
愛車を選ぶ際、今までとは違うタイプに乗りたいなぁ……と思うこともあるだろう。そのとき、選んだ先に何が待っているのかを少し知っておくことで、より自分に合ったバイクを選べるかもしれない。オンロードモデルからアドベンチャーモデルに乗り換えたら、何がどうなるの?
●文:ヤングマシン編集部
見晴らしがいい!
オンロードバイクとアドベンチャー/オフロード/クロスオーバーなどの大きな違いのひとつは、走破性をよくするために車高が高くなっていること(最低地上高も同時に高まる)だろう。加えて、ステップの上に立って操縦すること“スタンディング”を想定した幅広のハンドルバーが高い位置にあるため、普通に着座しても上半身が直立したライディングポジションになる。
これらによってライダーの頭の位置が高くなり、さらにオンロードバイクほど顎を引いた姿勢にならないため、目線がかなり高くなったように感じるはず。クルマでいえば乗用車とSUVまたはクロカン車のような違いだ。
ミラーの位置も高くなる。乗用車より少し高いくらいか。
じゃあアドベンチャー/オフロード/クロスオーバーは全て同じようなポジションかというと、実はその中にも少しずつ差異がある。
アドベンチャーは上半身を直立させた傾向が最も強く、座って乗っても立って乗っても上半身の前傾は弱い。一般的にトレールモデルとかデュアルパーパスと呼ばれるものもハンドルバーはけっこう高めで、最近の大きなくくりではアドベンチャーにまとめられることもある。
クロスオーバーは、オフロードっぽい部分とオンロードっぽい部分を併せ持つハイブリッドタイプで、両方の要素がクロスオーバーしていることからそのような名で呼ばれる。基本的にアドベンチャーモデルに近いライディングポジションだが、オンロードモデルとベースを共有していることも多く、上半身は弱めの前傾に、また車高はそれほど高くない傾向だ。
オフロードはというと、競技専用車などの本格的なものになるほど車高は高くなり、シートを含む車体はスリムになる傾向。その中でも、スプリント寄りの出自のものはハンドルバーがやや低めで、やや上半身は前傾していて積極的なアクションがしやすいポジションに。耐久レース寄りになるとハンドルバーは高く手前に来ることになり、あまり大きなアクションをしなくてもいいようなリラックスしたポジションになる。細身のアドベンチャーモデルに近いとも言えるだろうか。
ついでに言うと、車高が高くて軽いバイクは横風の影響を受けやすくなるので、強風の際には少し注意が必要だ。
サスペンションが柔らかくて乗り心地がいい!
アドベンチャーモデルにもいろいろあるが、走破性を高めようとすればするほどサスペンションストローク/ホイールトラベルは長くなり、一般的なオンロードバイクが120mm前後であるのに対し、少なくとも150mm以上、中には250mm前後のモデルもある。
長いストロークを使って路面の凹凸や衝撃をいなすため、小さな入力でもよく動き、大きな入力では深くストロークすることで運動エネルギーを吸収してくれる。したがって、オフロード寄りのアドベンチャーモデルになるほどサスペンションはよく動き、印象としても「柔らかい!」「乗り心地がいい!」になる。
大型モデルなら2人乗りで荷物満載でも十分な乗り心地。
乗り心地はよくなるが、そのぶん動きも大きいため、ブレーキをかけるとつんのめるような気がしたりする。また、サスペンションの動きが大きいゆえに反力の発生までに時間もかかり、オンロードバイクに馴染んでいるとレスポンスが鈍い印象にもなりがちだ。
ちなみに、走破性を高めるためにはフロントホイールの大径化が有効で、これに長めのサスストロークが加わると、フロントタイヤが大回りするような印象になり、左右への切り返しなども緩慢に感じるかもしれない。これは路面の荒れやうねりをいなし、細かい凹凸などに左右されずに進んでいくために必要な特性なのだ。
地面が遠い!?
ここまででお気づきと思うが、アドベンチャー/オフロード/クロスオーバーモデルは総じて車高が高い。シート高もおのずと高くなり、地面との距離は開いていく。
とはいうものの、アドベンチャー系はスタンディングも考慮して細身に造られていることが多く、また前述のようにサスペンションもよく沈むため、単純に数値からイメージするよりは足着きに困らないで済むことも。足着き問題を解消するためには、縁石や路面のうねりをうまく使うといいかもしれない。
左のGSX-8Sはシート高810mm、右のVストローム800DEはシート高855mmだ。
ブレーキが利かないように感じる!?
