車体やエンジンには興味は尽きないが、タイヤに対しては関心がない。ただの黒くて丸いゴムの塊で、減ったら交換すればいい…。残念ながら、そんなふうに思っている人も少なくないだろう。しかし、ハーレーもタイヤ次第で乗り味は大きく変わってくる。そこで今回、これまでは「ただ勧められたものを履いてきた」という3名に違いを感じてもらおうと、メッツラーの新作タイヤ「クルーズテック」を試してもらった。
●写真:大谷耕一、森下光紹 ●取材協力:ピレリジャパン、メッツラー、ハーレーダビッドソンシティ中野店、ハーレーダビッドソン陸友 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
タイヤは路面に接する唯一のパート
単純に考えると、バイクは「走る・停まる・曲がる」という3つの機能を持ち、それを支えているのはタイヤだ。
路面に接地する唯一の部分で、いくらエンジンやサスペンションが高性能であってもタイヤがお粗末ではすべて台なし。安全性にも大きく関わるし、ライダーは運転中、目からだけでなくタイヤを通じてフィードバックされる情報で路面状況を把握している。
そんな重要パートであるタイヤだが、「減ったら交換すればいい」「長持ちすればなんでもいい」というハーレー乗りが多いのもまた事実。ホンネを聞き出すと「もう少しグリップ力が欲しいけれど、車体に重量があるから硬いタイヤで我慢してきた」「ハーレーのタイヤはそういうものだと思っていた」という人が多い。しかし、果たしてそれでいいのだろうか……。
1892年創業のドイツ老舗タイヤブランド「メッツラー」では、エンジンが高出力化し車体や足まわりも強化されてスポーツライディングが楽しめるよう、高性能化している昨今のハーレーダビッドソンに最適な「クルーズテック」を今夏リリース。市場調査から得た「もっとハイグリップなタイヤを」という要望に応え、ロングライフでありながらコーナリング性能や排水性に優れる究極のパフォーマンスを実現した。発売するやいなや走りにこだわる新世代のハーレー乗り達から称賛され、注目を集めている。
そんな最新作を、これまでタイヤにあまり感心のなかった3名に試していただいた。ふだんはタイヤの良し悪しなど考えたこともなかったという人たちの率直な感想をお届けしよう!
新雪の上をスキーで走っているかのような滑らかな乗り味(ヘリテイジクラシック Mさん)
「いままではゴツゴツした乗り味でしたが、滑らかにバイクが走るようになりました。この感覚は何だろうって考えると、スキーで新雪の上を滑ったときの気持ち良さに似ていますね。乗り心地が良くなって、カーブでもしっかりとした接地感があり安心です」と、クルーズテックに好印象を持ったMさん。趣味の音楽活動で、遠方の会場にも愛車で走っていく経験豊富なライダーだが「あらためてタイヤの重要さを知りました」と納得。さらにサーキットへも連れ出すと大興奮で、歓喜の声が聞けた。
「ハーレーでサーキットデビューするなんて想像もしていませんでしたし、こんなふうにエキサイティングな走りが楽しめるなんて思ってもいませんでした。コーナーではスッと車体が寝ていき、旋回中もしっかりグリップしているからまだいける、まだ行けるって感じで、フットボードが路面に擦るまで不安なく倒し込めるんです。こんな感覚は初めて! このタイヤでなら、またサーキットを走ってみたいと思います」
「グリップ力とレイン性能に優れ、走りにこだわる人にオススメです」 こう言うのは、タイヤ交換し試走もおこなったハーレーダビッドソンシティ中野店のメカニック・佐々木さんだ。
「タイヤを履き替えてから試運転しましたが、ちょうど雨が降ってきまして、濡れた路面でも安定したグリップ力を確かめることができました。ブレーキテストもおこなうのですが、制動力もしっかりあって食い付きの良いタイヤです。自分も履いて、乗り込んで性能をもっと知りたいと思いました」
H-D陸友の工場長・芦田さんも「ソフトな乗り心地で、路面の細かなギャップも吸収してくれる乗り心地の良いタイヤですね。ツーリングモデルが履いても剛性不足はなく、グリップ力と剛性を両立しています」と好印象だ。数多くのハーレー向けタイヤを知り尽くすスペシャリストたちだけに、その声は貴重かつとても参考になる。
ハンドリングが軽くなった(ロードキング Kさん)
さて、ツーリングファミリーのオーナーたちにも感想をうかがった。ロードキングに乗るKさんは「乗ってすぐにソフトな乗り心地になったと思いました。路面から伝わる細かい振動が感じなくなって、長い距離を走ったときも疲れにくくなりますね」と言う。「ハンドリングに軽快性が出て、街乗りもしやすいです」と教えてくれた。
クルーズテックはコーナーエントリーでの車体の寝かし込みがスムーズだが、これはタイヤに斜めに入る切り込み角を徹底追求したことで、軽快なハンドリングを実現している。また、交互に配した前輪のトレッドパターンが水膜の排出性や制動力、タイヤの温まりやすさも高めた。冬場の走り始めはタイヤが冷えて要注意だが、クルーズテックは冷間時にも安定したグリップを発揮するのだ。
タイヤ交換し試運転したプロメカニック・ハーレーダビッドソン陸友の芦田さんによれば、「すごく取り回しのしやすいタイヤだと思います。ラウンドした丸い形状なので、市街地での車線変更など意識しなくとも行きたい方向を見るだけで、車体が自然と意図した通りに動いてくれるのが好印象です。軽快性がハンドリングに出るので、女性ライダーにもオススメできますね」とのことだ。
快適性向上でロングライドでも疲れない(CVOロードグライド Sさん)
友人に呼ばたとあれば、たとえ鹿児島でもCVOロードグライドでスッ飛んで行ってしまう長距離ランナーのSさんも「ますますロングツーリングが楽しみ」と満面の笑み。重量級グランドツアラーでも剛性不足などは感じないと言う。
ディーラーでのタイヤ交換が安心な理由
ハーレーダビッドソン陸友の芦田さんはもうひとつ、タイヤ交換に関するアドバイスをくれた。
「ディーラーでのタイヤ交換は、作業工賃が高いと言われることがありますが、それはタイヤを組み替えるだけでなく、足まわりやリヤの駆動系も同時にすべて点検し、グリスアップし直すなど、手の込んだ整備をしているからです。ハーレーのことを知り尽くした正規ディーラーならではの作業が、やはり安心できると思います」
一連の作業を見ていて感心するのは、タイヤ装着後の試運転を欠かさないことだ。今回、タイヤ交換作業が終わると、芦田さんもハーレーダビッドソンシティ中野店の佐々木さんもすぐにヘルメットを被って、テストライドに出かけていった。きっと全国の正規ディーラーで実施していることなのだろう。このときタイヤはもちろん、車体のすべてをチェックし、不具合のない安全な状態にしてオーナーのもとへ戻すようにしている。
銘柄が変われば乗り味も異なるので、特性をオーナーに伝えるなどアドバイスも忘れない。もちろん新品タイヤは滑るので急発進や減速は禁物。トータルで愛車を任せられる正規ディーラーならではのサポート体制。タイヤの相談もどんどんしてみるべきだ。要望やいま履いているタイヤで感じることを伝えれば、きっと自分に合ったベストなタイヤを勧めてもらえるだろう。
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