
現行ラインナップとして今はなくても、あの頃の憧れや、もう一度乗ってみたいという思いを叶えてくれる絶版車。数ある絶版車オフロードマシンの中から、カワサキの誇る250トレックマシン「スーパーシェルパ」を紹介する。
●文:ゴー・ライド編集部(青木タカオ) ●写真:栗田 晃 ●外部リンク:レッドバロン
一歩先行く250トレックバイク。カワサキらしさがそこにある
ヤマハのセローに対抗するカワサキトレック系と言えばコレしかない! というほどに我々オフロードバイクファンの心に残っているのが「スーパーシェルパ」。’97年に登場し、隠れた名車として名高いモデルだ。ここで紹介するのは’01年型。傷みやすい外装もシャキッとし、状態のよさに舌を巻く。オールラウンダーとしての実力は現代でも高く、最新のセロー250と走ってもDOHC4バルブならではの力強い走りでひけをとることはないだろう。
【KAWASAKI SuperSHERPA】■全長2060 全幅780 全高1130(各mm) 乾燥車重111kg ■空冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 249cc 26ps/9000rpm 2.6kg-m/7000rpm 変速機6段 ■タイヤサイズF=2.75-21 45P R=4.10-18 59P ●発売当時価格:40万9000円 ※撮影協力:レッドバロン 絶版車でもレッドバロンの”譲渡車検付き”であれば安心して楽しめる。
レーサーレプリカブームに呼応するかのように、’80~’90年代には過激なフルサイズオフローダーが数多く登場した。街乗りや林道ツーリングのみならず、エンデューロレースも想定し、前後サスペンションのストローク量は長くなり、エンジンもピーキーになるばかり。必然的にシート高が高くなり、ビギナーや女性/小柄な人には敬遠されがちとなったのは想像にたやすいだろう。
そんな中で根強く支持されてきたのが、おなじみのヤマハ セロー。扱いやすいオールラウンダーは、コンペ志向になるデュアルパーパスたちの中で揺るがない人気を誇った。
そのセローに真っ向勝負を挑んだのが、このスーパーシェルパだった。デビューした’97年は、ホンダからもSL230(MD33)が発売され、フレンドリーでダートをノンビリ走りたいという市場からの要望が強かったことが分かる。
一気に激戦区となったトレッキング系モデル。走破性を確保しつつ、シート高をいかに低くできるかがこのセグメントではまず重要だが、モデルチェンジしたばかりのセロー(4JG)/SL/スーパーシェルパのシート高は810mmと横並び。さらに、左右51度という広いハンドル切れ角も3車まったく同じで一歩も譲らずであったが、スーパーシェルパだけが排気量249ccのDOHC4バルブエンジンを搭載。KLX250SR/ESの水冷単気筒をベースに空冷化したもので、空冷SOHC2バルブ223ccだったセローとSLに大きなアドバンテージとなっていた。
そのパワフルさはスペックを見ても明らかで、セローやSLが20psしかないところ、スーパーシェルパは26ps/8000rpmを発揮。もちろんスペック至上主義ではないところがこのカテゴリーの大きな魅力だが、足着き性に優れ、ハンドルが大きく切れて扱いやすく軽快な車体に、力強いエンジンの組み合わせがファンを唸らせ、カワサキらしさもしっかりと垣間見られた。その後、セローも’05年に225→250cc化することを考えると、スーパーシェルパがライバルらより先に250ccで登場していた意味は大きい。
親しみやすいスリムで軽量な車体。しなやかで高い走破性を持つ足まわりは、フロント21/リヤ18インチ。車両重量(乾燥)は111kgと軽い。
全幅780mmの細身は、悪路や市街地で扱いやすい。マフラーも張り出しはなく、ウインカーとほぼ同じ幅に収まっている。
KCAとパイプ触媒を組み合わせた「KLEEN」を搭載し、すぐれたレスポンスと十分なパワーを発揮する空冷DOHC4バルブ単気筒エンジン。MIKUNI BST34キャブレターがセットされ、トランスミッションは6速。
(写真左)フロントフォークはインナーチューブ径36mmの正立式。左右51度のステアリングアングルは、ライバルとなるセローやSL230とまったく同じ。トレッキングを意識した作りだ。前輪ディスク径は240mm。(写真右)ユニトラックサス採用で、後輪ホイールトラベル170mmを確保した。
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