バイク好き・メカ好きなら工場見学にときめくはず。なかでもプレミアムスポーツバイクの極致であるドゥカティ「スーパーレッジェーラV4」のエンジン&車両組み立てが見られるときたら……。そんな憧れの製造現場を映像に収めたのはYOUTUBEチャンネル「FRAME」だ。
●文:ヤングマシン編集部
MotoGPマシンは公称240ps以上というけれど
2020年代において、ドゥカティほどレーシングマシンと市販車が近いメーカーはないだろう。ほぼMotoGPマシンといえるホンダ「RC213V-S」が発表されたのは2015年であり、それ以降の国産車ではYZF-R1/MがクロスプレーンクランクでMotoGPマシンの血統を感じさせるものの、レプリカとまでは言い難い。
ドゥカティ「スーパーレッジェーラV4」が搭載する998ccのV型4気筒エンジン・デスモセディチストラダーレRは、MotoGPマシン「デスモセディチGP」と同じ逆回転クランクや軸配置、ボア×ストロークまで同じ(パニガーレV4/Sは1103cc)。それだけでなく、ドゥカティのアイデンティティであったL型2気筒エンジンの脈動を再現するかのような70度のクランクピンオフセット+90度のVバンクの“ツインパルス”点火シークエンスも再現している。
そのパフォーマンスは、通常の状態で224ps/15250rpm、レーシングフルエキゾースト装着時で234ps/15500rpmと尋常ではない。まさしくスーパーエンジンだ。
さらに、発表されたばかりの2023年型「パニガーレV4R」が搭載する最新版のデスモセディチストラダーレRは、ユーロ5適合の公道走行可能な状態で218ps/15500rpm、レーシングエキゾーストと専用エンジンオイルを組み込むことで240.5psを発揮し、6速ではなんと1万6500rpmまで許容する。
こうしたスーパーパフォーマンスを実現できるのは、上記のような設計に加え、ドゥカティ伝統のデスモドロミック(強制弁開閉)システムが効果を発揮しているからだ。この機構はMotoGPであっても有効で、他社のMotoGPマシンが圧縮空気を利用したニューマチックバルブを採用して超高回転を実現するなか、ドゥカティだけは機械式の開/閉カムシャフトによって最高峰クラス随一の最高速度を実現してしまっている。
ちなみにMotoGPマシンは、最高出力に関して未公表……というか、各メーカーとも判で押したように「240ps以上」や「250ps以上」などと謳われる(あれほどの最高速度を実現するためには350ps程度が必要という説もあるが)。
つまり、レーシングマフラー等を組み込むだけで230psを超えるデスモセディチストラダーレRは、メーカー公称値とはいえMotoGPレベルの最高出力を実現するエンジンなのだ。さすがにシームレストランスミッションは搭載していないものの、これをもって冒頭の“レーシングマシンと市販車が近い”の文言には、おおむね納得していただけるのではないだろうか。
スーパーレッジェーラV4は2020年発表で発売は2021年。このパニガーレV4系の軽量スペシャルマシンが搭載するデスモセディチストラダーレは、コンポーネントの42%を専用に再設計したもので、1103ccのV4Sのエンジンからさらに2.8kgもの軽量化を達成している。それはチタン製コンロッドを使用しただけでなく、カウンターウェイトやフライホイール、オイルポンプの軽量化なども含まれる。クラッチは乾式だ。
また、車体はフレームやサブフレーム、スイングアーム、ホイールに至るまでカーボン複合素材で製作され、これらのコンポーネントだけで2020年モデルのパニガーレV4比・6.7kgの軽量化を達成している。
そんなスーパーレッジェーラV4の組み立てを動画で見ることができる。2022年10月24日に公開された『FRAME』の「イタリアの最高のバイク工場: ドゥカティ生産ラインの内部でバイクを手作業で製造(邦題)」だ。
ナレーションやBGMは特になく、最小限の文字による説明のほかは淡々と作業風景と工場の生音が流れていく。20分の動画のうち、ドゥカティのパートは11分過ぎまで。後半はなぜか南カリフォルニアのホンダATV工場の様子がレポートされているという謎展開だが……。ちなみに動画のサムネイルもスーパーレッジェーラV4ではない。
動画はこちら↓
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