
電動キックボードに関する道交法改定における改正案や関連業界への提言について、東京都市大学 建築都市デザイン学部 都市工学科 准教授の稲垣具志氏に伺った。稲垣氏は埼玉県の三ない運動撤廃にあたり「高校生の自動二輪車等交通安全教育検討委員会」で会長を務めた方でもある。(以下、敬称略)
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
【東京都市大学建築都市デザイン学部都市工学科准教授 博士(工学) 稲垣具志氏】’16年、埼玉県に設置された「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会(埼玉県教育委員会主催)」で会長を務め、9回にわたる会議において三ない運動を検証し、その功績と課題に向き合った。三ない運動をやめるやめないではなく、高校生にどうやって交通安全教育を届けるのかについて、プロセスを重視した議論で合意形成、同県の交通安全教育推進に寄与し、高い評価を受けた。
改正道交法に残る多くの課題 行政/業界/警察で安全啓発を
───道交法の改正案について、もっとこうしたほうがいいのではないか、とお考えのところはありますか?
稲垣:僕は電動キックボードが自歩道(自転車歩行者道)を走れる状況をあまり美しいとは思わないですね。しかし、”自歩道を自転車が通れるなら、電動キックボードが通れない理由は何か”という論戦は十分に想像できますよね。しかも歩道通行モードに切り替えて6km/h以下にセーブするわけですから。
“最高速度を20km/hまでしか出せないような乗り物が、幹線道路の車道を走るのと6km/h以下で自歩道を走るのとどちらが安全ですか”というようなロジックもあったと思います。ただこれは、電動キックボードが走る場所についての議論です。果たして周りに与える影響や道交法どおりに走らないユーザーについてどのように考えているのでしょうか。事故はそういう時に起きるわけですから。
往来するクルマを見て、どのタイミングで道路を渡れると思うかの実験を行ったんですが、小学校2年生くらいだと、クルマが10mまで近付いても渡れると判断してしまう。クルマの速度が20/30/40km/hと、どんなスピードであっても道路を渡れると判断する。5年生になるとばらつきが出てきて、正しく判断できる子も出てくる。大人は大体正しく判断できるんですけど、幼少期に途上国で育ったような人だとできない。
子供の頃に受けた交通教育によって交通社会に対する価値観が形成されます。子供の頃にちゃんとした教育を受けていない人は大人になってもできないんですよね。歩道に混在する電動キックボードに対して、子供たちがそのリスクを感知できるのかについては研究すべき課題だと思います。クルマから見た場合も同じです。ノーヘルで20km/hで走って来る乗り物に対してリスクが予知できるかどうか。いわゆるKYT(危険予知訓練)ですよね。電動キックボードという新しい乗り物に対して、正しく危険予知が行えるのでしょうか。
混合交通空間で取るべき所作とは何なのかを気をつけないと、自分が加害者あるいは被害者になり得るわけですから、電動キックボードに乗れるようになる高校生の頃からこれらのことを意識させないといけませんよね。「我が校は電動キックボード通学禁止です」で終わらせてしまうのは教育者としての責任放棄になるのかなと思います。これは教育委員会等だけの問題ではないと思います。
しつこいようですが、行政/業界/警察が一体となって高校生に対する安全啓発を行っていく必要があると思います。また、大人に対しても教育が必要だと思います。強い罰則が伴うことが理想ですが、自転車の現状を見る限り難しそうですね。
───自転車の話を聞くと参考になりますが、あまりポジティブな将来像が見えません。自工会は「自動車業界の550万人を守る」と言っていますが、このような状況下でモビリティ革命による勝負ができるのかと。電動キックボードを危ないものとして子供たちから遠ざけて、免許を取って初めて運転する自走モビリティが軽自動車という社会でモビリティ革命をグローバルでやっていけるのだろうかと思います。もし、高校生が電動キックボードで事故を起こせば、「電動キックボードでも事故が起きているのに、バイクなんてとんでもない」となるかもしれませんし、業界にいる者として今のうちにやらないでどうするのかと。だから、これをバイク雑誌でやることについては意義を感じています。
稲垣:今おっしゃったことについて、僕は大きな違和感を抱きませんでした。僕はバイク業界の人間ではないのであまり無責任なことは言えませんが、”我関せず”というスタンスはもったいないと感じますね。
───色々なモビリティを開発する側で素晴らしいノウハウもあって、”教える”ことのプロが大勢いるので、ぜひやって欲しいなと思います。
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