●文:沼尾宏明 ●情報提供:スズキ
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- 1 裏話本音が炸裂。新型は”買い”では?
- 2 代表取締役社長 鈴木俊宏氏「最高のものが誕生したんじゃないかなと思います」
- 3 アシスタントチーフエンジニア 粕谷賢一氏「他社製品と比べてどうこうではなくて、ハヤブサとしてどうかを考えて作り込んでいます」
- 4 エンジン設計 溝口直輝氏「長いこと乗ってください。10万km、20万km、なんなら50万km」
- 5 エンジン実験 東郷隼也氏「エンジンの基本的な部分から強度を上げています」
- 6 電子制御開発 竹田育弘氏「より懐の広い車両になった」
- 7 テストライダー 中島裕一氏「いつかは手に入れたいと思う1台」
- 8 車体設計 吉田武司氏「ハンドリングの自由度が増した」
- 9 車体設計 鈴木京馬氏「空力性能と冷却性能とのバランスに苦労」
- 10 車体設計 中山義寿氏「最高レベルの空力性能」
- 11 操縦安定性実験 宇津山祥吾氏「前のモデルに対しては、勝る部分しかない」
- 12 スタイリングデザイナー 小川和孝氏「殻を打ち破ってまったく新しい魅力を備えたものにする」
- 13 スタイリングデザイナー 髙野拓美氏「理性と狂気を備えたスタイリング」
- 14 クレイモデラー 内山 茂氏「たとえ空力が良くても、ハヤブサと思われない形になってしまえばどうしようもありません」
- 15 カラーデザイナー 川口健氏「内なるパワーを可視化する」
- 16 電装設計 渡邊正智氏「こだわりの新しい5連メーター」
- 17 電装設計 羽田航太朗氏「ゴージャスさと優美さ」
- 18 必見! シン・ハヤブサ関係者インタビュー動画↓
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裏話本音が炸裂。新型は”買い”では?
スズキは、ユーチューブのグローバルチャンネルで隼に関する公式ムービーを8本も公開。PVや技術解説に交じって、珍しいことにエンジニアたちのインタビューを主軸に構成した開発ストーリーがあった。
内容はここにまとめたとおりで、メーカーの公式動画としては異色。冒頭から鈴木俊宏社長が登場し、エンジン/車体/デザイン/空力などの開発者が次々と興味深いコメントをしている。
とにかく全員が熱い! 高い目標に向かって苦労を積み重ね、全員がやりきった充足感と、”最高”のモノができたという自負に満ちている。コストダウンや手抜きではなく、先代エンジン&フレームを踏襲するに至った経緯も、この動画を見れば納得できるだろう。
個人的に印象的だったのは、「50万km乗ってください」「5年/10年という長いスパンで乗ってほしい」とのコメント。利益を追求するメーカーとしては、なるべく早いサイクルでバイクを乗り換えてほしいハズだ。しかし、開発者にそこまで言わせてしまう隼への圧倒的な自信と信頼が伝わってくる。だからこそ隼は”買い”と思うのだ。
代表取締役社長 鈴木俊宏氏「最高のものが誕生したんじゃないかなと思います」
設計者/開発者が「次のハヤブサどうやろう?」って悩みに悩んで出てきた回答がこれだよね。初代/2代目、そしてこのモデルと、3台持ちたいというお客さんも出てくるんじゃないかなぁ。それぐらい進化させて、あるいはそれぞれのモデルでそれぞれの特徴を持ってる。最高のモノが誕生したんじゃないかなと思います。
アシスタントチーフエンジニア 粕谷賢一氏「他社製品と比べてどうこうではなくて、ハヤブサとしてどうかを考えて作り込んでいます」
実はこの10年間、さまざまなカタチの新型ハヤブサの検討を行なっており、試作車まで作っては白紙に戻したこともありました。中にはフレームが今のものとは変わっていたりとか、エンジンの排気量が変わっていたりとか、エンジンの気筒数まで変わっていた時までありました。そういった数え切れないトライ&エラーを繰り返しながら完成度を高めていき、ついに新型ハヤブサを発表する時が来ました。
他社製品と比べてどうこうではなくて、ハヤブサとしてどうかを考えて作り込んでいます。エンジンの排気量とポテンシャルからすると、300km/hに到達するのは当然で、今回のハヤブサについては余力を低中速出力の改善に使いました。それによって、電子制御と相まってとても乗りやすいバイクに仕上がりました。低中速出力は誰でも感じられる常用域の改善ですので、出力が下がったことを感じることなく、いいところだけを伝えることができるかなと思っています。
エンジン設計 溝口直輝氏「長いこと乗ってください。10万km、20万km、なんなら50万km」
性能もそうですけど、品質/耐久性も含めて作り上げました。今回のエンジンの仕様に辿り着くまでに何度仕様を考えたか…。排気量の大きいヤツだとか、過給機がビューンって回るようなヤツだとか、実際に作ったりもしました。やっぱり、なんだかんだいって元のパッケージ、そこが一番バランスが取れていて良いと僕らは判断しました。やっぱり基本レイアウトは変えないっていうことが、ひとつのアイデンティティなんじゃないかなと思ったんですね。素性の良さを生かして20年後に最新の設計をする。「このエンジンに勝てるエンジンをこのエンジンで作るんだ!」今回はそれが設計の狙いというかポイントです。
すべての部品を見直しました。ピストンもコンロッドも見直しました。クランクシャフトはそのままですが加工を変えました。何回テストするんだっていうぐらいやりました(笑) 壊れたところを直して、どんどん強いクルマを作っていくというのがやっぱり設計の仕事だと思って。やっぱりそれが性能の向上、耐久性の向上につながっている。
革新的なのは、やっぱり最新の電子制御技術をたくさん入れているところだと思います。より緻密な動きをさせる電子制御スロットル。この中にモーターが入っていて、1000分の1秒単位でバルブを開けたり閉めたりしてます。私も乗りましたけど、まぁ〜スゴい(笑)
性能もそうですけど、品質/耐久性も含めて本当に作り上げましたので、長いこと乗ってください。10万km、20万km、なんなら50万km。僕も買おうと思ってます!
