唯一無二の絶妙パッケージング

ヤマハTMAX560テックマックス試乗インプレッション【誕生から20年、円熟の7代目】

’01年登場のマキシスクーター、TMAXの最新型に試乗。排ガス規制対応で排気量を31cc拡大した’20年型は7代目にあたる。上位グレード「テックマックス」の実力やいかに。

私が最後に試乗したヤマハTMAXは’13年モデルで、この年に排気量が499ccから530ccへと拡大されている。当時、ABSのない仕様で税込100万円をギリギリ下回っていたが、今回試乗した’20年型の上位グレードである「テックマックス」は、なんと141万9000円に。ちなみに初代は税込77万7000円だったので、こうした価格の推移からも、どんなユーザー層に支持され、20年でどのように進化してきたかが見えてくるだろう。 

【’20 YAMAHA TMAX560 TECH MAX ABS】主要諸元■全長2200 全幅765 全高1420 軸距1575 シート高800(各mm) 車重220kg ■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 561cc 48ps[35kW]/7500rpm 5.7kg-m[56Nm]/5250rpm Vベルト式無段変速 燃料タンク容量15L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70R15 R=160/60-R15 ●価格:141万9000円 ●色:緑灰、黒灰

グレード設定は従来のスタンダードにあたるSXが無印に、装備を充実させた上位モデルのDXがテックマックスに。OBD II適合や冷却性能を高める新エアダクト、ライダーの足着き性に配慮した新サイドカバーなども注目点だ。

まずは排気量を561ccに拡大した水冷並列2気筒エンジンから。スロットルをゆっくり開けるとすぐに遠心クラッチがつながり、スムーズに加速態勢に移行。最大トルクの発生回転数である5000rpm付近をキープしながら淀みなく速度が伸びていき、あっという間にスピードメーターは3ケタの世界へ。トランスミッションは一般的なスクーターと同じCVTだが、スロットルを戻したときのエンブレが強めに発生するので、右手の動きに対するキビキビとしたレスポンスはMTのモーターサイクルに近い。そして、独自のピストンバランサーで不快な振動を排除しつつも、まるで泡が弾けているようなかすかな鼓動感は変わらず残っており、これが歴代TMAXに共通する味わいだと思っている。 

360度クランクと往復式ピストンバランサーを採用する水冷並列2気筒は、ボアを2mm拡大して排気量を561ccへ。吸排気系や動弁系を見直し加速特性を高める一方、減速特性を再設定し、巡航時の回転数を抑えている。触媒はツインとし、燃焼室の最適化や混合気形成の改良と合わせて排ガス規制をパス。サイレンサーカバーもブラッククロームに。

ハンドリングもいい。タイトコーナーでこそ1575mmという軸距の長さを痛感するものの、スロットルのオンオフで発生する自然なピッチングや、フロントブレーキを残しながらコーナーに進入したときの車体の剛性感は、まさにスポーティなモーターサイクルのそれ。前後サスペンションは乗り心地がいいだけでなく旋回中に踏ん張りが効き、ブレーキはスーパースポーツ並みに初期からコントローラブルだ。基本性能に磨きをかけたからこそ伝わる上質感があり、ゆえに欧州で支持されているのだろう。 

電動スクリーン、グリップ&シートヒーター、クルーズコントロールは、ツーリングの質をワンランク高めてくれる装備であり、どれも十分以上の性能を確認。20年という熟成期間の長さが伝わってくる傑作だ。

φ41mm倒立フォークはバネレートと減衰力特性を最適化。標準装着タイヤはブリヂストンのみに。ベルト駆動の二次減速比は6.34→5.771とロング化(変速比は変わらない)。水平配置されたリンク式リヤショックは、低荷重時はソフトに、高荷重時はハードにセッティングされる。

逆スラントのヘッドライトはそのままに、フロントウインカーのデザインを変更。テールランプは「T」をモチーフとした新デザインとし、合わせてリヤサイドカバーも一新。

TECH MAXのスクリーンは電動式で、135mmの範囲でスライド可能。無印はボルトの差し替えにより高低2段階(55mm差)に調整可。

2連アナログ+3.5インチTFTモノクロメーターを引き続き採用。ハンドルカバーにあるスイッチでハンドルやメインスタンド、シート、フロントトランクの施錠&解錠を行う。

使いやすいリヤブレーキロックレバーを引き続き採用。フロントトランクはスマートキーでロック可能。奥にはDC電源ソケットも。

リヤヒンジに油圧ダンパーを採用するシート開閉機構。その下のスペースにはフルフェイスが1個、もしくはジェットヘル2個が収納可能だ。後方には便利な庫内照明も設置。

[△]足着き性は相変わらず。許容できるなら買いだ

エンジンを車体中央に置き、その上にメットインスペースをレイアウトしているので、ボディはどうしてもワイドに。このシート高も走りに貢献していると思うので、無闇に下げるのは野暮だろう。この足着き性を許容できるなら強くお勧めだ。

[こんな人におすすめ]唯一無二の世界。やはり買うならテックマックス

スポーツモデル顔負けの走りは初代から不変だが、最新モデルの神髄はラグジュアリーな世界の構築にある。パワフルだが必要以上に主張しないエンジン、完璧とも言える防風性、動きのいい足回りなど、このパッケージは絶妙だ。


●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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