「自動車史に残る日産の大発明」1970年代の米国で爆売れしたミニトラック。革新のデザインと熟成のメカニズムですさまじい人気を誇った[ダットサン トラック(620型)]

「自動車史に残る日産の大発明」1970年代の米国で爆売れしたミニトラック。革新のデザインと熟成のメカニズムですさまじい人気を誇った[ダットサン トラック(620型)]

小型トラックの歴史ばかりか、海外のカスタム文化に決定的な影響を与えた伝説の一台といえば、ダットサン 620 デラックスを思い浮かべる方も少なくないはず。仕事のためのクルマとしての実用性を超え、ライフスタイルカーとしての先駆者となった魅力を、歴史や性能、そして海外での熱狂的な人気といった視点からご紹介しましょう。


●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys

仕事用から「ライフスタイルカー」への転換

1970年代、北米市場における日本のミニトラックは、それまでの「頑丈で安い商業車」という枠を飛び越え、若者のレジャーや普段乗りの足として需要が急増。とりわけ、西海岸でのカジュアルカルチャーでの人気はすさまじかったのだとか。このトレンドの牽引役となったのが、「Li’l Hustler(リル・ハスラー)」の愛称で親しまれたダットサン 620。

1979年型のダットサントラック620は翌年にモデルチェンジを控えた、ある意味で完成形と言えるモデル。

今でこそシート後方を延長してキャビンを拡大するのはポピュラーですが、当時としては画期的なアイデアだったとのこと。

中でも1977年に登場した「キングキャブ(日本名:カスタム)」は、自動車史における大発明。それまでのミニトラックは室内が狭く、シートのリクライニングすらできなかったのですが、日産は荷台の長さを最適化しつつキャビンを後方へ約24cm拡張。これにより、室内でのリクライニングや荷物の防犯保管が可能となり、それまで以上の爆売れを記録したのでした。

ポップなチェック柄はレストアの際に張り替えられたかと思いきや、デラックスはこれが標準仕様でした。

なお、今回ご紹介している1979年型は、翌年に後継の720型への交代を控えた、620シリーズの最終完成形にあたります。

デザインの革新と熟成を重ねたメカニズム

構造面における最大の特徴は、フロントから荷台へ流れるように刻まれたキャラクターライン、通称「ブレットサイド(弾丸の軌跡)」デザイン。この洗練された外観が、商用車特有の野暮ったさを払拭していたことは確かでしょう。骨格には全溶接されたプレス鋼板のボックスセクション・ラダーフレームを採用し、過酷な使用に耐えるタフさを確保。

フロントサスペンションは独立懸架式トーションバーですが、1978~1979年型では従来のキングピン式からボールジョイント式へと変更され、ハンドリングの正確性が大幅に向上しています。ブレーキもフロントに油圧サーボ付きディスクブレーキが標準装備され、電装系にはフルトラが導入されるなど、1979年型はトラックの域を超えた近代的なメカニズムをこれでもかと満載していたのでした。

名機「L20B」エンジンがもたらす軽快な走り

北米仕様のデラックス・キングキャブには、ブルーバード(510型)やフェアレディZの系譜を引く名機「L20B型」2.0リッター 直列4気筒 SOHC ガソリンエンジンが搭載されました。

L20B 直4 エンジンといえば、ブルーバードやフェアレディZに連なる名エンジン。

排ガス規制に対応しながらも最高出力は約110~112馬力を発揮。車両重量が約1トン強と軽量だったため、走りはきわめてキビキビとしたもの。デラックス仕様にはシフトフィールに優れた5MTが組み合わされ、高速巡航時の静粛性と燃費性能を両立しています。

最大積載量は約650kgを確保しつつ、「スポーツセダンを運転しているかのような楽しさがある」と現地メディアからも高く評価された模様。

リヤのステップバンパーもアメリカらしい装備。当時は何種類かのタイプがディーラー販売されていました。

カルト的人気を誇るミニトラック文化の神格

ダットサン 620は、アメリカ、オーストラリア、南アフリカなど世界中でヒットしましたが、特に北米でのカルチャー的影響力は今なお絶大。

やっぱりダットサンといえば、このロゴマークが欠かせません。

ローダウンや深いリムのホイールを組み合わせる「ミニトラック・カスタム」のベース車として、トヨタ・ハイラックスと並ぶカリスマ的なアイコンとなっていることはご存じの通り。近年では、シルビアなどに搭載されたSR20DETエンジンにスワップするハイエンドなカスタムも盛んです。

ともあれ、ヨーロッパ市場向けに出品されたこちらの個体は1万5400ユーロ(約270万円)と、年式からしても的確な落札価格かと。

時代背景を感じさせるカーオーディオもデラックスの標準装備。カセットプレーヤーの佇まいも実にいい感じです。

この売り物には超貴重な当時のカタログやマニュアルが付属。これだけでも欲しくなるマニアもいることでしょう。

現在では状態の良い車両は世界的に極めて希少で、特に快適装備と実用的なキャビンを兼ね備えたデラックス・キングキャブは、国内外のコレクターズ市場で高騰中。手に入れるなら、今がラストチャンス、かもしれませんね。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。