
2018年7月16日、ツインリンクもてぎの南コースにてホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催。20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックとなるバイク34台、自動車29台が動態走行を披露した。
●文:ヤングマシン編集部 ●取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン
「カブ」の名称は小熊を意味する英語から
カブF型は自転車の後輪に取り付ける6kgの補助エンジンで、ホンダのオートバイ躍進の基盤を築いた機種。「白いタンク、赤いエンジン」の愛称で親しまれ、デザインでも人気を博したという。販売方法もユニークで、書類や取り付け金具などを含めたエンジン一式を33×33×60cmの段ボールに箱に収めて自転車店に直販するという方法で、全国にホンダ販売網を築き上げるきっかけとなった。なお、愛称「カブ」の由来は、自由奔放に走りまわる小熊を意味する英語から来ているらしい。
【HONDA CUB F 1952年5月】カブF型のエンジンは、ピストンバルブ・横断掃気式の2ストローク単気筒で、シリンダーはアルミダイキャスト製のバレルに鋳鉄製のスリーブを圧入した進歩的な設計だった。■空冷2ストローク単気筒 50cc 1.0ps/3600rpm 車重6kg(自転車を除く)
ドリームE型よりフレンドリー
ホンダで初めて「CUB」を名乗ったのが‘52年のカブF型。とはいえそれはバイクではなく、自転車に装着する50ccの補助エンジンの名称だった。ホンダの代理店が全国に20店程度しかなかった時代、約5万軒の自転車店にダイレクトメールを送り、販売を募るなどの戦略で大ヒット。全国にホンダ販売網を築く契機にもなっている。
自転車同様にペダルを漕いでスタート。この時点ではクラッチを切っておき、速度が乗ったらクラッチを繋いで押し掛け的にエンジン始動。あとはレバー式のスロットルで回転数を調整しながら走る。変速機はない。最高速度は35km/hで、これが後に原付一種の制限速度を決める基準になったとされる。正味5分以下という、短くも貴重な試乗時間で得た印象は、見た目は完全に自転車なのに、エンジンをコントロールしながら走るその世界はバイクそのもの……ということ。大きめにレバーを開ければグッと押されるように加速するなど、意外なほどの力強さも見せる(後に60ccも追加された)。左カーブでは左側ペダルを持ち上げ、バンク角を確保するなどの操作は必要だが、カブF型は65年も前の乗り物とは思えないほど普通に走るのだ。
僕はやはり‘50年代初頭の製造で、ノンストップで箱根を登りきった逸話を持つホンダドリームE型に乗ったことがあるのだが、違和感のあるライポジに、各部から発する豪快なメカノイズ、シフトやブレーキ操作に対するギクシャク感など、その走りはいつ何時も気が抜けないスリリングなものだった。当時、かなりの高級車だったハズのドリーム号だが、同世代の乗り物として比較した場合、カブF型の方が格段にフレンドリーだったと感じる。 ※テスター:マツ(ヤングマシン)
ハンドル右側のスロットルレバーを操作してパワーをコントロール。タンク容量は2Lだ。この個体の自転車部は山口自転車工場製。後に「オートペット」などのバイクも手がけ、一時は4大メーカー同等の規模を誇った。
エンジンはケースとヘッドについている2ヵ所のブラケットで搭載する。ドリブンスプロケットは、後輪を外すことなく取り付けられるように分割されており、同じように分割されたリング状の金具でスポークを挟んで取り付けるようになっている。
【動画】ホンダ初のカブ、1952年製造のカブF型が走行
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