オンロード寄りのクロスオーバーはオンロードバイクと変わらないブレーキを備えていることもあるが、オフロード成分が強まるほどに、ブレーキは絶対制動力よりもコントロール性を重視したものに変わっていく。
ダート路面でいきなり強い制動力を発揮してもロックしたり滑ったりしてしまうだけ。それよりは、滑り出す手前でしっかりとコントロールでき、またロックもしにくいような特性が歓迎されるからだ。
これに加え、長いサスペンションストロークによって、前につんのめる感じ(ノーズダイブ)が大きく、フロントサスが沈んだところで路面からの反力をライダーが感じる状態になるまで時間がかかり、ブレーキが利いているという実感が得られにくいから、という理由もある。
実際は強めにレバーへ入力すれば十分な制動力を発生してくれるので、安全性への心配は無用だ。
あくまでもオンロードバイクに比べて初期でガツンと利かないだけ。
意外と足元が濡れる
これはフロントフェンダーのタイプによるもので、タイヤの外周を覆うように配置されるダウンフェンダーならオンロードバイクと変わらないが、オフロード色の強いモデルが採用するアップフェンダーになると、フロントタイヤが巻き上げた水がライダーの足元に来るのを防ぐ機能があまり高くなく、シューズや膝周りが意外と濡れがち。長いサスペンションストロークに対応し、石や泥が舞い上がっても防いでくれるアップフェンダーだが、日常使いではダウンフェンダーのほうが優れている部分もあるのだ。
左のCL250はダウンフェンダー、右のCRF250Lはアップフェンダーだ。
転んでもダメージが少ない!
オフロード傾向が強いモデルになるほど、つくりがシンプルであることに加え転倒に備えた設計になっているので、転倒しても(多少の傷はつくが)ダメージは小さくて済むことが多い。
立ちごけや転倒の場面でバイクにしがみついたり立て直そうと頑張ったりすると、ライダーが余計に怪我をするリスクもあるので、早めに諦めてバイクを捨てて逃げるという選択も大事である。特にオフロードでは遠慮なくバイクを投げよう。
ナックルガード付きならレバーが折れる心配もあまりない。
まとめ
アスファルトに特化されたオンロードバイクは、日常使いやツーリングなどで何も困ることはなく扱いやすいが、ちょっと道を逸れてどこかに行きたいとか、環境の変化に左右されずに楽な姿勢で自由自在に乗りたい、災害時に役立つバイクを……。そんなふうに考えたことがあるなら、アドベンチャーやオフロードバイクを手に入れてみるといいかもしれない。今までとは違った楽しみが得られるに違いないし、改めてオンロードバイクのよさもわかってくる。理想はオン/オフの2台持ちだなぁ……なんて考えてしまって、バイクの魅力から抜け出せなくなるかも?!
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
Vストローム250SX[56万9800円] vs Vストローム250[64万6800円] 2023年8月24日に発売されるスズキの新型モデル「Vストローム250SX」は、油冷単気筒エンジンを搭載するア[…]
【テスター:丸山浩】自身の主導団体"ウィズミー"会長/YouTubeチャンネル"MOTORSTATION TV"の司会/ヤングマシンのメインテスターを務めつつ、オンオフ2輪4輪問わずレースに参加するモ[…]
’23 スズキ Vストローム800DE 概要 ’23 スズキ Vストローム800DE スタイリング ’23 スズキ Vストローム800DE エンジン ’23 スズキ Vストローム800DE シャーシ […]
ホンダCRF250L 概要 [◯] 規制適合後も走り不変。オンロードも楽しいぞ 今年5月にホンダからスクランブラースタイルのCL250が発売された。偶然にも今回試乗したCRF250Lと価格が同じで、水[…]
1位:スズキ Vストローム250 146票/981票 '17年の登場時は圏外ながら近頃は3位に着け、ついに初優勝! ツインの心臓は実用域のトルクが豊か。旅の相棒として評価が高い。 投稿者の声【旅性能が[…]
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
“The Total Ténéré – Top in Adventure”をコンセプトにツーリング&オフロード性能を高めた クの並列2気筒エンジンを継承しながら、Y-CCT(電子制御スロットル)を採用[…]
シャフトドライブでロングツーリングも安心なミドルアドベンチャーがアップデート 2023年のミラノショーで発表された新型V85TTは、翌年に上位グレードとなるV85TTトラベルが日本に上陸した。そして今[…]
