[◯] フレキシブルな単気筒。ハンドリングも優秀
250ccのフルカウルスポーツと言えば、’20年はニンジャZX-25Rの話題で持ち切りだが、これに対してスズキはまったく別のアプローチで新機種を投入。それがジクサー250シリーズだ。フルカウルとネイキッドの2本立てで、今回試乗したのは車名に「SF」が付く前者の方。新開発のエンジンはウォータージャケットならぬオイルジャケットを持つ油冷SOHC4バルブ単気筒で、最高出力26psや定地燃費値45.0km/Lなどのスペックは、同じシングルながら水冷かつDOHC4バルブのホンダCB250Rに近しい。
【’20 SUZUKI GIXXER SF250】主要諸元■全長2010 全幅740 全高1035 軸距1345 シート高800(各mm) 車重158kg ■油冷4スト単気筒SOHC4バルブ 249cc 26ps[19kW]/9000rpm 2.2kg-m[22Nm]/7300rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量12L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/70R17 R=150/60R17 ●色:青 銀 黒 ●価格:48万1800円
まずはそのエンジンから。デュアルテールエンドのマフラーから聞こえるサウンドは、単気筒らしい歯切れのいいもので、2000rpm付近でもスナッチせずに発進できるほど調律が行き届いている。力強さを感じるのは3000〜4000rpmからで、街中なら6000rpmまでで十分に事足りる。そこからレッドゾーンの始まる1万rpmまでしっかりとパワーが盛り上がり、車体の軽さも相まってスペック以上にスポーティに感じる。スロットルの開け方次第で元気良く走らせることもできれば、景色を眺めながらトコトコと流すことも可能。実にフレキシブルな単気筒と言えるだろう。
燃焼室の周囲にオイルジャケットを持つ新開発の油冷SOHC4バルブ単気筒を搭載する。最高出力は26psで、これは水冷並列2気筒を搭載する同社のGSX250Rを2psも上回る。オイルクーラーには電動冷却ファンを装備。
ハンドリングもいい。弟分のジクサー150を基に全面的に見直したというしなやかなダイヤモンドフレームと、ラジアルタイヤの相乗効果で乗り心地は良好。倒し込みや切り返しは軽快だが、軽薄になりすぎないのはやや太めのタイヤサイズのおかげだろう。1345mmという短い軸距により旋回力は高く、またスロットルのオンオフで気持ち良く車体がピッチングするので、マシンコントロールを学ぶにも都合がいい。
ブレーキはキャリパーにバイブレ製を採用。ブレンボの技術が反映されたそれは前後ともコントローラブルで、スリッピーな路面でもABSが作動する直前まで自信を持って制御できる。スクリーンが極端に低いため上半身の防風効果はそれなりだが、それと引き換えに得られる開放感はネイキッドに限りなく近い。
フロントはφ41mm正立式フォーク、リヤショックは7段階のプリロード調整が可能。キャリパーは前後ともバイブレ製だ。ホイールのスポーク側面に切削加工を施して質感向上。
市街地で映える車格と近年の若年層の体格に配慮し、コンパクトになりすぎないデザインを採用。このワークスレプリカのエクスターカラーも単色と同価格にて販売される。
やや腰高ではあるが、車体のスリムさが足着き性をフォローしている。全体的にコンパクトなライポジだ。[身長175cm/体重62kg]
ハンドルはセパレートで、スクリーンの低さが分かるだろう。メーターはフル液晶で、シフトインジケーターも装備。
ハンドルはセパレートで、スクリーンの低さが分かるだろう。メーターはフル液晶で、シフトインジケーターも装備。
ニーグリップ部分がスリムに絞られたタンクデザイン。フレームはジクサー150のダイヤモンドタイプをベースに、大幅に手を加えている。
ニーグリップ部分がスリムに絞られたタンクデザイン。フレームはジクサー150のダイヤモンドタイプをベースに、大幅に手を加えている。
ライダーシートは座面の前傾がやや強めの印象。タンデムシートはキーロックで取り外すことができ、その下には車載工具を収納する。
ライダーシートは座面の前傾がやや強めの印象。タンデムシートはキーロックで取り外すことができ、その下には車載工具を収納する。
[△] 不満に感じる短所なし。この価格ならすべて納得
ギヤ比から最高速を計算したところ、トップ6速で1万rpmまで回しても150km/hを少し超える程度だが、レースでもない限りそれに不満を感じる人は少ないはず。4気筒が盛り上がる中、スズキは強烈なカウンターパンチを繰り出した。
[こんな人におすすめ] まとめ方の妙を見せつけてくれた軽二輪の秀作
最も勢いのあるアジア市場の若年層をターゲットとしているだけに、デザインに外連味を感じるものの、初心者でも扱いやすくベテランも満足させるという走りのまとめ方は秀逸。日本仕様のダンロップの採用には良心すら感じる。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:長谷川徹 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
私が最後に試乗したヤマハTMAXは'13年モデルで、この年に排気量が499ccから530ccへと拡大されている。当時、ABSのない仕様で税込100万円をギリギリ下回っていたが、今回試乗した’20年型の[…]
ストリートファイターのZ1000が'10年にスチール→アルミフレームとなり、そのプラットフォームを利用して’11年に誕生したスポーツツアラーがニンジャ1000だ。'17年にスタイリングを一新するととも[…]
基本コンポーネントを共有しているMT-25と同様に、'20年型でスタイリングの刷新やフロントフォークの倒立化などマイナーチェンジを実施したMT-03。北米や欧州ではこのMT-03のみが販売されているこ[…]
【’20 YAMAHA Ténéré 700 ABS】●価格:126万5000円 [写真タップで拡大] 【’20 HONDA CRF1100L AFRICA TWIN/DCT】●価格:161万7000[…]
ニンジャ400/250、そして間もなく登場するZX-25Rらと共通のフロントフェイスとなったニンジャ650。外観における先代からの変更点は、実はそのフロントカウルのみなのだが、明確に印象を異にする技術[…]
最新の記事
- 定番125ccスクーター! ホンダ「PCX」歴代モデル図鑑【2022年モデル:シックな新色追加】
- 世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.139「アイ・オグラに見たチャンピオンの資質は、速さよりもレースIQ」
- 来場前におさらい! 東京モーターサイクルショー2025出展概要まとめ
- 世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.138「M.マルケス強し! バニャイアの心中はいかに……」
- 【SCOOP!】ホンダ新「V型3気筒」には過給機なしが存在する?! 異なる2種類の商標が明らかに
- 1
- 2