原付二種スポーツモデルのグロムが’21年に3代目へと進化した。エンジンはボアストローク比の変更およびミッションの5速化など大幅に刷新。また、外装やマフラーはカスタマイズしやすい設計となり、ブレーキはABSが標準装備に。ホンダの良心を感じる1台だ。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ
CBよりも発進が力強い。通勤でも旅でも頼もしい
前後12インチの小径ホイールを履くグロムが登場したのは’13年のこと。3年後の’16年には早くもスタイリングを一新し、LEDヘッドライトとダウンショートマフラーを採用。そして今年登場した’21年モデルはシリーズ3代目となる。最大のポイントは、タイホンダのウェイブ125iをベースとした空冷SOHC2バルブ単気筒が、ボアストローク値から見直されたこと。よりロングストローク比となり、圧縮比も高められた。これらによって最高出力は9.8→10psへとアップ。さらに、ミッションが初代&2代目の4段から5段に増えたのも注目だ。
まずはそのエンジンから。発進加速は15psを発揮するCB125Rよりも低回転域から力強く、交通の流れに余裕で乗ることができる。念のため1速の総減速比を計算したところ、2代目に対して約13%ローギアードになっており、これも発進加速を力強く感じさせる要因だろう。ロングストローク比になったとはいえ、レッドゾーンが始まる8000rpm付近までスムーズに吹け上がり、パワーカーブは極めてフラットなのでどの回転域でも扱いやすい。7000rpmから本領を発揮するCB125Rとは対照的で、市街地の移動がメインならグロムの方が扱いやすく、現実的にも速いだろう。
5速化のメリットは、上り勾配のきつい峠道で実感できた。シフトアップ後の回転数の落ち込みが少ないので失速にしにくいのだ。勾配が10%を超えるとさすがにエンジンパワー的に厳しくなるが、先代の4速時代よりも高回転域を保ちやすいのはメリットだ。
続いてハンドリングについて。ホイールのデザインが力強い5本スポークとなったが、φ31mm倒立式フォークなど基本的な部分は変更なし。標準装着タイヤの銘柄や指定空気圧まで先代のものをそのまま受け継いでいる。基本的にはバンク角主体で旋回するという分かりやすいハンドリングで、寝かし込んだ分だけ旋回力が高まる。それを支えているのが十分以上のグリップ力を発揮するタイヤで、ステップを擦るほど寝かせてもまったく不安がない。強めにブレーキングするとヘッド付近の弱さが露呈するが、その一歩手前ぐらいのスムーズな減速から倒し込んだ方が気持ち良く曲がれるので、自然とそうした走りになる。言い換えれば、ビギナーに適切な操縦技術を教えてくれる稀有なモデルと言っていいだろう。
新設されたABSはフロントのみが介入する1チャンネル式で、作動に関しては不満なし。
グロムとして正常進化。通勤通学と遊びを両立できるバイクだ。
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