
●文:ライドハイ編集部(根本健)
後を追うすべてのライバルをリードする画期的存在だった「916」!
ドゥカティといえば、MotoGPでチャンピオンを獲得し、スーパーバイクでは常勝。そして市販スーパースポーツでも、パニガーレV4にムルティストラーダやモンスターなど、カテゴリーで世界トップのモデルが居並ぶ超一流メーカー。
もちろん戦後の創設期から世界GPに挑戦したり、天才タリオーニ技師によるデスモドロミック(強制開閉バルブ)や、90度Lツインで日本車大型クラスに対抗するなど、“熱きイタリアン”として不動の人気を誇っていた。
しかし、この1960年代から1970年代を経て1980年代にかけて、ドゥカティを支えるファンからは、どこか“判官贔屓なマイノリティ”だから愛されていたのも事実だった。
それを、最大のライバルだった日本車と肩を並べるパフォーマンス、さらにはテクノロジーでもリードし続ける立場に押し上げたのは、1994年にデビューした「916」であるのは誰もが認めるところ。
ドゥカティミュージアムに鎮座する916の両側には、ひとつだけ前世代のモデル・851/888が並べられているが、その佇まいの大きな違いに、この916がいかに“世界を震撼させる画期的な先鋭マシン”だったかが見てとれる。
比類なきスリムさで魅力を放つ916
衝撃のマシンとなった916をデザインしたのは、ビモータの創設者のひとりで、後にMVアグスタで珠玉のマシン・F4を手がけたタンブリーニ。
初の水冷DOHCとなった851から進化したスーパーバイクに対して、細いパイプでトライアングルを組むトレリスフレームも踏襲しながら、超スリムな構成を生んでいる。
排気系はセンターアップマフラー。2ストロークGPマシンには前例はあったものの、大型4ストロークマシンでは誰も考えなかったシートカウル下にサイレンサーを収め、車体の両外側にマフラーが張り出していない。
このマフラーのレイアウトは、単にスリムさのためではない。エンジン出力をワイドに力強い特性とするには、じつはエキゾーストの長さに支配されており、この長さがビッグツインにはそもそも不足気味だったのだ。
そこで、エンジン下から真後ろで上にたくし上げたエキゾーストが、比較にならないほど全長を稼ぎ、連結部分を中速域の向上に活かす工夫も功を奏し、916はスーパーバイクの世界選手権で、日本製4気筒勢を蹴散らす勢いを得ていた。
ホンダの模倣と思われようが、フィロソフィを貫いた“片持ちスイングアーム”
もうひとつ、世界が目を見張ったのが、「片持ちスイングアーム」。これは、すでにホンダがスーパーバイクのワークスマシンから採用し、RC30をはじめ市販ロードスポーツにも採用していた、いわばホンダ専用の仕様と思われていた方式だ……
※本記事は2023年1月27日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
2ストローク3気筒サウンドと他にない個性で1982年まで販売! 1969年にカワサキは世界進出への先駆けとして、250ccのA1や350ccのA7を発展させた2ストロークで、何と3気筒の500ccマシ[…]
250ccを思わせる車格と水冷2スト最強パワーに前後18インチの本モノ感! 1979年、ホンダはライバルの2ストメーカーに奇襲ともいえる2スト50ccの、まだレプリカとは言われてなかったもののレーシー[…]
遂に50ccクラスへ足がかりをつくる! 1980年にドイツのIFMA(ケルンショー)で、カワサキがAR50/80とオフロード車のAE50/80を発表したとき、世界のバイクメーカーに衝撃が走った。 なぜ[…]
直立単気筒はオフ車から転用せずロングストロークの専用設計! 1980年代のレプリカ全盛が過ぎると、各メーカーはパフォーマンス追求から多様なニーズを前提に様々なカテゴリーのモデルを投入した。 そんな中、[…]
ミニトレール以来の得意なデフォルメスポーツ! かつてヤマハは1972年、オフロードモデル(ヤマハではトレールと称していた)の2スト単気筒のDT系を小型にデフォルメしたミニGT50/80(略してミニトレ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | ドゥカティ)
ガソリンコックをオンにして、デロルト製キャブレターのティクラーを押すと、ガソリンの匂いが漂う。右足をキックにかけ圧縮上死点を探る。足応えを感じたところで、キックを力強く踏み下ろす。久しぶりだからなかな[…]
それ、同じヤツ何台もつくれるのか? 病院のベッドで決まったモーターサイクルクリエイターへの道 「もうこれ以上は仲間に迷惑。あのバイクを売って仕事に集中するんだ」 趣味のアマチュアレースで何度目かの転倒[…]
ほぼ水平シングルの低くてナロウな痺れるカッコ良さ 1987年、ドゥカティは伝統のLツインを遂に水冷DOHC化した新世代エンジン投入へと踏み切った。狙うは頂点スーパーバイクのプロダクトとレース制覇。 こ[…]
これで日本車に勝てると思う? 疑いの目で見られていた時代 第二次大戦後、ほぼホンダと同じ頃にモーターサイクル・メーカーとして出発したドゥカティ。実は当初からレース好きで、1956年には鬼才ファビオ・タ[…]
軽快だけど前輪にグリップ感がない、不安がつきまとうハンドリングの危うさ! ’80年代のバイクブームは、国産バイクだけでなくいわゆる”外車”、海外メーカーのバイクへ手を伸ばすライダーも徐々に増やしていた[…]
最新の関連記事(ネモケンのこのバイクに注目)
新型4気筒を待ち焦がれていたホンダファン CBにXが加わった車名のCBX400Fは、1981年10月にデビュー。バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったマシンだ。 実はカワサキ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
一般公道は乗りやすさ最優先、そのコンセプトを後方排気でピュアレーシーへ ヤマハは、1980年にレーサーレプリカ時代の幕開けともいうべきRZ250を発売。一躍250ccをビッグバイクを凌ぐパフォーマンス[…]
人気記事ランキング(全体)
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
静かに全身冷却&最長10時間のひんやり感を実現 ライディングジャケットのインナーとしても使えそうな『PowerArQ Cooling Vest』。その特長は、ファンやブロワー、ペルチェ式ヒートシンクを[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
レブル250ではユーザーの8割が選択するというHonda E-Clutch ベストセラーモデルのレブル250と基本骨格を共有しながら、シートレールの変更や専用タンク、マフラー、ライディングポジション構[…]
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
最新の投稿記事(全体)
2ストローク3気筒サウンドと他にない個性で1982年まで販売! 1969年にカワサキは世界進出への先駆けとして、250ccのA1や350ccのA7を発展させた2ストロークで、何と3気筒の500ccマシ[…]
伊藤真一さんが代表兼監督を務める『Astemo Pro Honda SI Racing』は、、FIM世界耐久選手権第3戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会(8月3日決勝)のチーム参[…]
供給不足解消に向け、スズキもかなり「がんばってます」 ジムニーノマドは、2025年1月30日の発表からわずか4日間で約5万台もの受注を獲得し、注文受付が一時停止に追い込まれるなど、国産車としては異例と[…]
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。 ベース車として空冷直4のCB[…]
Hondaスピリットを足もとに。cciluコラボシューズ第2弾が登場 ツーリング先での散策、キャンプサイトでのリラックスタイム、そしてレース観戦。そんなバイクライフのあらゆるシーンに寄り添う一足が、シ[…]