以前試乗レポートしたMT-25に続き、今回は兄貴分の’20ヤマハ MT-03のインプレをお届けしよう。プラス71cc&7ps、そしてラジアルタイヤのアドバンテージは意外なほど大きいのだ。
海外ではMT-15やMT-125が販売されているが、国内のラインナップにおいてシリーズの末弟となるのがこのMT-25だ。’15年10月の発売以来、初めてのマイナーチェンジを実施した'20年モデル。スタ[…]
[◯] スロットル操作だけでリズムよく曲がれる
基本コンポーネントを共有しているMT-25と同様に、’20年型でスタイリングの刷新やフロントフォークの倒立化などマイナーチェンジを実施したMT-03。北米や欧州ではこのMT-03のみが販売されていることからも分かるように、海外ではこのクラスが激戦区となっている。国内メーカーではカワサキのZ400が直接のライバルであり、また欧州勢ではBMW G310RやKTM 390デュークなどが価格的にも対抗馬になり得る。よって、ヤマハが若年層のライダーに向けて強くアピールできるよう、今回のモデルチェンジで大胆にフロントフェイスを変えてきた意図が分かるだろう。
180度クランク採用の水冷並列2気筒は、MT-25のボアを8mm拡大して排気量を249→320㏄としている。最高出力はプラス7psの42psで、これを車重の同じシャーシに搭載しているのだから、クラッチをつないだ瞬間からMT-25との違いは明確だ。特に市街地で多用する3000〜5000rpmでトルクの厚みが増しており、キビキビと加減速できる。加えてスムーズな伸び上がりも犠牲になっておらず、高回転域まで回すことにストレスを感じない。鍛造ピストンやダイアジル&オフセットシリンダーなど、さまざまな技術の賜物と言えるだろう。
そして、このトルクの厚さとラジアル化されたタイヤにより、ハンドリングはMT-25よりもイージーにすら感じられる。フォークの倒立化でフロントブレーキを残しながらのトレース性や、そこからの旋回力が高まったMT-25に対し、MT-03はスロットルのオンオフで発生するピッチングがわずかに大きいので、車体姿勢をあまり気にせず、タイトな峠道をリズミカルにクリアできるのだ。加えて、ラジアルタイヤのグリップ感や衝撃吸収性、旋回力もライダーに安心感を与えてくれる。全体のパッケージングとしては明らかにMT-03の方が上だと言っていい。
なお、この新型から導入されたABSの作動性は特に問題ないが、制動力はもう少し高めたいところだ。
ラジアルタイヤ採用。ヒールプレートも違う
MT-25の標準装着タイヤがIRCのRX-01(バイアス)なのに対し、MT-03はダンロップのGPR-300(ラジアル)を採用。一次減速比:3.043、二次減速比:3.071は共通で、変速比を変えている。外観ではヒールプレートのデザインが異なる。
[△] 車検をどう捉えるか。楽しさ優先ならMT-25よりも03だ
MT-25と03の両方を選択できるのは日本ぐらいで、維持費の面では25の方が有利だ。ただ、新型03の小気味よいライトウエイトスポーツ的な走りを味わってしまった今、私は排気量の大きな方を強く勧める。
[こんな人におすすめ] 諸元はZ400有利だが、個性的なのはMT-03だ
同じ水冷並列2気筒を搭載するカワサキのZ400は、排気量398ccから最高出力48psを発揮し、しかもMT-03より3kg軽くて価格は約3万円高いだけ。このように諸元だけを比べるとヤマハ不利だが、倒立フォークを含むルックスでは引けを取らない。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●取材協力:ヤマハ発動機 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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