
MCFAJクラブマンロードレース2026開幕戦 筑波サーキットMAX10で衝撃のデビューを果たした武石伸也と、プライズバイクサロンが仕上げる2000cc+ターボ搭載のFXLRST ローライダーST。その最終戦が、再び筑波サーキットで開催された。ただし、今回は天候が大きな壁となった。台風が接近し、事前予報はかなり高い確率で雨。チームはドライタイヤ、レインタイヤの両方を用意し、どんなコンディションにも対応できる体制で最終戦に臨んだ。そして、この最終戦に合わせてマシンも最後の進化を遂げていた。
●文&写真:今井伸一朗 ●走行写真:オレンジワークス ●取材協力:MCFAJ、筑波サーキット、プライズバイクサロン
最終戦仕様は“バガーレーサー風へ”
前戦・富士ラウンドで大幅な軽量化を行ったフロントカウルに続き、今回投入されたのがクロックワークス製のカーボンウインドシールドだ。本来は上側に反りのあるフレアタイプだが、武石のライディングポジションに合わせてカットして装着。軽量化はもちろん、フロントまわりのルックスも一気にレーシーになり、マシン全体からスピード感が漂う。
「やる気モード全開」
そんな武石の言葉にも、最終戦へ向けた意気込みが表れていた。
そして最大の変更点が、リアだ。最終戦に間に合ったのは、Carubi(カルビ)カーボン製のフルカーボンサドルバッグ。片側わずか1184gという超軽量仕様で、製作側によれば「世界最軽量のSTサドルバッグ」を目指したという。
FXLRSTのアイデンティティともいえるサドルバッグを装着しながら、レーサーとして徹底的に軽量化する。
雨、雨、そしてまた雨!
しかし、天候は容赦なかった。台風の影響で開催そのものが危ぶまれる状況だったが、レースは雨模様のなかで決行された。
「富士も雨、今回も雨。せっかくレーシングスーツを新しくしたのに、雨ばっかりだよ」
武石も思わずぼやく。富士ラウンドに続いて、最終戦も雨。新しいマシンと新しいレーシングスーツで、ドライコンディションを思い切り走りたかったはずだが、そう簡単にはいかなかった。
予選はまさかの11番手
そして予選。MAX6-Aクラスにエントリーした武石は出走に遅れてしまい、雨の筑波を走れたのはわずか2ラップほど。タイムは1分17秒342。結果は11番手となった。
当然、武石本人が納得するはずもない。しかも今回は、ハーレーで初めてのレインタイヤ走行。ウェット路面でのリアタイヤのグリップ不足を感じながらのアタックとなった。
本来のマシンのポテンシャルを考えれば、あまりにも不完全燃焼な予選だった。それでも、ひとつ確認できたことがある。最終戦仕様として投入されたリアのフルカーボンサドルバッグによるネガティブな影響は、武石自身まったく感じていなかった。
むしろ大きく効いていたのは、富士から継続しているフロントまわりの軽量化だ。フルカーボン化とインナーレス化によってハンドルまわりの重量が大幅に軽減され、ハンドリングと旋回性は飛躍的に向上。
「これでドライだったら、またMAX6の上限タイム、1分6秒を切るんじゃないか?」
そんな期待を抱かせる仕上がりだった。
またしても驚異のスタート!!
そして決勝。雨は降り続いている。11番グリッドから武石がスタートする。
ところが、ここでまた武石の持ち味が炸裂した。抜群のスタート。1コーナーまでに次々とライバルをかわし、なんと1周目を終えるころには2番手までポジションを上げていた。
このスタートの速さは偶然ではない。武石は日頃からスタート時の反応を意識した練習を続けているという。長年トップカテゴリーで戦ってきたライダーの経験と技術は、こうした一瞬の勝負でこそ光る。
スーパースポーツ軍団の中で奮闘
しかし、ここからが雨のレースの難しさだった。周囲を走るのはリッタークラスのスーパースポーツバイク。ドライコンディションならば、武石がマシンの強烈なトルクを武器に勝負を仕掛けられる。
だが、ウェットでは状況が違う。300kgを超える車重。そしてハーレーならではの旋回特性。さらにレインタイヤで姿勢から感じるグリップ不足。いくら武石が経験豊富なライダーでも、物理的な差をすべて消すことはできない。それでも、雨の中でマシンをコントロールし続ける。
1コーナーでまさかの接触
レース中盤、さらにアクシデントが武石を襲った。1コーナーでイン側から他車が接近し、武石のリアに接触。幸い両車とも転倒は免れたものの、武石はラインを外れてオーバーランしてしまう。
ここでも冷静にマシンを立て直し、レースへ復帰。雨の筑波で、300kgオーバーのハーレーをコントロールしながら走り切る。そして――。
雨の最終戦、クラス3位!!