エンジン実験 東郷隼也氏「エンジンの基本的な部分から強度を上げています」
もともと耐久性に定評のあるエンジンなのですが、今回もさらに耐久性に力を入れて開発。徹底的に2代目ハヤブサのエンジンを研究しました。ボルト1本からOリング1個まですべて見直して、設計とも様々な意見をすり合わせました。クランクジャーナルのボルトの締め方ひとつとっても変えており、その結果、エンジンの基本的な部分、お客様が触れない部分から強度を上げています。
ライダーが使う実用領域=5000〜6000回転ぐらいの出力を向上させています。電子制御の機能が付いていればOKかというとそうではなくて、人間に違和感なくどれだけ機能するかというところが、メーカーの腕の見せ所だと思っております。どのような走り方にも右手に忠実にトルクが出るように作っています。
電子制御開発 竹田育弘氏「より懐の広い車両になった」
電子制御のサポートを受けることによって、幅広く乗られていたものがさらに幅広い人達に受け入れてもらえるように、懐の広い車両になったのかなと。今のスズキ2輪の電子制御技術をすべて注ぎ込んで作ったもので、スキルであったり好みであったり、自由に組み合わせて自分好みのセッティングを作ることもできるし、自分だけの設定を作ってそれをずっと使ってもらえればと思います。モード設定の数に関してはチームで激論を交わしました(笑)
ヒトの感覚を大事にして徹底的に磨きこんでいく。シンプルなものではないというか、物理計算であったりとか、現代制御工学に基づいた計算して緻密に制御を加えています。
テストライダー 中島裕一氏「いつかは手に入れたいと思う1台」
ターボだったり、排気量アップしたモデルだったり、6気筒だったり。そういうハヤブサを乗せてもらって、多くのモデルが生まれては消えていく形でここ10年。やっぱり味的には現行のこのエンジンに勝てるものはなかった。以前の1型/2型も担当していて、ハヤブサファミリーとしてこの3型が受け入れてもらえるようにと頑張りました。
竜洋(テストコース)のストレート2.5kmを2速で立ち上がって、全開で旧型と新型と比べた場合、ほぼ変わらないんですが、6速の低速からスロットルを同時に開けた場合は新型の方がわずかに上回る。
電子デバイスに関しては、企画に無理を言って、本当は3段階でいいところを5段階にしたりだとか、5段階でいいところを10段階にしたりとか、やれる範囲の中で段数を増やしてもらいました。5年/10年という長いスパンでお客さんに乗ってもらって、自分のライディングスタイルが変わるに従って、エンジンの中身/出力/扱いやすさも含めて細かく変えられるようにと。そこは絶対に譲れなかったですね。
ガラス越しにちょうど自分が映った時に、やっぱりカッコいいんですよね、コレ。自分で自分に酔うみたいなところが(笑) すごく気に入ってます。いいパートナーになると思います。
車体設計 吉田武司氏「ハンドリングの自由度が増した」
これとはまったく異なる構成のフレームを採用したものもありました。ハヤブサは2輪の世界ではスーパーカーだと思っておりますし、フレームに対しても4輪のスーパーカーにも使われているような展伸材を今回も継続して採用することができており、これがベストだと思うものを作ることができました。
ハンドルを12mm手前に引いていますが、手前に引いたことでハンドリングの自由度が増しました。フロントの分担荷重を増やす、そのあたりもハンドリングの改善や直安性の向上に貢献しているんじゃないかなと。
自分たちの現行車のフレームをベースにして開発したのは間違いではなかった、というか正しかったんだというのを、いまこうやって出来上がったマシンを見ると確信しています。
車体設計 鈴木京馬氏「空力性能と冷却性能とのバランスに苦労」
このサイドに貼るメッキパーツ。これを飛び出させることで、太ももと脚に当たる風を低減させて空力を向上させています。たとえば、フロントフェンダーは一番前にある部分で、その後ろの部品に主に影響が出てきます。ブレーキだったりラジエーターに流れる風の量等が変わってきてしまい、冷却性能にも大きく影響が生じる。空力性能と冷却性能のうまいバランスの取り方でとても苦労しました。
車体設計 中山義寿氏「最高レベルの空力性能」
弊社の中で開発している機種の中では最高レベルの空力性能を確保した機種のひとつだと思います。デザイナーから出てくる外観というのは、ハヤブサらしいフォルムとより良い外観を目指したものなので、解析チームと共同で形状を修正して、その中でどこまでお互いが歩み寄って動けるかが肝要と思います。
