
3Dプリンターを使って、ドラムブレーキが「スパッ!」と「気持ちよく」戻るようになる専用のスプリングを作ってみたレポートです。すっかり見なくなってしまったドラムブレーキですが、されどどっこい生きているドラムブレーキ。長く快適に乗るためにも試行錯誤は続いているのです! マニアックな内容で申し訳ございません…。
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
バイクのドラムブレーキ「スパッ」と戻りますか?
ブレーキの操作性ってバイクに乗るときの「気分」に影響しますよね? みなさんのバイクのドラムブレーキ、レバーを離した時に気持ちよくスパッ!と戻りますでしょうか? 我が家のリトルカブのブレーキは・・・ 戻りませんでした。
これね~・・・。整備不良と言われればそれまでなのですが、どれもブレーキの内部を掃除しても、ドットをグリスアップしても、なんかイマイチなんですよ。構造的な限界なのか、それともまだまだメンテナンス不十分なのか?
何にせよ気持ちよくバイクに乗るためにも、ブレーキの操作性は(個人的には)とても重要だ・・・と、思うのですよ。
ブレーキがキモチヨクナイ・・・
スプリングを入れたらどうだろう?
「戻りが悪いならば、中間にスプリングを入れればヨシ!」
安直な発想ではありますが、ドラムブレーキのトルクロッドとワイヤーの間に入れるスプリングを探してみました。最初は簡単に見つかるだろうと高をくくっていたのですが、スプリングの外径と内径、テンションの強さ、そしてスプリングの全長と。すべての条件を満たすスプリングとなるとそう簡単に見つからないのです。
ホームセンターも回ってみたし、デッドストックの部品箱も全部ひっくり返してチェックしてみましたが見つからない。いっそのことスプリング工場にお願いしてワンオフでもと思ったのですが、予算的に難しいんですよね~(かなり高価になるそうです)。
そうなったらもうアレしかない。そう、文明の利器「3Dプリンター」だっ!
3Dプリンターでスプリングは作れるのか?
作ってみました。3Dプリンターで、スプリング。そしたら・・・意外にもあっさり作ることができました。
最初は、いわゆる普通のコイル状のバネをモデリングして出力してみたんです。そしたら思ったよりちゃんと動いてくれて、「これは幸先いいぞ」と思ったんですよね。
びゅいーんと伸びるし
バネらしくビヨンビヨン動くし
・・・が、しかし! これを実用的なバネにしようとすると急に難しくなってしまいました。なにせ“バネ”なので、サイズを大きくして高さを出そうとすると、プリント中に動いちゃって全然うまくいかない。造形中にグラグラしてまともに仕上がらないんです。だって、バネだもの。
柔軟性が身上ですからして、高くなればなるほどより動いちゃう。溶かした樹脂を積層していく3Dプリンターでは作れないんですよね。当然ですが。
じゃあ強度を上げて印刷できるようにすると・・・今度は硬すぎて、もはやスプリングとは呼べない何かになってしまう。
仮に「柱」を付けて積層するのもダメ。横方向に寝かせて印刷する案もダメ。双方向のスパイラル形状にしたり、いろいろ試してみたんですが、どんどん複雑になってきて意味不明な形状にになってきたので、その路線は白紙撤回することに。そんなときに、ふと思いついたのがコレです。
真横から見るとこんな形状
CAD画面ではこういう形状
とりあえず試しに出力してみたのですが・・・ちゃんとバネになってるんですよ、これ!!!
めっちゃ縮むし弾力性もあって、くるっと反転しちゃうぐらいの反発力! 折れる気配もないし、疲労断裂の気配もなし。
手で縮めてパッと離すと、かなり豪快に飛び上がるぐらいの元気っぷりです。
カタチも強さも自由自在!の、スプリング爆誕
コレ、何がすごいって、何型形状のピッチを変えたり厚みを変えたりRを変えることで、ウイングの幅も長さも強度も強さも自由自在なのです。ふわふわにもできるし、指じゃ縮められないぐらいの強度も簡単に作れます。これなら行けるかもってことでドラムブレーキ用に設計したのがこちら。
超便利なスプリングなれど未だ名称不明ナリ
すごい。最高。実際に取り付けてみたのですがその効果は絶大でした!
いや、別のところ。1個目はあまりにもテンションが強すぎて使いづらかったんですが、ここから3ミリほど長さを縮めたらまさにベストフィット!(こんな微調整ができるのも3Dプリンターならではですよね)
だけど1つ問題があるんです。このスプリング、名称がまだありません。名なしです。
波バネ? スラロームスプリング? ワカメばね? ・・・なんでもいいや(笑)名前、募集中です!