双方向クイックシフト&クルーズコントロール搭載、ホイールサイズが異なる2車 スズキは、国内向け2025年モデルとして「Vストローム1050」およびバリエーションモデルの「Vストローム1050DE」をカ[…]
人気モデル『400X』の“モデル名称”を変更して再登場したバイク 普通二輪免許で乗れる400ccクラスの中では珍しいアドベンチャースタイルのクロスオーバーモデル/ツーリングバイクとして人気を博していた[…]
スクエアデザインの1050/800/250SXに対し、650と250は穏やかな意匠 スズキは、「Vストローム650」および「Vストローム650XT」の価格を改定し、2025年2月5日に発売すると発表し[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
力まない柔軟な状態を保ちながら、カーブでのバイクのホールドはアウト側下半身で! 腕や肩、それに背中や腰など、バイクに乗るときはリラックスして力まない状態でいることが大事。ハンドルをちょっとだけでも押し[…]
おじさんライダーにはおなじみのテクニック 本来、クラッチケーブルはクラッチレバーのボルトとナットを外してからでないと、取り外せないもので、これがまた地味に時間がかかるもの。 それをもっと簡単に取り外し[…]
メーカーのサス設定はPL対策で乗りやすさと快適さを犠牲にしている! ほとんどのビッグバイクにはサスペンションの調整機構が装備されている。 しかし知識のないシロウトが触ったら、メーカーがテストを繰り返し[…]
バイク購入後の楽しみを提案し、一緒にイベントを楽しむ 関西/中部圏で6店舗ものBMW販売店を展開するモトラッドミツオカグループ。各店はツーリングをはじめ、さまざまなイベントを独自に実施しており、車両の[…]
改めて知っておきたい”路上駐車”の条件 休暇を利用して、以前から行きたかったショップや飲食店を訪ねることも多くなる年末・年始。ドライブを兼ねたショッピングや食べ歩きで日ごろ行くことのない街に出かけると[…]
人気記事ランキング(全体)
いざという時に役に立つ小ネタ「結束バンドの外し方」 こんにちは! DIY道楽テツです。今回はすっごい「小ネタ」ですが、知っていれば間違いなくアナタの人生で救いをもたらす(大げさ?)な豆知識でございます[…]
V3の全開サウンドを鈴鹿で聞きたいっ! ここ数年で最も興奮した。少なくともヤングマシン編集部はそうだった。ホンダが昨秋のミラノショーで発表した「電動過給機付きV型3気筒エンジン」である。 V3だけでも[…]
1978 ホンダCBX 誕生の背景 多気筒化によるエンジンの高出力化は、1960年代の世界GPでホンダが実証していた。多気筒化によりエンジンストロークをショートストトークにでき、さらに1気筒当たりの動[…]
ファイナルエディションは初代風カラーでSP=白×赤、STD=黒を展開 「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツ」を具現化し、本当に自分たちが乗りたいバイクをつくる――。そんな思いから発足した「プ[…]
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は…… ガソリン代の高騰が止まりません。 全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給され[…]
最新の投稿記事(全体)
見事に王座を獲得したエディ・ローソン【カワサキZ1000R】 エディ・ローソンは1958年に誕生、カリフォルニア州の出身だ。 1983年からヤマハで世界GPに参戦、以後1992年に引退するまで4度の年[…]
2018年モデル:Z1/Z2モチーフ 発売は2017年12月1日。モチーフとなったZ1・Z2は、ショートピッチの燃料タンク形状とオレンジの塗色から「火の玉オレンジ」と呼ばれたカラーリング。これが伝説の[…]
オートレース宇部 Racing Teamの2025参戦体制 2月19日(水)、東京都のお台場にあるBMW Tokyo Bayにて、James Racing株式会社(本社:山口県宇部市/代表取締役社長:[…]
Schwabing(シュヴァービング)ジャケット クラシックなフォルムと先進的なデザインを合わせた、Heritageスタイルのジャケットです。袖にはインパクトのある伝統的なツインストライプ。肩と肘には[…]
新レプリカヘルメット「アライRX-7X NAKASUGA 4」が発売! 今シーズンもヤマハファクトリーから全日本ロードレース最高峰・JSBクラスより参戦し、通算12回の年間チャンピオンを獲得している絶[…]
- 1
- 2