操縦安定性実験 宇津山祥吾氏「前のモデルに対しては、勝る部分しかない」
「ハヤブサらしさとは何か?!」というのを常に考えながら仕事をしました。、ツーリングでも楽しめて、なおかつワインディングで走り込めばとても楽しい味付けになっています。前のモデルに対しては「勝る部分しかない」という自信を持ってセッティングできたと思います。
スタイリングデザイナー 小川和孝氏「殻を打ち破ってまったく新しい魅力を備えたものにする」
膨大な数のトライ&エラーをデザイン的にも繰り返しました。今までのハヤブサが、フラッグシップとして、レジェンドとして「今あるものが最高だ。これがすばらしいんだ」そういう風潮になりがちだったんですね。ですが、殻を打ち破ってまったく新しい魅力を備えたものにするという、その一点に関しては気を使いましたね。
新しいハヤブサは、持てる最高の技術とパッションを盛り込んで作られた、スズキのスピリットを表してる最高傑作だと考えています。
スタイリングデザイナー 髙野拓美氏「理性と狂気を備えたスタイリング」
デザインコンセプトは「The Refined Beast」なんですけれども、“知性を備えた狂気”というのをスタイリングの中で表現しました。ハヤブサの溢れ出るパワーとか、エンジンを掛けたときに感じるパッション。怪物のようなパワーのタガを外さず、なおかつすべてを手の内でコントロールする。そういう理性と狂気を備えたスタイリングというものを目指しました。
サイドラインのメインに入っているメッキモールは、もちろんハヤブサとして空力にも寄与するパーツになってます。薄暗い中でもキラッと光る特徴にもなっていますし、”アルティメットスポーツ”という孤高のジャンルで売っているからこそ、メッキの別体パーツとすることによって、所有感のためのデザインを施しています。
ライダーに驚いてもらう/喜んでもらうために用意したディテールは絶対に譲らないぞと。空力のためにデザインで苦労したところでいうと、ミラーですかね。今回のハヤブサでは、見た目の速さも追求して空力との整合性を取って作っています。
クレイモデラー 内山 茂氏「たとえ空力が良くても、ハヤブサと思われない形になってしまえばどうしようもありません」
空力は”CdA”というはっきりとした数値が出てきますが、いくらその空力が良くても、ハヤブサと思われない形になってしまえばどうしようもありませんから、モデラーがデザイナーと設計の間に立って、いいところを狙いながら造形を仕上げました。
テールまわりもそうなんですけども、真っ平らの面とちょっとふくよかなハイライトが通るこのラインは(サイドカウル部)、何回も試行錯誤して作り上げました。ハヤブサの特徴で空力は欠かせないと思っています。とくに修正したこのフィン(サイドのメッキモール)なども空力のひとつで、これがあるとないとでは全然変わってしまいます。細かいところも何度も何度も繰り返し風洞実験を行なって仕上げました。
カラーデザイナー 川口健氏「内なるパワーを可視化する」
ハヤブサってのはスゴいパワーを持っている。それをサイドのメッキパーツからマフラーへ、流れるような内なるパワーを可視化するのが今回のCMF(カラーマテリアルフィニッシュ)デザインのコンセプトでした。パワーをアシストするために、空気の流れを表現するデザインを施しました。”隼”という漢字も変えようということで、スピード感を殺さないようにしつつ、強弱をつけて漢字らしさを打ち出すロゴにしました。
電装設計 渡邊正智氏「こだわりの新しい5連メーター」
“5連メーター”にはハヤブサのイメージがあります。その中でどのように高級感を上げるかというところで、今回はTFTであったり透過視検メモリを採用したり、色々こだわって作りました。バイクの前後の加速度/アクセル開度/リーンアングル/ブレーキ圧など、さまざまな車両の状態をグラフで表示して、自分の車両が今どのような状態なのかというのを判りやすく表示する画面も用意しました。それが今回の一番のウリですね。
電装設計 羽田航太朗氏「ゴージャスさと優美さ」
スポーティなのはもちろんですが、その中に感じるゴージャスさ、優美さみたいなものをイメージしました。ポジションランプとウインカーが一緒になっているのは、光らせ方の設計でかなり苦労したところではあります。
必見! シン・ハヤブサ関係者インタビュー動画↓
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