武石は最後まで走り切り、結果はクラス3位。11番手からスタートして表彰台を獲得した。
予選ではわずか2周ほどしか走れず、初めてのレインタイヤ。さらにレース中には接触によるオーバーランまであった。決して条件は良くなかった。それでも最後まで転倒することなく、表彰台までマシンを運んだ。
プライズバイクサロン代表の小原氏も、この結果に大きな喜びを見せた。
「この状況で表彰台まで持っていってくれたこと。そして何より、転倒せずに走り切ってくれたことが本当にありがたい」
マシンを速くすることだけではない。最後まで安全に走り切れる車体を作る。その意識が、この1年の活動を通じて強く感じられた部分でもある。
そして武石の恩師である元チーム・ブルーフォックスの岩崎氏も、喜びと安堵が入り混じった優しい笑顔を見せていた。
1年でここまで変わった
振り返れば、このプロジェクトが始まったとき、FXLRSTは300kgオーバーの巨体だった。そこに2000cc+ターボ、大型フェアリング、そしてサーキットを走るための足まわり。筑波のデビュー戦では、まだ発展途上のマシンだった。
それが富士ではドライカーボンフェアリングを投入。ステップをさらに前方へ移設し、ニーグリップボックスを追加。シートも改良し、オイルクーラーを大型化。そして最終戦では、カーボンウインドシールドとフルカーボンサドルバッグまで投入した。
わずか1シーズン。しかし、その進化のスピードは凄まじい。
武石からのフィードバックをプライズバイクサロンの小原代表が受け止め、それを次の仕様へ反映する。
来季はスーパースポーツに対抗できる旋回性を!!
そして、プロジェクトはここで終わらない。来年も武石と相談しながらフル参戦を予定しているという。FXLRSTには、さらなる開発と軽量化を計画。
特に今後のテーマとなるのが、旋回性だ。300kgオーバーという車重を持つハーレーで、リッタークラスのスーパースポーツにどこまで対抗できるのか。そのために、車体のさらなる軽量化とハンドリング性能の向上を目指す。
「ハーレーだから曲がらない」
そんな既成概念を、どこまで覆せるのか。武石とプライズバイクサロンの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
レースで得た技術を市販車へ
そして、このプロジェクトにはもうひとつ大きな意味がある。ここで開発された技術やパーツを、一般車両にもフィードバックしていくというのだ。
サーキットで走らせ、問題点を見つけ、武石が実走して確認する。その結果を市販パーツへ落とし込んでいく。単なるレース参戦ではなく、ハーレーをより楽しく、よりスポーティに走らせるための開発プロジェクトでもある。プライズバイクサロンにとっても、武石伸也というトップライダーと1年間マシンを作り込んだ経験は大きな財産になった。
“モンスターハーレー”の挑戦は続く
MCFAJクラブマンロードレース2026 第2戦 富士スピードウェイでも、ウェットコンディションとなった。
筑波で始まり、富士を経て、再び筑波へ。ポールポジションを獲得した富士では雨に翻弄され、最終戦もまた雨。それでも武石は11番手から2番手までジャンプアップし、最後はクラス3位で表彰台を確保した。
ドライで本来のポテンシャルを完全に引き出す機会には恵まれなかった。だからこそ、まだ見えていない“速さ”がある。
133.62psを発生する2000cc+ターボエンジン。21.17kg-mという強烈なトルク。300kgオーバーの車体。そして、それを武石伸也が操る。1年間、トラブルなくシーズンを走り切ったことも大きな成果だ。
速さだけを追求するのではなく、壊れず、安全に、最後まで走り切れるマシンを作り上げる。そこにはプライズバイクサロンの高い技術力と、安全性に対する強い意識があった。
武石伸也×Prize×FXLRSTターボ
“ハーレーは速く走れない”というイメージを変える挑戦は、次のステージへ。来季、このモンスターハーレーがさらに軽く、さらに曲がるマシンへと進化したとき、スーパースポーツを相手にどこまで迫れるのか。その答えを見るためのシーズンは、もう始まっている。
フロントフェアリングをカーボン製に交換。純正フェアリングはアウターとインナーの合わせ構造だが、インナーをなくし、アウターのみの仕様。ヘッドライトマウントなど余分なものを一切排除し軽量化。フロントフェアリング周りの大幅な軽量化は、マシンの旋回性、挙動安定を大幅に向上した。
クロックワークス製のカーボンウインドシールドを装着。本来の形状はフレアタイプの上側に反りのある形状だが、ライディングポジションの関係でカットして装着。軽さはもちろん、見た目もスピード感が出て、やる気モード全開に。
ステップ位置をさらに80mm前方に移設し、ニーグリップ用ボックス設置。シートスポンジ内を硬化させ(スポンジレス仕様)に沈みこまないように修正。ステップ位置をさらに前方にという武石からのリクエストにより、ニーグリップボックスの設置は必須となった。これもコーナリングの姿勢保持には絶大な効果を発揮。
ビックオイルクーラーを装着。純正ルックだが、厚みを増し容量を17%アップさせている。夏場の富士スピードウェイへの対策として導入した。
ハーレーでは初めてのレインタイヤ。
ニュースーツで雨の予選へ。
いよいよ最終戦決勝へ。
スポーツバイクの中にハーレー。
プライズバイクサロンの小原氏とスタッフ一同。すでに来年に向けて始動。来年どのように進化するのか!?
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