レーシングカウルや外装パーツで名を馳せるマジカルレーシング。積み上げた造形ノウハウと独自のアイデアで、日本のボディワーク界を牽引する代表の蛭田 貢さん。溢れるバイク愛とチャレンジ精神で、常に全力で走り続ける!
●文: ライドハイ(伊藤康司) ●写真: 真弓悟史
カタチと機能を追求するボディワークの巨匠
溶けるような真夏の暑さの筑波サーキット。パドックでレース仲間を手伝って甲斐甲斐しくセッティングや走行準備を行う男性がいる。小柄だが引き締まった身体で、少し強面。しかし、周囲を行きかう多くのバイク関係者やライダーから、頻繁に挨拶の声がかかる。すると途端にフレンドリーな満面の笑顔……。その人こそ、レーシングカウルや外装パーツなど、日本を代表するボディワークの草分けである「マジカルレーシング」の代表、蛭田 貢さんだ。
1952年生まれの蛭田さんは、少年時代(?)にホンダのカブに乗り、20歳の頃にレースを始め、当時の全日本ノービスにヤマハのTD-2で参戦。とはいえ、3~4年で8戦ほど出ただけでレースをやめて、サーフィンに明け暮れた。
「定職に就いたことが無く、サーフィンやスノーボードばかりでした(笑)」と、当時はバイクの外装パーツ作りを生業にしようと考えたことはなかった。
「その頃はタクシー運転手をしていたんだけど、なぜか『FL(当時の四輪フォーミュラカー)のノーズカウルを作れないか?』って話があって。どうやって作るのかわからないのに引き受けてしまった。そこで初めてFRPという素材に触れ、形状は自分なりに空気の流れを考えて“平面ラジエターの前から入った空気が上面に抜けて……”とか工夫しました。それは、失敗したんだけど(苦笑)」
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