3Dプリンターというアイテムの登場で、以前は作れなかったものが作れたり、こんなのがあったらいいな~と思っていたものが実際にカタチになるのはなんとも面白いです。こんなカンジの「小細工」が好きな皆様はぜひとも3Dプリンターにチャレンジしてみてください~!
3Dプリンターでスプリングを作ってみたら予想以上にスプリングになってた
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
お待たせしました経過報告です 前回のラバゲイン記事、おかげさまで大反響をいただきました。ありがとうございます! そして同時に、「続編が知りたい!」「その後どうなったの?」「どれぐらい持つの?」「いつま[…]
バイクいじり全般で使い勝手の良いスタンダードサイズ 自社内の多段鍛造設備で同じブランク材から鍛造するため、スタンダートサイズの全長は6角/12角/サーフェイスとも開口部5.5〜13mmは全長26mm、[…]
バイク置き場を有効活用できる。掛けてから移動できるリアスタンド バイクとの接点は、スイングアーム下から支える付属のL形アタッチメントか、スイングアームに取り付けたスプールに引っかける別売りのV形アダプ[…]
クロームメッキパーツのケアには専用ケミカルが有効 重厚な金属光沢が魅力的な装飾クロームメッキ。その被膜は0.02〜0.5㎛と極めて薄く、肉眼では見えない孔やクラックから浸入する水分によってクロム層の奥[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! クルマのボディケア用品の名門として語られることが多いシュアラスターですが、同社の本質は“洗車関係”にとどまりません。じつは、燃料がどう燃え、エンジンがどんな性格を[…]
最新の関連記事(カスタム&パーツ)
戦闘力を高めるヘッドギア「ダインギア ヘッドアーマー」 クロスカブ110の個性をさらに際立たせ、カスタムの方向性を決定づけるほどの高いデザイン性を持つパーツが登場した。それがダイバディプロダクションが[…]
ベースはスピード400、コンセプトは伝説の継承 バイパー400は、モダンクラシックロードスターであるスピード400の技術的基盤を出発点としつつ、新しくダイナミックでアグレッシブな方向性で再構築したとい[…]
ザ・キングスマン (Kingston Custom)──全長4メートルのストリームライナーに変身したショットガン650 キングスマンは2014年に作られたスパイ映画で、ドイツのビルダーのキングストン・[…]
色褪せないヘリテイジ、進化する「Z」の系譜 2017年秋の東京モーターショーで世界初公開されて以来、Z900RSは常にライダーの注目の的であり続けている。その最大の魅力は、往年の名車Z1/Z2への敬意[…]
THUNDERBIKE|Satin ミニフロアボード サンダーバイクのスタイリングと乗車時の快適性を両立したミニフロアボード。サンダーバイクはドイツのハーレーディーラーでありながら、さまざまなパーツを[…]
人気記事ランキング(全体)
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
6/30:スズキの謎ティーザー、正体判明! スズキが公開した謎のティーザー、その正体が遂に判明したことを報じたのは6月30日のこと。ビリヤードの8番玉を写した予告画像は、やはりヤングマシンが以前からス[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
最新の投稿記事(全体)
充実してきた普通二輪クラスの輸入モデル この記事で取り上げるのは、日本に本格上陸を果たす注目の輸入ネオクラシックモデルばかりだ。それが、中国のVツインクルーザー「ベンダ ナポレオンボブ250」、英国老[…]
テールデザインでトラディショナルから新世代を意識させる! 1992年に発表後、実に30年間という史上まれにみるロングセラーだったCB400 SUPER FOUR。 その経緯にはいくつか節目となるモデル[…]
「一時停止違反」に、なる!/ならない!の境界線は? 警察庁は、毎年の交通違反の取り締まり状況を公開しています。 最新となる「令和3年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等につい[…]
進化した単気筒TRエンジンは5%パワーアップの42psを発揮! トライアンフは、2026年モデルとして400シリーズの最新作×2を発表した。すでにインドで先行発表されていたカフェレーサースタイルの「ス[…]
6999ドルで入手したバイク「VOGER」、ハーレーよりでっかい箱で到着! タンクの中が明るいぞ! 彼女を乗せたらどこに足を置けばいいんだ? ヘッドカバーがプラスチック?! アメリカの人気YouTub[…]
- 1
- 2




















































