今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はすべてを一新した第2世代の空冷Z「カワサキZ1000J/R」について、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:ブルーサンダース
全面的な改革によって大幅なレベルアップを実現 第2世代の空冷Zとして、'81年にデビューしたZ1000Jは、既存のZ1系の問題点を解消し、ライバル勢へのアドバンテージを広げるべく、ほぼすべてのパーツを[…]
- 1 第1世代のZ1系とは異なり、フルノーマルの維持は困難
- 2 パーツ流通:年式が古いZ1系のほうが潤沢?
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第1世代のZ1系とは異なり、フルノーマルの維持は困難
第1世代とは異なる第2世代の空冷Z固有の弱点として、カムホルダーの雌ネジ破損/後部エンジンマウントボルトの曲がり/左側ダウンチューブ内部の錆びなどが代表格と言われている。とはいえ、ブルーサンダースの岩野代表にとって、それらは大問題ではないようだ。
「カムホルダーのネジ山問題は、最近はZ1系でも珍しくありませんし、ボルト径が拡大されていなければ、ヘリサートで修復できます。マウントボルトに関しては、曲がっていても走行に支障が出るわけではありません。左側ダウンチューブ内部の錆びは、たしかに第2世代固有の弱点ですが、雨水が入りやすい施錠用ワイヤの穴を早い段階で塞げば、深刻な問題にはなりませんよ。いずれにしても、本来の資質を取り戻した第2世代の空冷Zに、コレといった気遣いは要りません。日常的に行う整備は現行車と同様に、エンジンオイルの交換ぐらいですからね」
ただし、ノーマルのシルエットにこだわるライダーにとって、第2世代の空冷Zはハードルが高いようだ。「そこが第1世代との大きな違いです。初代Z1だけではなく、Z1‐RやMk.Ⅱ用なども含めて、相当に細かい部品まで復刻されている第1世代と比較すると、第2世代はアフターマーケットのリプロパーツが少ないうえに、同系車でも年式や仕向け地によって細部が異なりますから、フルノーマルの状態を維持するのが難しい。まあでも、カスタムが前提のライダーなら、そのあたりは問題にはならないでしょう」
ピストン:純正から社外品まで選択肢はかなり豊富
クランクシャフト:オーバーホールで新品の姿を再現
カムチェーン&ガイド:第1世代を上回るロングライフを実現
シリンダーヘッドカバー:オイル漏れにつながるクラックに要注意
カムシャフトホルダー:何かと問題が多いカムシャフト周辺部品
キャブレター:負圧式の修復は手間がかかる
トランスミッション:アンダーカットで抜けを予防
クラッチ:分解&整備を行なってゴトゴト音を解消
エンジンオイル:乗り手の用途に応じて2種のオイルを準備
エンジンマウントラバー:カチカチになる前に新品に交換したい
フレーム:弱点とは言えないものの、3つの問題点が存在
ブレーキディスク:2種の外径が存在するフロントディスク
フロントブレーキマスター:純正の整備ではなく現代の製品に交換
スプロケット&ドライブチェーン:純正の630サイズにこだわる必要はナシ
スパークユニット:進角に影響を及ぼすスプリングの劣化
バッテリー&レギュレーター/レクチファイヤ:レギュレーターはモスフィットが人気
メインハーネス:純正がまだ入手できる電装系部品の要
パーツ流通:年式が古いZ1系のほうが潤沢?
Z1000Pが超ロングセラーになったおかげで、ひと昔前は補修パーツの心配は不要と言われていたZ1000Jだが、近年は純正部品の欠品がかなり増加。安心できる状況ではなくなっている。
「しかもJ系はアフターマーケットのリプロパーツが少ないので、維持という見方ならZ1系のほうが楽だと思いますよ。とはいえ今の時点なら、ほとんどの消耗部品は揃うし、中古部品もそれなりに流通しているので、J系でも修理不能という事態にはなりません」(岩野氏)
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