ccクラスを実現しているといい、それでいてダウンサイジングターボのように環境効率も向上している。
写真を見てわかるのは、前2気筒/後1気筒の構成で90度よりもやや狭いVバンク角を採用していることと、それによりエンジン前後長を短くできたことで通常の位置にラジエターを配置しているということ。スイングアームはかなり長いが、エンジン重量は前方に寄り過ぎておらず、気持ちのいい運動性と、ストイックさを強いない寛容さが想像できる。
エンジンの下回りには前後シリンダーから伸びた3本のエキゾーストパイプが集合する。
ヘッドはDOHCであるように見え(あるいはユニカムSOHC?)、ダウンドラフト吸気としながら燃料タンク下にコンパクトなE-コンプレッサーユニットを収めている。シリンダー高などの配置を見るとそこそこショートストローク寄りだろうか。また、電子制御スロットルを採用していることもわかる。
クラッチカバーなどの構成を見る限り、重慶ショーで発表されたCB500スーパーフォアのようにEクラッチ搭載を織り込んだ設計ではないようだ(とはいえクラッチカバーに増設する形なら搭載可能だろう)。
すでに多くの部品が鋳物で出来ているように見えるので、市販化はかなり近い状態と言えそうだ。
スリムなネイキッドのシルエット、各所にホンダらしい技術を配置
トレリスフレームはエンジンを上から吊り下げ、エンジンも剛性部材として使うダイヤモンドタイプだが、スイングアームピボットがシートフレームから伸び、スイングアームの内側に配置されるなど、柔軟な剛性バランスになっていると予想。スイングアーム自体はホンダ得意のプロアームとして大型サイレンサーを内側に追い込み、スリムな車体構成に貢献する。
前後タイヤはミシュランのパワーGP2で前120/70ZR17・後200/55ZR17を履くが、サイズはともかく銘柄については市販車で同じものになるとも言い切れない……?
前後ブレーキにはウェーブディスクを採用しているが、これはショーモデルとしての見栄えのために採用している可能性が高い。サスペンションはフロントがSHOWA製SFF-BP、ユニットプロリンク式と思われるリヤはショックユニットが隠れていてよく見えない。
ステップまわりではクイックシフターの装備や、ステッププレートがスイングアームピボットと共締めになっているあたりがわかる。
このほか、シート下からリヤサスペンションのアッパーマウント(スイングアーム)方向に膨らみが見えるがここにバッテリーなどの補器類を収納していると思われる。
タンクエンブレムには新しい「Honda Flagship WING」が初採用された。このデザインは来年から最上位層に位置するモデルに順次導入予定だ。このほかデザインでは、左右非対称のフェアリングに設けられた吸気ダクトの大きさが過給エンジンであることを想起させる。
早く迷彩柄が外れた姿を拝んでみたい!
Honda V3R 900 E-Compressor Prototype
【動画2本】2026 V3R 900 E-Compressor Prototype | Honda Motorcycles
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
過渡期に生まれながらもマシン全体の完成度は抜群 ’59年にCB92を発売して以来、各時代の旗艦を含めたロードスポーツの多くに、ホンダはCBという車名を使用してきた。そして昨今では、ネイキッド:CB、カ[…]
Nプロジェクトを彷彿とさせる魅力的なデザイン スクエアX125最大の魅力は、その名の通り「スクエア(四角)」を体現した、垂直の箱型ボディだ。空気抵抗を減らすカウルを持つことが主流の現代のスクーターデザ[…]
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
戦闘力を高めるヘッドギア「ダインギア ヘッドアーマー」 クロスカブ110の個性をさらに際立たせ、カスタムの方向性を決定づけるほどの高いデザイン性を持つパーツが登場した。それがダイバディプロダクションが[…]
ハイエンドユーザーに向けたスーパーフラッグシップは何と乗りやすく調教済み! 1980年代に入ると、ホンダが切り札としていたV型4気筒は世界のレースで圧倒的な強みを発揮、それまでの主流だった並列(インラ[…]
最新の関連記事(モーターサイクルショー/モーターショー)
大型バイクのカスタムはクルーザーからアドベンチャーまで 台湾から世界的なカスタムビルダーも登場したこともあって、カスタムエリアでは車種を問わずさまざまな仕様が展開されていた。「SPEED&CRAFTS[…]
四輪のBMWと同様、モーターサイクルも高性能エンジン車とEVの二本立てで未来へ駆ける!! 10月30日(木)から11月9日の11日間、東京ビッグサイトに101万人にも及ぶ来場者が集り大盛況のうちに閉幕[…]
【ハイパーモタードV2/SP】史上最高のパワーと速さを身につけた新型ハイパーモタード 新型ハイパーモタードは、先代950からフルモデルチェンジがなされ、最新スペックのV2エンジン、そして新設計のモノコ[…]
「伝統と革新」をテーマに、カワサキの原点たるモデルと水素エンジンバイクを展示 10月30日(木)から11月9日の会期中に、101万にも及ぶ来場者を記録して閉幕した「ジャパンモビリティショー2025」。[…]
世界のバイクメーカーをビビらせた初のアドベンチャーモデル オールドファンならご存じのBSAはかつてイギリスで旋風を巻き起こしたバイクメーカー。ですが、1973年には一旦その幕を下ろし、2016年にイン[…]
人気記事ランキング(全体)
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
6/30:スズキの謎ティーザー、正体判明! スズキが公開した謎のティーザー、その正体が遂に判明したことを報じたのは6月30日のこと。ビリヤードの8番玉を写した予告画像は、やはりヤングマシンが以前からス[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
最新の投稿記事(全体)
過渡期に生まれながらもマシン全体の完成度は抜群 ’59年にCB92を発売して以来、各時代の旗艦を含めたロードスポーツの多くに、ホンダはCBという車名を使用してきた。そして昨今では、ネイキッド:CB、カ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
13台しか作られなかった964モデルのうちの1台 ポルシェのカスタムと聞いて、世代の違いで思い浮かべるファクトリーが変わってくるかと思います。ベテラン勢ならば、クレーマー、ルーフ、あるいはDPやアンデ[…]
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化! 1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。 なぜ衝撃的だったかとい[…]
- 1
- 2


































































